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プロジェクトゴールの共有、ゴールまでの道のりとメンバーの責任を明確にした計画とその共有、活発なコミュニケーションがプロジェクトの成功要因

第7回 プロジェクトを成功させる5つの要因(2009.02.20)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

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◆何をするかではなく、どのような状態を作るか


前回は要求定義に話をした。6回まできているが、少し話がディープになって、連載趣旨と合わなくなってきたので少し休んでいた。軌道修正し、再開したいと思っている。で、いろいろと考えたが、この連載の全体像を明確にし、その全体像を共有しながら連載を進めていこうと思う。

その全体像とはプロジェクトの成功要因である。プロジェクトマネジメントは、基本的に、プロジェクトを成功させるために行うもので、成功要因を手を変え品を変え、実現していこうとする問題解決プロセスだからだ。言い換えれば、プロジェクトマネジメントスキルとはプロジェクトの成功要因を実現するためのスキルである。

というわけで、今回はプロジェクトの成功要因を整理するという作業に挑戦する。と思って、2週間くらい前から取り組みだしたのだが、意外と難しい作業であることがわかった。まず、本をいろいろと調べたが、「何をしろ」とは書いてあるが、その目的が明確に書かれているものはあまりない。

つまり、どのような状態を実現できれば成功するかが、わかっているようであまりわかっていないことに気がついた。何をすべきかは組織によって変わるし、極論すればプロジェクトによって変わる。プロジェクトやメンバーをどうしなくてはならないかの方がよほど重要だ。そう考えると、これは結構重要な気づきだ。


◆プロジェクトを成功させる5つの要因


そんな中で、本に書かれていることや、自身のプロジェクトマネジャーとしての経験、コンサルタントやファシリテータとしての経験などを踏まえ、5つの要因に絞ってみた。

一つ目はこれまでしてきた議論で、プロジェクトのゴールが共有されていることである。共有したい範囲は、チーム、顧客、そして、上位組織である。これについては、改めて説明しないし、要求定義は、ゴールを共有するために行う仕事である。

二番目はゴールまでの道のりと、その道を進んで行く際のメンバーの責任を明確に示す計画をあり、それが共有されていること。かつ、その計画がプロジェクトの状況判断や進捗計測のために使われていることだ。これは、これから解説をする予定だが、当たり前のことのようで意外と難しい。

三番目は、スコープがコントロールされていることだ。これは、スコープにステークホルダの要求がきちんと反映されていて、そして、要求が、予算や納期とバランスがとれていることを意味する。さらに、そのバランスが崩れないように常にマネジメントが行われていなくてはならない。

四番目はプロジェクトに関係するすべての人たちの間で、コミュニケーションが活発に行われ、かつ、効果を発揮していることだ。コミュニケーションはプロジェクトのゴールの共有から始まり、計画、進捗、スコープなど、あらゆることを対象にして、活発に行われる必要がある。

最後はマネジメントサポートがきちんと行われていること。どうも、日本ではこの要因はあまり重要だと考えられず、プロジェクトマネジャーの権限の問題として議論されているような気がする。率直にいえば、2つの意味でこれは間違いではないかと思う。

一つ目は、プロジェクトの仕事をすべてプロジェクトマネジャーに権限委譲することはできない。例えば、リソース配分を権限委譲することはできないし、予算決定を権限委譲することもできない。にも関わらず、平気でプロジェクトにすべて任せっぱなしという状態を作っている。

二つ目は、そもそもプロジェクトの仕事というのは、権限(公式パワー)を行使して行えるようなものではない。極論すると権限でできるなら、プロジェクトなど要らない。できないからプロジェクトという形をとっている。プロジェクトマネジャーが考えるべきことは、権限のない中で如何にプロジェクトをうまく進めていくかであり、「権限があれば」というのは単なるタラレバに過ぎないことを認識すべきである。

この2つを併せると、プロジェクトにマネジメントがどれだけ関われるかがプロジェクトの成果を決めるといっても過言ではない。


◆成功要因と失敗回避要因の違い


以上の話を整理すると、プロジェクトの成功要因は

1.ゴールの共有
2.ゴールまでの道のりと責任の計画化、および、計画に基づく管理
3.スコープのコントロール
4.コミュニケーションの活性化
5.上位組織によるプロジェクト支援

の5つということになる。この中で、いわゆるプロジェクトマネジメント技術と言わ
れているのは、2と3だけである。

ここでもう述べておきたいことがある。それは、これをプロジェクトを失敗させない要因(失敗回避要因)という風に置き換えるとどうなるかだ。これもかなり考えた。
結論からいうと、

1.ゴールまでの道のりと責任の計画化、および、計画に基づく管理
2.スコープのコントロール
3.リスクのコントロール
4.コミュニケーションのコントロールと、契約(縛り)の強化
5.上位組織による統制(レビューの強化)

の5つである。こちらは1〜4はプロジェクトマネジメントの問題で、5はPMOの問題である。

注目してほしい点は成功要因と失敗回避要因で被っているのは、1と2(成功要因の2と3)だけだという点だ。

もうひとつの決定的な違いは、失敗回避要因は上のような書き方をするより、プロセスを明確に書く方がよいことだ。今回の記事ではKPIという言葉を使っていないが、成功要因として述べてきたことはKPIに他ならない。しかし、失敗回避要因はKPIでない方がよい。

この連載で議論しようとしているのは、成功要因を追求するプロジェクトマネジメントであることをまとめとして述べておく。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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