◆改めてプロジェクトリーダーシップとは
リーダーシップというと何か特別なものに聞こえるかもしれない。確かにそういう一面もなくはない。第1回で
プロジェクトリーダーシップとは、課題達成のために他者に影響を与えるプロセス
であると述べたが、これをもう少し、具体的に言えば
プロジェクトリーダーシップは、プロジェクトに関わる人(メンバー&ステークホルダ&スポンサー)への「影響」を通じて
(1)プロジェクト価値を創造し
(2)重要な目標について実現体制を構築し
(3)必要な人材能力、および、チームを育成し
(4)計画実行のための課題を解決して
プロジェクトを目標実現に導く行動
であるといえる。
そのように考えると、プロジェクトリーダーシップを発揮することは、プロジェクトマネジメントプロセスごとに行うべきリーダーシップ行動として捉えていくことができる。しばらく、この議論をしてみたい。
ここでは、影響を与える相手を
(1)チームやメンバー
(2)外部ステークホルダ
(3)プロジェクト全体
の3つに分けて考えることにする。これについてはもう少し細分化することもできるとは思うが、話をあまり複雑にしないように、プロジェクトチームの内外、両方の3つに分けるにとどめる。
◆プロジェクト立ち上げのリーダーシップ行動
まず、最初にプロジェクトの立ち上げフェーズについて考えてみる。
ここで、チームやメンバーに対しては、比較的接点は少なく、また、チームの構想はあるが、メンバー自身の明確な役割も決まっていないことが多い。また、場合によってはチームの編成の構想すらないケースもある。
このような中で、プロジェクトビジョンに関して共有ができれば十分にリーダーシップを発揮しているといえよう。ここで注意すべき点は、チームメンバーが確定しない中でも、チームメンバーになってくれそうな人に対して、ビジョンの発信をして、共有することが重要なことだ。
◆立ち上げはステークホルダへのリーダーシップ行動が中心
このフェースでのリーダーシップの発揮は主に、外部ステークホルダに対して行われる。
ステークホルダの中で、まず、プロジェクトスポンサーへのリーダーシップが重要だ。スポンサーに対してはまず、行うべきことは、
プロジェクトスポンサーとプロジェクトの目標を合意する
ことである。ここではそのプロジェクトを達成できるための条件を頭に思い浮かべながら、自分自身が納得できる目標の設定ができるように粘り強くプロジェクトスポンサーと交渉していく必要がある。
その中で、同時に、実施条件を交渉することも必要である。条件交渉の中で重要なのは、マネジメントサポートに対する交渉である。中でもリソースの供給、顧客対応などについて役割分担と明確な協力方針を引き出しておくとよいだろう。
このような形で、そのプロジェクトの担当を引き受ける形ができたら、次は、プロジェクトマネジメント計画書の作成に取り掛かり、まずは、プロジェクトマネジメント方針を明確にし、プロジェクトスポンサーの合意を取り付けておくことが重要だ。このような作業はややもすると形式的な仕事だと見られがちだが、プロジェクトでは何が起こるかわからないという前提に立てば、「原則」を明確にしておかないと、その場、その場で、プロジェクトスポンサーや組織の意向に振り回されることになる。これは双方にとってあまり幸せなことではないので、マネジメント方針を決め、トラブルの際にはその方針の中で問題解決を図っていくことが重要である。
◆成功イメージをプロジェクト関係者全員で共有する
同時に、その方針に納得してもらった上で、プロジェクトスポンサーを動かして、顧客を含むすべての主要ステークホルダにプロジェクトの進行への協力を求めていくことが望まれる。
このような過程を経て、プロジェクト体制の大枠ができたところで、まず、最初にすべきことは、プロジェクトに関わる全員でプロジェクトの成功イメージを共有することである。計画書とか、スコープ記述書とかいった形式的なことではなく、プロジェクトマネジャー自身の言葉で成功について語り、プロジェクトの関係者全員で共有することが何よりも大切だ。
以上が、立ち上げプロセスである。計画プロセス以降は次回以降に述べる
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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