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第10回 PMOの設立(2)〜PMOの支援形態(2006.06.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOの支援形態

PMOの支援形態は以下の3つに分けることができる

1)プロジェクトマネジメントの間接的な支援
2)プロジェクトマネジメントの直接的支援
3)監査

前回まで述べたプロジェクトマネジメントのメソドロジーの導入や標準化、改善などは前者である。後者には、プロジェクトに直接入っていって行うプロジェクトマネジャーの支援である。


◆マネジメントスキルの補完

直接的な支援は3つの理由によって行われる。一つは、プロジェクトの問題がプロジェクトマネジャーのスキルレベルを超えてしまった場合だ。つまり、プロジェクトマネジャー一人の手に余るような状況で、それを助ける必要があるという場合だ。これがどのような場合に相当するかはプロジェクトマネジャーのスキルに依存するので一概にはいえないが、典型的なケースはプロジェクトにトラブルがあった場合である。


◆マネジメント負荷の軽減

二番目はマネジメント作業の負荷が大きく、プロジェクトマネジャー一人ではプロジェクト納期に悪影響が出てくるようなケースである。例えば、プロジェクト実施が決まれば、計画を作るが、この計画作業に時間がかかり、スケジュールが遅れてしまう、あるいはプロジェクト作業を先行開始してのちのち混乱を引き起こし、作業のペースダウンをせざるを得なくなったり、最悪の場合には手戻りの原因になったりすることもある。このような状況に対しては、プロジェクト(コントロール)オフィスをプロジェクト内に設置し、対応していくことが多い。計画策定、進捗管理、ステークホルダへの報告などのマネジメント作業が支援の対象になることが多い。


◆客観的意思決定

三番目はプロジェクトにおけるさまざまな意思決定に対して、第三者的な視点を与えるためである。上の2つと被るが、本質的に別なので分けている。例えば、プロジェクト計画のレビューである。プロジェクトマネジメントメソドロジーの導入が進んできて、だんだん、意思決定の失敗が目立つようになってきた。

何か問題が起こったときに、プロジェクトマネジャーの経験不足という問題に帰着することが多く、あまり議論が深まらないが、では、経験不足のために「○○」が起こり、プロジェクトが窮地に陥ったという風に考えてみると、○○のところに入ることが多いのは不適切な意思決定である。ここで意思決定といっているのはあまり広い意味では言っていない。例えば、行動をしないというのも「不適切な意思決定の一つだ」などと言い出すと全ては意思決定の問題ということになるが、ここではそんなことが言いたいわけではない。Aにするか、Bにするかを決める場面だけを意思決定だと考えている。その判断が不適切なケースが多い。これが顕著に現れるのはまずは計画である。

ここに第三者的な視点を入れることのよって意思決定の精度を上げること。これがPMOの最も本質的な役割だともいえよう。

このような視点からは必ずしも、直接的支援が効果的ではないという議論もある。PMO自身のガバナンスの強さの問題もあるが、直接支援を行うと、プロジェクトと一体化してしまって客観性が弱くなるからだ。したがって、このような支援は本質的には三番目の支援形態である監査として行われるべきだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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