◆要求の状況
前回は、ティッピングポイントを創れという話をしたが、ビジネストによっては顧客からの要求で動いていくものも少なくない。このようなビジネスにおいても、ティッピングポイントが有効であることは前回述べたとおりであるが、このようなビジネスにおいて今回はどのようにティッピングポイントを創っていくかを考えてみたい。
最初に考えてみたいのは要求とは何かということだ。いうまでもなく、プロジェクト要求とは顧客がプロジェクト成果物に求めるものである。
これは一見正しいようで、正しくないのかもしれない。要求をこのように定義した場合、顧客は要求を持っているということが前提になっている。持っている?少なくとも3つの状況がある。
(1)顧客が明確な「答え」を持っている状況。
(2)何かの要求はあるのだが、明確になっていない状況。
(3)顧客は要求があることすら認識していない状況。
顧客の要求に応えるビジネスは多くの場合、(1)ないしは、(2)を前提にしている。(1)の場合には要求を分析し、それに応える。(2)の場合には、もっと厄介で、プロジェクトは顧客の要求を探り出し、それを提案していく。
これらの場合でも、ティッピングポイントはできる。特に、(2)のケースは顧客の要求はどんどん拡がっていくことが少なくない。しかし、ティッピングポイントをもっとも作りやすいのは(3)である。この場合、顧客は要求していないのだから、顧客の業務を詳細に分析し、そこから顧客の要求のコンセプトを生み出し、それを要求化していく必要がある。いわゆるビジネスアナリシスの世界だ。
◆顧客ニーズを発明する
ロバートソンはこれを「顧客ニーズを発明する」と述べているが、まさに、「発明」だといえるだろう。
個別要求のビジネスにおいて要求を発明しなくてはならないケースは少なくない。それは、上にも述べたように要求を見るスコープが違うことに起因することが多い。顧客はソリューションを要求だと考えるケースが多い。そもそも論を言えば、以前はソリューションを検討して、それをベンダーに依頼していた。
ところが、ソリューションが不十分であり、結果として、顧客の業務の中に顧客も気がついていないニーズがあるのだ。これを発明することがプロジェクトの成功に結びついていく。
◆顧客プロファイリングがポイント
では、要求を発明するためには何が必要か?顧客の組織や、顧客の業務に対するプロファイリングである。
プロファイリングとは「現状から見抜いた問題を明確にするプロセス」のことだ。簡単に言えば、問題を定義するプロセスである現実には、現状は複雑であり、問題も複合的になっている可能性が高い。そのような中で問題を定義するには、十分な洞察を行う必要があり、洞察のための豊富な視点を持つことが求められる。そのような視点を持つには、ミドルマネジャーの豊富な経験が役立つわけだ。
プロファイリングを行い、要求を発明するとは、顧客の業務のミッションを深く理解した上で、顧客がソリューションとして想定していなかったような問題解決のための目的・目標の連鎖、すなわち、シナリオを創り出していくことである。
この際に、目的・目標がティッピングポイントになるようなシナリオを描くことが必要になる。そのためには、マクロ的な問題解決とミクロ的な問題解決を組み合わせていくことが不可欠である。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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