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第1回 プロジェクトマネジメントオフィス設置の動向(2006.02.09)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆初期のPMO設置の設立

ここにきて、日本でも、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を設立している企業が珍しくなくなっている。また、新たにPMOを設置しようとしている企業も後を絶たない。なぜ、PMOが必要だと認識されるようになってきたのだろうか?

1990年代の後半にPMOの設置をした企業の多くは、標準的なプロジェクトマネジメントの導入に狙いがあることが多かった。中心勢力はIT系の企業である。PMBOKが注目されるようになり、PMBOKの導入を考えたときに、今まで品質管理部門が標準開発プロセスを展開してきたように、自然と専門組織が必要となり、そして、PMOが設置された。もちろん、すべてプロジェクトマネジメントオフィスという名前で設置されたわけではない。プロジェクト管理部といった名称もあるし、品質管理部とか、生産技術部の中にプロジェクトマネジメントオフィスの機能がインプリメントされたケースも少なくない。


◆2000年以降のPMO設置

2000年になると、少し、違った観点でPMOの設置をする企業が出てきた。大きくは2つある。

一つは、プロジェクトを取り巻く環境、特に、SI企業では受注金額が厳しくなり、失敗プロジェクトが目立つようになってきたため、プロジェクトを直接支援し、失敗を防いでいくという役割を持つPMOが必要になってきた。リカバリーマネジメントというところまでやっている企業が少ないが、一応、プロジェクトマネジメントに関する豊富な知見を持つ人材がトラブルの起こりかけたプロジェクトを支援し、何とか平穏に完了させるというパターンが多かった。

もう一つはプロジェクトの小規模化である。IT分野でもそうだし、他の分野でもそうだが、製品のライフサイクルが短くなったため、大規模な投資は難しく、小さなサイズのプロジェクトに分割して投資していく傾向が見られるようになった。このため、プロジェクトの数そのものが増える傾向にあり、必要なプロジェクトマネジャーの数が増えてきた。これに伴い、多くの企業ではプロジェクトマネジャーの増員を実現すべく、育成が大きな問題になった。これに対して、PMOが育成を中心としてプロジェクトマネジメントのHRM(人材マネジメント)の役割を果たすようになってきた。


◆最近のPMOの設置

そして、この2〜3年、顕著な傾向として見られるのは、組織のプロジェクトマネジメント能力の強化である。これには2つのパターンがある。一つは、それまで標準化を中心に取り組んできた企業が次のステップとして底上げを図るケースだ。具体的には、現状のプロジェクトマネジメントのやり方に対して、問題点、不十分な点を中心にプロジェクトマネジメントの改善に取り組んでいる。このような動きはとくに、IT系の企業によく見られる。

一方で、製造業などに増えてきたのが、比較的しっかりとした組織マネジメント、あるいはプロセスマネジメントのスキームがあるところに、PMO的な役割を持つ組織を作って、従来のマネジメントにプロジェクト的な味付けをするというケースである。このようなパターンには、業務のスピードアップなどの理由により、ライン業務の限界に気づき、マネジメント革新として取り組んでいるケースが多い。そのような企業では、単にプロジェクトマネジメントにとどまらず、経営課題をプログラムとしてマネジメントしていくところまで視野に入れているケースが少なくない。

このケースは興味深い。従来のプロジェクトマネジメントの導入は現場のオペレーションの改善を目的としたものが多かったのに対して、このようなケースは戦略実行のための手段としてプロジェクトマネジメントを導入している点である。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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