ラテラル・シンキングの第7回目です。
前回紹介した、認識の偏りを生じさせる「ヒューリスティクス」は多くの人びとが共通に持つものでした。今回は専門家だからこそ生じてしまう「玄人の思い込み」とその対策について見ていきましょう。
こんな話を聞いたことがないでしょうか?
「専門分野では、その分野の専門家ほど意思決定ができない!!」
実は、これにはちゃんとした理由があるのです。
専門家は、自分の専門領域では細かい前提条件や仮定にまで目を向けてしまいます。
詰めるべき要素をたくさん見つけてしまうのです。そのため多くの情報を必要とし、複雑な分析となり、それによって意思決定ができにくくなってしまうのです。
このメルマガをお読みのみなさんは、それぞれの分野におけるエキスパートであることでしょう。もしかしたら、自分が専門家であることが、ビジネスシーンにおいて逆に足かせになる経験をしたことがある方がいるかもしれません。
「玄人発想」が思考の拡がりや新たな発想の妨げとなるケースです。
その最たる例が1回目で紹介したエレベーターのクレーム対応問題かもしれません。
このときは、エレベーターシステムの専門家が「エレベーターの問題」として捉え、細かいことを考え始めてしまい行き詰まっていたそうです。
そこへ、素人の視点で「エレベーターの利用者の問題」と捉え、鏡の設置を提案したのは人事部の新人スタッフだったそうです。専門外のド素人こその思考の枠組みにとらわれない発想です。素人の発想が、低コストな解決策を生み出したのです。
「素直で自由な発想を邪魔する一番は知っていると思う心である」として素人発想の重要性を指摘したのが人工知能、ロボット工学の世界的権威である金出武雄氏です。
氏はその著書「素人のように考え、玄人として実行する」で専門家であればあるほど素人のように発想するようにしなければならないとしています。そして、その発想を実行に移すときに専門家としての知識を大いに活用すべきとしています。
この「素人発想法」は、ゼロベース発想法と基本は同じですが、専門的知識までもないものとするか否かに違いがあります。ゼロベース発想は、どちらかというと現在進行形のプロジェクトや事業に適したものになります。それに対して、よりクリエイティブ(創造的)な場面に向いているのが「素人発想法」です。
東京〜大阪間を1時間で結ぶことを目標として計画が進められているリニアモーターカーの生みの親である京谷氏は、その開発プロジェクトでの最初の頃のシーンを次のように回想しています。
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「10センチ浮かせることで、東京〜大阪間を1時間で結ぶリニアモーターカーを開発する」とプロジェクトメンバーに話したところ、
「本気ですか」、「そんな話、聞いたこともありません」、「めちゃくちゃだ」、
そして「できない」「不可能だ」「常識はずれだ」さまざまな反対意見が頻出した。
しかし「未来に理論なんかあるか! 常識なんかあるか!」とメンバーに声を荒げて目的として定めた。すると渋々ながらも具体的に問題の分析を始め、具体的な成果が生み出され始めるようになった。過去の公式から新しいものを創ろうという考え自体順序が違っている。理論は後からついてくるものである。
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一般的に「こうすればうまくいく」「そうしてはならない」等その分野のさまざまなパターンや過去の蓄積を知っているのが専門家です。それ故に素早く適切な意思決定を行うことができる反面、視野が狭くなってしまいがちなのです。
同様にクリエイティブ(創造的)な思考をしようとしても、専門家としての知識が邪魔になることがあります。「同じようなことをやって失敗した事例がある」
「こういうときは、こうするのが常識だ」等の過去の経験や豊富な知識です。
専門家であるがゆえに複雑に考えてしまい拡がりのある思考ができなくなるのです。
そのようなときこそ「素人のように発想」するのです。
「これは難しい。きっとうまくいかない」
「もっといい方法があるはずだ。もっと慎重に対応すべきだ」
と無限ループに陥りそうなときには、
「専門家だからとぐだぐだ考え続けるよりは、素人としてシンプルに」
「専門家としての公式を捨て、目的にあった新しい大胆な方法を探る」
を、行動に移してしまうのです。
小さくてもシンプルな一歩目を踏み出すことで、新たな可能性が開けてくるのです。
オーナー社長が正社員を募集するという噂を聞いたアルバイトの青年が、社長にひと言ささやいたところ、見事、正社員になることができました。
青年は、社長に何とささやいたのでしょうか?
クイズへの回答はこちら ※終了しました。
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山下貴史
マーケティング戦略コンサルタント。大学卒業後、大手シンクタンクへ入社。システム開発やコンサルティング業務を経て、戦略系コンサルティング会社に転職。リサーチ部門で、主に流通系をテーマに取り扱う。現在はコンサルティングファーム「IVC」でラテラル・シンキングを活用したコンサルティングやセミナーを展開。フィールドワークを分析が得意で、「人生はエンターテイメント」をモットーに、日々精進している。「世界一わかりやすいマーケティングの本」、「買う気にさせるメッセージマーケティング」、「あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由」など、著書多数。
本連載は終了していますが、PM養成マガジン購読にて、最新の関連記事を読むことができます。
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講師:鈴木 道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
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