◆サービスマネジメントの枠組み(復習)
前回、サービスマネジメントのバイブルになってるリチャード・ノーマンの「サービスマネジメント」で示されている
(1)マーケット・セグメント
(2)サービス・コンセプト
(3)サービス・デリバリー・システム
(4)イメージ
(5)文化と理念
の5つの枠組みを示した。この枠組みを使って、PMOのサービスマネジメントをどのように進めていけばよいかを検討していく。
今回は、サービス・コンセプトについて述べる。
◆サービスコンセプトとは
PMOサービスのサービスコンセプトというと何を提供するかで、なんとなくわかっているのだが、明確に意識をしている人は珍しい。その一つの理由はサービスセグメントが明確になっていないので、漠然としかコンセプトを語れないという点がある。
サービスコンセプトが明確でない限り、プロジェクトマネジャーやプロジェクトはPMOに何を求めるかが明確にならない。そして、「支援」といった漠然としたコンセプトが出てくる。
支援というのはもっともらしいが、著者はコンセプトとはいえないと考えている。もう少し、具体性が必要だろう。
近藤先生による、サービスコンセプトには次の4つの種類がある。
(1)特別な能力の提供
(2)資源の新しい結合
(3)ノウハウの移転
(4)サービスとしての経営活動
これらをPMOサービスで考えるとどのようになるのだろうか?
◆特別な能力の提供
このコンセプトは要するに「代行」である。つまり、プロジェクトオフィスとして、プロジェクトマネジメントの一部を行うといった活動を行う場合のコンセプトである。
このコンセプトで成功しようとすれば、以下のようなことを考える必要がある。
・利用者が自分で活動するよりよい品質が得られる
・利用者が自分で活動するよりより少ない負担ですむ
・利用者が持っていない能力を提供する
の3つである。このように考えると、二つ目はPMOが間接部門であり、コストフリーであるという「幻想」を除けば、ほとんどのPMOがプロジェクトに対してこのようなコンセプトでサービスを提供するのは難しいと言える。
◆資源の新しい結合
このコンセプトは少し、ややこしい。たとえば、著者の住む京都では、「私の仕事館」の存続が議論されているが、とりあえず、民間のコンベンション企業に2年任せるということになったらしい。この場合、任された民間の企業は自らの持つ事業などと組み合わせて、新しい価値を生み出すことになると思われるが、このように、すでにあるものの組み合わせで新しい活動や機能を提供するというのがこのコンセプトである。
PMOのリノベーションをするような場合に、このコンセプトが展開できるような要素は山ほどある。標準やテンプレートといった膨大な資源が有効に活用されていない、人が有効に活用されていないといったケースがあるからだ。これらを組み合わせることによって、新しい可能性を考えてみるといいだろう。
◆ノウハウの移転
三番目のノウハウの移転は、(1)の逆であって、やりたいという人にノウハウの提供をすることである。このコンセプトもニーズは多い。
プロジェクトマネジメントをやりたい、あるいはやらなくてはならないという人たちにノウハウを提供するのは、PMOの本来の役割であると言ってもよいだろう。その方法としては、標準化、テンプレート、ベストプラクティス、方法論、など、挙げていくとキリがないが、いずれにしてもサービスが成功するためには、移転するものはノウハウでなくてはならない。ここが難しいところだ。
◆サービスとしてのプロジェクトマネジメント
プロジェクトの規模が大きい、プロジェクトメンバーが組織横断的であるといった場合には、プロジェクトマネジャーはシンボリックな存在で、プロジェクトマネジメントそのものは、PMO(PMBOK(R)でいうプロジェクトマネジメントチーム)として実行していくという方法がある。
このような活動のベースになるコンセプトがこのコンセプトである。(1)の一部代行の場合にはサービスが成功するためには代行部分に明確な成功条件が必要であったが、このコンセプトの場合には、そんな緩い話ではすまない。プロジェクトを成功させること自体が、サービスの成功にほかならない。その意味でもっとも難しいサービスコンセプトであるといえる。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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