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【PMOコラム59】組織が承認するのは成果だけ、手段はPMOがサポートする(2008.06.09)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「プロジェクトマネジャーの育成」という方法「だけ」

前回は、2人のPMOスタッフの事例を取り上げ、PMOのとるべきスタンスについて述べた。一言でいえば、PMOがいくらプロジェクトマネジメントの支援をしても、組織のプロジェクトマネジメントの成熟度が低い場合には、プロジェクトはうまくいかない。

この問題に対して、これまで多くの組織は正面から取り組もうをせず、「プロジェクトマネジャーの育成」という方法「だけ」で問題を回避しようとしていた。しかし、プロジェクトに関するすべての権限をプロジェクトマネジャーに委譲していると言ってはばからない組織でも、メンバーの人事権(評価)を委譲することはないし、財務的な意思決定を委譲することもない。


◆計画の承認ってどういうことですか?

先日、顧客企業のPMOスタッフから面白い相談を受けた。その企業ではPMOの設立に伴い、計画書のレビューを徹底的に行い、見通しが立ったところで承認するようなシステムの導入をした。彼が問題視しているのは、この承認というのはどういう行為かということで、

本来であれば、組織として「その計画通りにやってください」ということを宣言する行為のはず。しかし、自社ではそのようになっていなくて、計画書を書いたプロセスを承認しているだけだ。したがって、計画書通りにやってまずいことになったときには、責任はプロジェクトマネジャーがとらなくてはならない。これは一般的なのでしょうか?

という質問だ。ここに、いろいろな問題が隠れている。


◆計画承認とは成果の承認

何がポイントかというと、まずは計画を承認するというのは計画の何を承認しているのか?というところにある。PMBOK(R)がプロジェクトマネジメント計画と読んでいるものの中には3種類の要素がある。ひとつ目の要素は、成果物に関する計画である。非常に大雑把にいえば、QCDSの計画だといってもよい。二つ目の要素は成果物を達成するための手段に対する計画である。ここはプロダクトプロセス(成果物を得るためのプロセス)とマネジメントに分けることができる。

組織が承認するのは、基本的にはQCSDの計画である。QCSDの手段を達成する手段を承認しているわけではない。その意味で、承認というのは正しくない。承認という行為を通じて、その達成を命じているだけである。


◆手段を承認したわけではない

二つ目のポイントは、その意味で計画書の中に書き込まれた手段を承認したわけではない。これは、特に要員の計画において顕著である。そのプロジェクトの実行中にもっと重要なプロジェクトが発生すればそちらにリソースを割くというのは組織として当たり前のことである。

つまり、リソースマネジメントというのは本来、プロジェクトに権限委譲をするなどあり得ないことであり、せいぜい、できるだけ便宜を図るというレベルのものなのだ。


◆手段に対するPMOのサポートは不可欠

一方で、リソースのマネジメントを適切に行わない限り、プロジェクトはうまくいかない。だれがやるのか。プロジェクトスポンサー、プログラムマネジャーなどのそのプロジェクトに対して要員提供の権限を持つ人である。そう考える限り、明らかにプロジェクトマネジメントの一部の仕事は組織マネジャーにある。

では、この仕事をどのように位置づけていくべきか?プロジェクトマネジャーがメンバーに対して進捗報告を求めるのと同じように、プロジェクトスポンサーに対して彼らが本来行うべきプロジェクトマネジメントの実行を要求していくべきである。つまり、プロジェクトマネジメントの実行指揮の権限を持つのはプロジェクトマネジャーであるということを徹底しなくてはならない。

さて、最初の話も戻るが、成熟度の低い組織ではとてもそのようなフォーメーションは期待できない。そこで、PMOが組織マネジャーの補完的役割を果たせるような活動をしていく必要があるのだ。それが前回のAさんの話である。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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