No58. リスクの特定《一般》(2018.09.19)
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【目的】プロジェクト期間中に発生する可能性のある問題について、一覧化する
【用途】プロジェクトを計画通り進めるため、計画作成・コントロール時に使用する
【効用】プロジェクト・リスクを一覧化することで、計画をチームで共有化できる
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◆リスクの特定
前号では、プロジェクトリスク知識エリアの「リスクマネジメント計画」プロセスについて、取り上げました。
本号では、次に続く「リスクの特定」プロセスを取り上げます。
前プロセスで作成されたリスク・マネジメント計画書をもとに、リスクの特定プロセスを行います。
言い換えれば、リスク・マネジメント計画書には、リスク知識エリアの各プロセスの進め方も記載するということですね。
本プロセスは基本的に、次にステップで進めていきます。
1.過去のデータから発生しそうなリスクを洗い出します。
2.プロジェクト計画書(ベースライン)の中から、プロジェクトリスクを発見します。
3.他の計画書の中から、追加リスクを発見します。
4.リスク一覧に記述します。
◆リスクを洗い出す
1.では、過去のプロジェクトでのリスク一覧、レッスンズラーンド(振返りによる知見)、ナレッジデータベースなどを組織内、もしくは一般的に公開されている資料から検索します。特に、スムーズに進まなかった、上手くいかなかったプロジェクトに着目します。
◆ベースラインからプロジェクトリスクを発見
2.では、スコープリスク、スケジュールリスク、リソースリスクを洗い出します。
スコープリスクは、次の観点から洗い出します。
・技術やシステムの複雑性
・設計書や仕様書における矛盾や相反する点
・最高のパフォーマンス、スコープの実現性、品質に対する要求
・新技術採用への要請や強制
・WBS項目のサイズの大きさ(大きすぎる、小さすぎる)
・WBS項目のブレークダウンに対する抵抗の有無
スケジュールリスクは、次の観点から洗い出します。
・アクティビティ担当者の作業への意欲の欠乏
・2週間以上のアクティビティ
・不明確なアクティビティ期間見積もり
・重要アクティビティの悲観(ワーストケースの場合の)見積り
・クリティカルパスや余裕日の少ないアクティビティ
・クリティカルパスにおけるシナリオ分析(シミュレーション)
・外部依存関係のあるアクティビティ
・組織横断や外注先と行うアクティビティ
リソース(ヒト、モノ、カネ)リスクは、次の観点から洗い出します。
・未知の人材と行うアクティビティ
・必要なスキル人材を獲得できないアクティビティ
・特定の個人に依存するアクティビティ
・パートタイムもしくはリモート人材を含むチーム
・不明確なコスト見積り
・人手の足りないアクティビティについて
・外部調達や危険要素と考えられることへの接触の有無
◆他の計画書からリスクを洗い出す
3.では、次の観点から、リスクを洗い出します。
・コミュニケーションにおいて、困難なこと
・外部からの変更について、管理すべきこと
・市場やユーザ要求が変わること
・ビジネスが再編成されることやプロジェクトに対する支援の欠乏
・所有権や著作権に関することや機密情報
また、次の観点から、プロジェクトメンバーを全員集めて、ブレーンストーミングなどで、リスクを洗い出します。
・仮定条件(前提条件)や制約条件の検討
・プロジェクト文書の調査
・アクティビティ期間見積もりやコスト見積りの悲観値(ワーストケース時)
・SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)からの可能性のあるリスク
・シナリオ分析におけるリスク
・プロジェクトにインパクトのある遅延やコスト増加の評価
◆リスク一覧作成
そして、1.〜3.の結果を4.にて、リスク一覧としてまとめます。リスク一覧では、リスク事象とそのリスクが発現するトリガについて、記述します。
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著者紹介
鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
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