◆日本型組織の特徴
日本的な組織の特徴は、よい意味での曖昧さにある。たとえば、プロジェクトマネジャーの仕事を分析してみると、プロジェクトマネジメントの仕事はもちろんのこと、プロジェクトスポンサーの仕事、そして、チームリーダー(メンバー)の仕事までこなしていることも少なくない。
日下公人氏は、「現場指揮官の教訓―強い現場リーダーとは何か」という書籍の中で、下士官の機能に注目し、以下のような米国の研究を紹介している。
米国のビジネスパースンは1マス、つまり、自分の職務という「縦のライン」で、かつ、1等級分の仕事しかしていない。日本のビジネスマンは自分の職務に隣接する多種類の仕事をしているばかりか、自分の所属等級を含めて上下に三マス分の仕事をしている。つまり、九マス分の仕事をしていることになる。
◆プロジェクトマネジメントはひとマスの仕事
PMBOK(R)などを見ると、プロジェクトマネジメントはひとマス分の仕事をすることを前提にしてその体系が考えられている。これは、上位のマネジメントからそのミッションが限定的に定義されていき、その一つにプロジェクトマネジメントがあるので成り立つ。言い換えると、プロジェクトマネジメントは、プロジェクトスポンサーがその役割をきちんと果たしていることを前提にして考えられている。逆にいえば、プロジェクトスポンサーがきちんと役割を果たさないとプロジェクトマネジメントというのはできないようになっている。プロジェクトマネジメントに対する違和感の多くはこのことに起因しているといってよい。
これは未成熟であるかどうかという視点で考えればよいということにはならない。現に、マネジメントにおいては、これが日本企業の強みになってきた。内部統制が求められるようになってくると、このようなやり方は通用しなくなるという意見もあるが、それも早計ではないかと思う。したがって、プロジェクトマネジメントもまったく違う形のものがこれから普及してくる可能性もなくはない。
いずれにしても、しばらくは、今までの日本型組織のマネジメントを継承したプロジェクトマネジメントにならざるを得ないだろう。
◆PMOの役割は上下のマスを機能させること
さて、そんなところで、このような曖昧さの中で、PMOは何をすればよいのだろう
か?
できることは数多くあるが、とりあえず、プロジェクトマネジャーの仕事をできるだけひとマスに収まるように周辺を埋めていくことだろう。特に上と下のプロジェクトマネジメント活動である。上のプロジェクトマネジメント活動としては、プロジェクトスポンサー(ラインマネジャー)を引っ張り出してきて、
プロジェクトと一緒に目標設定をする
プロジェクト組織についてプロジェクトと協議する
プロジェクトの主要人員の配置を行う
プロジェクトのマスタープランを作る
プロジェクト(マネジメント)の方針を決める
プロジェクトの実行状況をモニタリングする
エグゼクティブや顧客との窓口になる
などを一緒に行う必要があろう。
また、下に対しては、メンバーがフォロワーとしてきちんとプロジェクトマネジメントに協力できるように指導し、また、活動を支援する必要がある。たとえば、
・作業見積もり
・進捗報告
・リスク識別
などを指導・支援する必要がある。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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