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合理的に実施可能な範囲でリスクを下げるという考え方「ALARP(As low as reasonably practicable)」に従い、時間、労力、コストのトレードオフにて、リスク対策を行う

No60. リスク対応計画《一般》(2018.12.11)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代

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【目的】プロジェクト(ベースライン)計画のスケジュール、予算を達成する
【用途】既知のプロジェクトリスクに対して、対応処置を決定する
【効用】重要なリスクを共有することでリスクマインドが向上し、目標を達成できる
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◆リスク対応計画

これまで、プロジェクトリスク知識エリアの

「リスクマネジメント計画」プロセス
「リスクの特定」プロセス
「定性的リスク分析」プロセス

について、取り上げました。

本号では、次に続く「リスク対応計画」プロセスを取り上げます。本プロセスでは、前プロセスの「定性的リスク分析」で重要だと評価されたリスクに対応する計画を作成します。特定された重要なリスクに対して、少なくとも、発生確率、影響度が対策前より下がるために必要なマネジメントを行います。

そもそも、プロジェクトリスクとは、発生すれば、プロジェクトが計画通り実行できない事象のことです。ポイントは、発生するかどうかが不明であること、発生すればプロジェクト目標に影響を与える事象がリスクだということです。

つまり、リスクマネジメントは、発生するかどうかわからないことに対して、時間、労力、コストをかけるマネジメントです。発生してしまうと、影響があるわけですので、発生しないように、時間、労力、コストをかけるのか、発生するかどうかが分からないてめ、発生してから、時間、労力、コストをかけようとするのか、どちらの考えをとるのかは、「リスクマネジメント計画」で定義していますので、それに従います。

◆ALARP

リスクマネジメントには、「ALARP(As low as reasonably practicable)」という、合理的に実施可能な範囲でリスクを下げるという考え方があります。

「計画上でのリスクの排除」
    ↓
「冗長性を持たせた計画」
    ↓
「コンティンジェンシープラン」
    ↓
「マニュアル化やトレーニング」

プロジェクトにおいても、時間、労力、コストのトレードオフにて、対策を行うことになります。

◆リスクの戦略

PMBOK(R)ガイドでは、リスク対策の戦略として、次の4つを挙げています。

・回避:リスクの原因に対応し、その原因によるリスク発生の可能性を完全に消滅
・軽減:リスクの原因や影響に対して、対応し、発生確率や影響度を減らす
・転嫁:発生確率は減らないが、影響に対する責任を第三者に移す
・受容:リスク発生後に対応するコンティジェンシー計画を作成しておく

上記の戦略は、時間軸で見ると下記のようになります。つまり、事前対策か事後対策となります。


プロジェクト                       プロジェクト
 スタート          リスク発生            終了
│    リスク発生の前     │     リスク発生の後   │
│ ─────────────  │  ───────────  │
│     予防と計画      │      状況の回復    │
└────────────────┼───────────────┘
   回避、軽減、転嫁        コンティンジェンシー計画の発動
受容(コンティンジェンシー計画作成)       

事後対策の場合、リスク発生後、大きなトラブルになってからではなく、できるだけ早くコンティンジェンシー計画を実行する必要があります。そのため、リスク発生のタイミングを予測しておきます。また、通常、リスク発生の前には、何か兆しのような事象が散見されますので、リスクの兆候として捉えておきます。

◆リスク登録簿

リスクの対応計画として、リスク登録簿に記載する内容は以下のとおりです。

・リスク事象
・リスク発生のタイミング
・発生確率、影響度、重要度
・対応の戦略
・具体的な対策
・リスク発生の兆候
・リスクオーナー(リスク対策の責任者)

具体的な対策は一般的には、以下のとおりです。リスク事象の原因に対して、コントロール可能な場合や重大なリスクに対しては、原因に対する対策として、回避の対策を取ります。

・スコープリスク:実現可能な最少範囲の成果物にする
・スケジュールリスク:アクティビティの依存関係を最小限に、長い期間のアクティビティを分割、高リスクのアクティビティの前倒し実施
・リソースリスク:すべての成果物への責任者(個人名)の割当て、アクティビティに必要なスキルを定義し、能力を超えての割当てをしない

次に、発生確率を減らすための原因に対する対策として、軽減の対策を考えます。

・スコープリスク:仕様凍結、厳重なスコープ変更管理、プロトタイプの作成
・スケジュールリスク:優先度の高いアクティビティの前倒し実施、厳格な進捗管理
・リソースリスク:チーム内の信頼関係構築、ベンダ管理
・その他のリスク:コミュニケーションの改善、スポンサーシップの確保、、ユーザの巻き込み

また、軽減として、影響度を減らす対策を考えます。

・スコープリスク:仕様内容を軽くする、仕様・機能の優先順位の変更
・スケジュールリスク:クリティカルパスではないアクティビティを延期、要員の変更、リスケジューリング
・リソースリスク:時間外労働、要員獲得(他の優先順位の低いプロジェクトから)
・その他のリスク:予備のスケジュール設定と予備予算の獲得

そして、特に重大なリスク(トップ10)については、メンバーから見ることができる場所(掲示板や壁に貼る)に掲示し、常にリスクを意識することで、リスクマインド(リスクに対する感覚)を高め、スケジュール、予算の達成を目指します。

それでは、リスクの監視コントロールについては次号にします。

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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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