◆PMOの機能の問題は、品質の問題であることが多い
前回は、PMOの活動の中にはサービスであるものとサービスではないものがあるという話をしたが、ここで言いたいことは基本的にはサービスを行うことがPMO活動だと限定すべきだということである。
そのように言われると抵抗感のある人もいると思うが、今、PMOの活動での成果が出ていないケースのほとんどは問題の本質を見誤っているケースが多い。それは、サービスの品質の問題であるにもかかわらず、機能の問題としていることだ。
◆あるPMOの事例
たとえば、PMBOK(R)の導入をするために、計画書作成のサポートを行っているPMOがある。サポートの目的は計画を作ることによってプロジェクトの運営がスムーズになるようにするということだった。
最初はテンプレートと簡単な作成マニュアルを提供した。しばらくそれでやってみたが、どうもうまくいかない。そこで原因を調査した。するとテンプレートが分かりにくいという意見とともに、時間が取れないという意見が混ざっていた。
そこでこのPMOのとった問題解決は、3段階あって、最初はマニュアルの見直しであった。しかし、それでは問題は解決できず、次に、採った方策はコンサルティングの提供だった。相談窓口を設けて、計画書の作成に関する相談を受けようとした。しかし、それでもあまり計画書の品質は上がらなかった。そこで、時間が取れないということに着目して、最後の手段として計画書作成の直接的な支援を行うことにした。
これによってある程度、計画書の品質は上がってきたが、すぐにPMO側の人で不足で破綻をきたした。
◆どこに問題があるのだろうか?
この事例においてPMOの施策の問題はどこにあるのだろうか?プロジェクト運営の軸になるような計画書を作るという目標に対して、できない理由を分析し、その原因を中心にして次の対応を取っている。問題解決の方法としては合格点を上げることができる。
◆事例の問題解決
この段階で相談を受けた。そして著者の提案は
・計画書の簡易化と必要性の明確化
・計画書の記載内容形式ルールの緩和
の2つ。内容はここには書けないが、このような提案をしたのには理由がある。それは計画書作成支援というサービスを考えたときに、サービスの品質というのはPMO側の視点からどうあればよいかというものではない。プロジェクトマネジャーのヒヤリングをすると、計画書そのものの作成に否定的なひとはほとんどいなかった。必要性は分かっているのだが、テンプレートで定められているものの中に、作る意味が分からない部分があるというのだ。したがって書き方も分からないという意見が出てきた。
そこでアンケートを取って、プロジェクト運営上必要な計画を絞り、その項目だけにした。その代わりに、エグゼクティブレーポートを作ることにした。
これで3年くらいの間に、最初に計画したテンプレートに従った計画書の作成が考える品質でできるようになった。
◆サービスをマネジメントする
この事例から分かるように、サービスの品質というのは、必要なサービスを提供すること以外の何ものでもない。PMOのサービスの中には、この事例の計画書のように、組織としてのガバナンスを維持するために「強要」せざるを得ないものも少なくない。ただ、その場合にもサービスであることには違いなく、サービスとしての視点も同じであるべきだ。
そして、サービスとしての品質を追求するためにはマネジメントが必要である。前回のサービスではないものは、マネジメントの手段として必要なものもある。つまり、マネジメントの対象と手段をきちんと区別する必要があるのだ。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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