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個別の問題に対応するのではなく、問題全体を考え、その問題を解決することによってイノベーションを生み出す可能性が高くなる。いくら事実を並べてもイノベーションは生まれず、事実全体が意味をすることは何か、要するに何なのかが重要

第93回 要するに何なのか(2016.07.13)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆AもBもCも必要だ、、、

製品のデザインをすると、機能Aが欲しい、Bも必要だ、Cも欲しい、、、という風にどんどん、アイデアが生まれてきて、コストの制約があるので、優先度を決めようという話になることが多い。

このような決め方は本当に正しいのだろうか。これが今回のテーマである。


◆演繹と帰納

論理的にものごとを考えるには、良く知られているように2パターンある。演繹法と帰納法である。演繹法は、前提があり、そこに事実を加えて推論をかさねていく。たとえば、

野菜は栄養がある。にんじんは野菜だ。だから、にんじんは栄養がある。

といった推論を行う。

これに対して、帰納法は前提を立てるのが難しい場合の推論で、多くの事実から類似点をまとめ上げることで、結論を引き出す。たとえば、

リンゴは甘かった。なしは甘かった。ブドウは甘かった。だから果実は甘い。

といった推論を行う。


◆帰納的な推論の落とし穴

ここで、帰納的な推論には落とし穴がある。それは、A+B+C+・・というように単に足しただけの結論を出すことだ。たとえば、フューチャーフォンの改善のための評価で、

・電池の充電時間が長い
・電池の持ちが悪い
・ボディのサイズが大きい
・・・

といった事実があったとすると、これらを列挙しただけの結論を出す。

イノベーションで求められるのは新しいアイデアを出すことであるので、いくら事実を並べてもイノベーションは生まれない。必要なのは、このような事実全体が意味をすることは何か、言い換えると要するに何なのかという話なのだ。


◆本質に統合する

このように考えるには、第90話で述べた顧客ニーズの本質が問題になってくる。本質を見つけて本質に統合する必要があるのだ。

【イノベーション戦略ノート:090】顧客の本質的なニーズを洞察する

上の例で考えてみると、要するに「電話としては使い勝手に不満がある」ということだと考えた。

そして、その問題解決として、電池の改良やボディサイズの改良ではなく、電話以上に価値のあるものになるという方向性でできたのがスマートフォンだ。

このように、本質的な問題を個々に出てきた問題ではなく、要するに電話としては不満があるということだと考え、そこに問題を統合し、統合した問題を解決する方向にイノベーションを狙う。こういう発想で、個別の問題に対応するのではなく、問題全体を考え、その問題を解決することによってイノベーションを起こすことによりイノベーションを生み出す可能性が高くなる。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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