第6回 プロジェクト要求をどのように収集するのか?(2008.12.12)
◆プロジェクト品質という考え方
前回は、ステークホルダ、ゴール、スコープの関係について説明した。そこで述べたように、切り口を決めてそこからこの三角関係に切り込んでいくことになるが、どこから切り込むかによって目的(戦略)達成の度合いが全然変わってくる。
このことを念頭において、プロジェクトマネジメントの目的というのを改めて考えてみよう。プロジェクトを実施する場合に、もっとも重要なのは「プロジェクト品質」という概念である。プロジェクト品質は、プロジェクトで開発するプロダクトの品質だけではなく、プロジェクトマネジメントにかかわる品質を問うものだ。したがって、いくら完璧な製品やシステムを作っても、納期から遅れていたり、あるいは、当初想定した原価を超えていたりすればプロジェクトの品質は低くなる。もちろん、コストや納期のようなはっきりしたものだけではなく、顧客満足(CS)やメンバーの満足(ES)も品質として評価されるし、さらに言えば、プロジェクトで如何にリスクを発生させなかったかとか、如何にコミュニケーションがうまくできたか、如何に効率の良い調達ができたかといったことも評価の対象になる。
このようにプロジェクトマネジメントの品質、つまり、どれだけ計画通りにプロジェクトを進めることができたかをプロジェクト品質と呼ぶ。プロジェクトマネジメントというのはつまるところ、プロジェクト品質を少しでも向上させることが目的であり、その延長線上にプロジェクトを成功させることがあるのだ。
◆プロジェクト要求がプロジェクト品質の鍵を握る
さて、このプロジェクト品質にもっとも大きく影響してくるのが前回述べたプロジェクト要求であり、プロジェクト要求を持っているのがステークホルダである。したがってプロジェクト品質を高めるためには、要求をうまく引き出していくことが重要である。
ここで注意した方がよいのは、要求を持っているといっても潜在的に持っているケースが多い。つまり、要求には
(1)ステークホルダ自身が意識し、顕在化している要求
以外に
(2)ステークホルダ自身が意識はしているが、顕在化はしていないもの
(3)ステークホルダ自身が気がついていないもの
の2つがある。プロジェクトにもよるが、(3)の要求が重要なケースも少なくない。
したがって、要求の分析の際に答えを探すように態度で臨むと、(1)や(2)の要求しか引き出せず、失敗する可能性が高くなる。
さらに話を複雑にしているのは、前回述べたように要求は、ステークホルダによって整合性のない(対立する)ものが多いことだ。たとえば、社内ステークホルダでいえば、営業部長はできるだけ早くほしいと思っているが、技術部長はしっかりした商品を作りたいと思っているといったことだ。
◆プロジェクト要求の収集法
では、実際に要求の分析方法にはどのようなものがあるのか?上のように考えた場合に、ステークホルダや顧客自身から情報として得られるものとそうでないものがあると考えると、両方の側面からのアプローチが必要である。
ひとつのアプローチはステークホルダから情報を得るための方法である。これには、
・顧客の声
・調査票
・既存のもの(システム、商品)の分析
・インタフェース(ユーザ)の研究
・ファシリテーションセッション
・ブレーンストーミング
などの方法がある。これに対して、外部から情報を得て、ステークホルダにぶつけることによって要求を引き出す方法としては
・マーケティングリサーチ
・ベストプラクティスの評価
などをあげることができる。また、もうひとつのやり方は、ステークホルダ(特に顧客)を観察することによって、ステークホルダが顕在化しきれていない要求を引き出す方法がある。この方法としては
・プロトタイピング
・フォーカスグループ
・観察
などをあげることができる。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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