ラテラル・シンキングの第5回目です。
前回は「思考の枠組みを拡げる」方法として、「課題を頭の隅に置き続ける」ことの重要性を紹介しました。今回は「思考を縦に飛躍させる」方法を見ていきましょう。
早速ですが、次の問題を考えてみてください。
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二つのグラスとスプーンがあります。一つのグラスには赤ワインが、もう一つのグラスには水が、それぞれ同じ量だけ入っています。
最初に、赤ワインをスプーンでひとさじすくって、それを水が入っているコップに移し掻き回します。次に、わずかに赤くなった水のグラスから、スプーン一杯分の液体を赤ワインが入ったグラスに移して、こちらもしっかりとかき混ぜます。
すると、少々薄くなった赤ワインができあがります。
この一連の動作を、もう一度繰り返したとします。
さて、もともと赤ワインが入っていたグラスの中に入ってきた水の量と、もともと水が入っていたグラスに入ってきた赤ワインの量は、どちらが多いでしょうか?
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もともとグラスに入っていた赤ワインや水の量をX(エックス)として、スプーン一杯の量をY(ワイ)として、というような具合に考え始めた人がいるかもしれません。
また、違うやり方であっても、何らかの計算を始めませんでしたか?
確かに計算を繰り返すことで正しい答えを導き出すことができます。
そのようなやり方は思考プロセスとしてとても正しいのですが、少々時間がかかってしまうことがあります。
実は、この問題は、そんなに難しく考える必要はありません。小学生でも解ける問題なのです。
この問題では一つひとつのステップを追うのではなく、最終的な段階に焦点をあてることで、すぐに答えを出すことができます。
移し替えの動作終了後の二つのワイングラスの中の液体の高さ(容量)が同じだということに想像が及べば、すぐに答えがでます。単に、赤ワインが水のグラスに移った分だけ、水が赤ワインのグラスに移っているだけなのです。
当然ながら着実にステップを踏んで計算した場合も「移動した水とワインの量は同じである」という答えがでます。論理的なステップ踏んで考えた答えと、思考を縦に飛躍させた答えが一致するタイプの問題なのです。
この問題は、ラテラル・シンキングを提唱したエドワード・デボノの著書「水平思考の世界」の中で「ものの見方を変える」ことによる効果を示す一つの例として紹介されていたものです。
実際、このような課題に直面したとき、人びとはプロセスのある動作をひとかたまりとして見るのではなく、別々の単位に分割する傾向があります。
単位毎に理解しようとするため、この手の問題を難しく考えてしまいがちなのです。
「別の見方をするのは面倒だ」「計算で答えがでるのだからいいのではないか」と思う方がいるかも知れません。
しかし、液体を移す回数を、あと数回増やされたらどうでしょうか?
計算にうんざりしてしまう方が多いはずです。
せっかく簡単に答えを得る方法があるのであれば、それを使わない手はありません。
論理的に計算していけば着実に答に近づくものであっても、プロセスの最終結果を想像することで、簡単に答えを導き出せる場合があるのです。
ちょっとしたコツが必要になりますが、今回のような「最終形から考える方法」は、いろいろと応用が利きます。
日々の業務やプロジェクトにおいても、目の前に積み上げられた課題をこなすことに忙殺されている方がいるかもしれません。また、新たに生じてきた課題に対して「すぐに取りかからないと!」と、まさに動きだしているところかもしれません。
ちょっとしたときにでも、それらのプロジェクトが最終的に、どのような形になっているのかを想像するような習慣を付けてみたらいかがでしょうか。
人には、未来の夢や願望に対して強い想像力を発揮する傾向があるとされています。
目の前のことが邪魔して見えていなかった、意外なアイデアや解決策が浮かんでくることがきっとあるはずです。
高校野球の大会に全国で4112校が出場した。
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さて、優勝校が決まるまでには、最低何回の試合が行われることになるだろうか?
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山下貴史
マーケティング戦略コンサルタント。大学卒業後、大手シンクタンクへ入社。システム開発やコンサルティング業務を経て、戦略系コンサルティング会社に転職。リサーチ部門で、主に流通系をテーマに取り扱う。現在はコンサルティングファーム「IVC」でラテラル・シンキングを活用したコンサルティングやセミナーを展開。フィールドワークを分析が得意で、「人生はエンターテイメント」をモットーに、日々精進している。「世界一わかりやすいマーケティングの本」、「買う気にさせるメッセージマーケティング」、「あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由」など、著書多数。
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