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第14回 プロジェクト目的再考(2009.01.06)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトスコープ=プロジェクトの目的?

プロデュースという活動の本質は、プラスサムにある。ここを理解しないと何も始まらない。PMstyleにプロジェクトリーダーシップの講座があるのだが、この講座を受講した人からよく指摘されるのはビジョンがなぜ、必要なのかという疑問だ。

プロジェクトスコープ=プロジェクトの目的

であればビジョンは必要ないし、プロデュースという活動も必要ない。なぜ、こうなるかというと、プロジェクトの目的を「何をすべきか」と考えるからだ。しかし、よく考えてみればわかるが、プロジェクトの目的はむしろプロジェクトを行うことによって、顧客や自社のビジネスやマネジメント、そしてプロジェクトメンバーが「どうあるべきか」である。


◆プロジェクトの目的空間を拡張してみる

すると、成果物だけが目的ではないことは明々白々である。問題はどのようにして目的の空間を広げるかだ。僕がプロジェクトの企画をする際には少なくとも、以下の2つの視点からは目的の空間を作ってみるように心がけている。

ひとつは、主要ステークホルダ、つまりプロジェクト活動の参加者である。だといってもよいが、代表的には顧客、事業責任者、経営陣、メンバー、自分(プロジェクトマネジャー)、などである。

もうひとつは時間軸である。時間スケールはプロジェクトによって異なるが、プロジェクトが終わったとき、プロジェクトが終わって3年後、プロジェクトが終わって10年後のそれぞれに「どうなっていたいか」である。

これは、以前紹介したP2Mの価値デザインマトリクスに通じるところもある。無理やりっぽいかもしれないが

 時間軸=評価項目
 ステークホルダ軸=成果願望

という対応になっていると思われる。

いずれにしても、このようにしてプロジェクトの目的の空間を広げていくと、

初期のプロジェクトスコープ<プロジェクト目的

という構図が見えてくる。ここにプラスサムの発想が生まれる。このようなプロジェクト目的こそがプロジェクトのビジョンなのだ。ゆえにビジョンを作ることはどのようなプロジェクトであっても不可欠である。


◆「スコープありき」に負けない

ここでもうひとつ考えておかなくてはならないことがある。それはビジネスの流れの中では、「プロジェクトスコープありき」になるケースが少なくないことだ。SIプロジェクトはどんどんこの方向に向かっているし、一般的に考えて調達に対応するプロジェクトはRFPなどでプロジェクトスコープが明確化され、そこからプロジェクトが始まるような傾向が強くなっている。

プロジェクトスコープ=プロジェクトの目的

という方程式が生まれる背景でもある。

このような状況を回避するには、スコープの背後にある目的を洞察する必要がある。提示されたスコープに対して、目的を洞察し、RFPに対して上のような目的に構図を仕込んで企画(プラニング)をしていくことが重要である。SIのプロジェクトであれば、その洞察力の源泉になるものは顧客に対する理解である。顧客の理解なしには始まらない。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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