◆リーダーシップは状況依存する
リーダーシップの神様といわれる、ケン・ブランチャードの理論に基づき開発されたシチュエーショナル・リーダーシップ(状況対応型リーダーシップ)という考え方がある。これは、図のように、業務指示の必要性と、サポートの必要性を軸にとった場合に、それぞれの象限で主として適用すべきリーダーシップが異なるという理論である。
図:状況対応型リーダーシップ
簡単にいえば、それぞれの象限は
R1:与えられた仕事に対して十分な実行能力がなく意欲が低いか不安を示す
R2:与えられた仕事に対して十分な実行能力がないが意欲はあるか自信を持っている
R3:与えられた仕事に対する実行能力はあり意欲はあるか自信を持っている
R4:与えられた仕事に対する実行能力はあるが意欲が低いか不安を示す
という象限になっており、それに対して、図のようなリーダシップが必要となる。ここで、それぞれのタイプのリーダーシップは、
・指示型:指示・命令を中心にプロジェクトを運用していく
・コーチ型:フェアで的確なビジョンを示し、道筋を作る
・サポート型:考えさせることによりメンバーに正しい方向を気付かせ、成長させる
・権限委譲型:メンバーのコミットメントを重視し、コミュニケーションでプロジェクトの一体感を出す
といったものである。
この考え方のベースにあるのは、リーダーシップはどのような状況にも通じる唯一絶対ものではなく、状況(フォロアー)に応じて変えるべきであるとする考え方であり、状況に応じてリーダーのとるべき行動、スタイルをパターン化し、分かりやすく示しているのが特徴である。
◆プロジェクトにおける状況依存型リーダーシップ
状況対応型リーダーシップと切り口は異なるが、プロジェクトマネジメントに求められるリーダーシップも状況に応じて異なると考えるのが自然である。プロジェクトマネジメントの状況とは、ライフサイクル+αで使い分けるのが適切だと思われる。
まず、プロジェクトの立上げにおいては、ビジョン方のリーダーシップが必要になる。つまり、プロジェクトが定義される中で、ステークホルダやメンバーに対して、プロジェクトのビジョンを提示し、プロジェクトへの関心を引出すリーダーシップである。また、提示したビジョンをこれらの間で共有することに対しても強いリーダーシップが必要になるだろう。
計画フェーズでは、最も重要な課題は計画に対するコミットメントを引出すことである。これは、メンバーの計画実行に対するコミットメントであると同時に、ステークホルダとプロジェクト計画を合意し、必要なサポートを引出すコミットメントでもある。
また、計画フェーズでもうひとつ重要なリーダーシップは、危機感を持たせ、リスクマインドを高めていくリーダーシップである。この2つは一見異なるようにも見えるが、危機感からコミットメントを高めていくようなアプローチを取ることによって、非常に相関の強いものになる。
コントロールフェーズでは、権限委譲によるメンバーの自律的な管理を促すリーダーシップが必要になる。いわゆるファシリテーション型のリーダーシップである。また、ここでも危機感を持たせることが重要である。
実行フェーズでは如何にパフォーマンスを高めていくかが最大の課題になる。このため、十分な動機付けを行うリーダーシップが求められる。と同時に、単にパフォーマンスを高めるだけではなく、メンバー自身の成長によってパフォーマンスが高まるよう、成長に対する動機付けも必要になってくる。
以上がライフサイクルに注目した場合の状況対応リーダーシップであるが、このほかに、これらとは明らかに異質のリーダーシップが必要になってくると思われるのが、プロジェクトトラブルの際である。トラブルにおいては、メンバーの心の支えになり、トラブルからプロジェクトを引っ張りあげるような強いリーダーシップが求められると同時に、可能な限りメンバーの持てる力を引出してチームとしての問題解決を実現させるようなリーダーシップが必要になる。
プロジェクトマネジャーは、以上のようなリーダーシップを身に付け、状況に応じて使い分けていくことが求められる。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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