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【PMOコラム58】プロジェクト活動をプロディースする(2008.06.02)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトが成功するPMOと失敗するPMO

前回、日本的なマネジメントをするために、どんなPMOの活動が必要かについて述べたが、今回はもう少し、この問題を考えてみたい。今回議論したいので、活動の品質の問題である。

実際に何らかの形で関わった企業のPMOを見ていると、品質の問題は深刻な問題であると実感する。あるSI企業のPMOの現状分析をした際に、特定のPMOスタッフが関わったプロジェクトはうまくいっている一方で、同程度のキャリアの別のスタッフの関わったプロジェクトはあまりうまくいかないという結果が出て、その原因分析をしたことがある。もちろん、標準プロセスは決まっているし、ガイドラインもあるし、使っているテンプレートも同じだ。この両名のPMOスタッフのいずれかが、著しく、プロセスやガイドライン、テンプレートを無視したり、改変したりという事実はなかった。


◆どこに差があるか

うまくいく方をA氏、うまくいかない方をB氏としよう。AとBの違いはどこにあったのか?ひとつ目はプロジェクトへの入り方である。意外かもしれないが、Aはあまり深くコミットしていなかった。インタビューでも、プロジェクト現場にかかわるのは必要最小限にしていると言っていた。基本的にプロジェクトに対して自分たちでやらせることを原則としていた。Bはかなり、べったりと担当プロジェクトに入り込んでいた。インタビューでは、彼女自身、プロジェクトのことはプロジェクトマネジャーと同じくらいに知っているという。

二番目の違いは、一番目と表裏一体なのだが、Aはプロジェクトマネジャーから指示されなくても動いていた。さすがに顧客への接触はプロジェクトマネジャーと一緒に限っていると言っていたが、社内のステークホルダに対する働きかけはプロジェクトの問題解決になることであれば、プロジェクトマネジャーに相談するわけでもなく、自発的にどんどん実行していた。これに対して、Bはあくまでもプロジェクトマネジャーと一心同体だとして、プロジェクトマネジャーに指示されたことだけをやるというのを基本としていた。もちろん、時間がある限り、プロジェクト現場にいて、いろいろなデータを見たりして、気がついたことはプロジェクトマネジャーに提言していた。

他にも、接触態度だとか、いくつも違いがあったが、とりあえず、この2つだけを紹介しておく。

あなたはどちら派だろうか?この事例は、かなり、極端な事例だと思うので、成功、失敗の話を抜きにして考えてみてほしい。


◆プロジェクト活動をマネジメントする

さて、では、Aはプロジェクト現場に顔を出すのは最小限にして何をしていたか。二番目のポイントで書いたようにステークホルダの調整である。Aはプロジェクトマネジメントはプロジェクトマネジャーだけがやるのではないという信念を持っていた。そしてプロジェクトへ顔を出すのは自分が何をすればプロジェクトがスムーズに進むのかを考えるためだというのだ。そして、特にプロジェクトマネジャーに相談するでもなく、プロジェクトマネジャーが進めようとする方法がスムーズに行くように動いていた。

プロジェクトマネジャーのやり方がまずかったり、あるいは新任のプロジェクトマネジャーの場合にはどうするかと聞いたところ、ある程度、どうなるか読めるので、その方法でうまくいくように先回りをするという。

たとえば、こんなエピソードを教えてくれた。あるプロジェクトが計画審査の際に収益率の問題で予算を削られた。このときに、Aはこのままでは無理だと考え、プロジェクトスポンサーに相談し、マネジメントの方法を一緒に考えてくれと「強要」し、その予算をベースにして、プロジェクトマネジメント計画書をすべて作り直してもらったことがあるそうだ。

要はプロジェクトマネジャーよりもう一段上で、プロジェクト活動を統合的にマネジメントしようという発想を持っているのがA氏である。プロジェクト活動を全体的に目配りしている人がいない中で、プロジェクト活動をプロデュースしているといってもよいだろう。もう時効なので言ってしまうが、A氏はプロジェクトマネジャーを躍らせていると思っているそうだ。

なぜ、A氏が支援したプロジェクトがうまくいくか感じて戴くことはできただろうか?

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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