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第78回 イノベーションは顧客価値と社内政治である(2015.04.15)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆イノベーションには社内政治が不可欠である

前回に続き、今回も「イノベーションは日々の仕事のなかに」のパディ・ミラー氏の指摘をめぐる話。

パディ・ミラー氏は前回紹介した制約とともに、イノベーションには社内政治が不可欠であるといっている。この指摘を目にしたときに、結局そういうことかと思ったことがある。それは、「良いものは売れる」神話である。

この3~4年、ビジネスモデルブームで、ビジネスモデルイノベーションが盛んにいわれている。ブームのきっかけになったのは、2012年に翻訳が出版されたアレックス・オスターワルダーの「ビジネスモデルジェネレーション」である。この本でアレックス・オスターワルダーは非常に魅力的な「ビジネスモデルキャンパス」なるフレームワークを提唱し、それに多くの人が興味を持った。もうすぐ、この続編で価値創造に焦点を絞った本が出るので、また、話題になるだろう。


◆顧客価値を提供するだけではイノベーションは生まれない

それはそれでいいのだが、あたらしいビジネスモデルを考え、それが画期的なものであればイノベーションが起こせると考えている人が多い。しかし、これは正しくない。正確にいえば、良いものを作れば売れるという発想と本質的に変わらない。あるいは、世界初の技術を使って開発した製品だから差別化できるという発想と変わらない。いうまでもなくこれらの発想はこの数年、イノベーションの識者たちが否定してきた発想である。

どういうことかというと、イノベーションには社内政治が不可欠だということなのだ。イノベーションで成功するには、社外の要因としては顧客価値を理解し、顧客にとって価値がある製品やサービスを提供していくことが不可欠である。しかし、それはイノベーションの一面であってすべてではない。


◆イノベーションの半分は社内の問題

もう半分は社内の問題である。イノベーションには投資が必要だ。ROIなどの指標はその評価の一つであるが、財務的な評価がすべてではない。たとえば、いくらいいものを作っても営業が売ろうとしなれければ、成功するものではない。なぜか日本人はいいものを作れば顧客が買ってくれると思い込むのと同様に、営業は喜んで売ってくれると思っている節がある。

これは思い込み以外の何物でもない。間違いだといってもいいくらいだ。確かに新しいものを売りたがるだろう。しかしそれは今あるもののライフサイクルが終わって売るものが欲しいときとか、今売っているものとはまったく食い合いが起こらないケースに限られる。食い合いをするなら、既存のものを売る方が効率がいい。だから新しいものがあっても、古いものを売ろうとする。

このような動きを変えなくてはイノベーションの成功はおぼつかない。イノベーションを成功させるには改善製品以上にすべての人が支持してくれることが必要だ。にも関わらず、ここを避けているケースが多い。


◆ミドルがイノベーションをしたがらない理由

以前、書いたことがあるが、日本の会社のミドルマネジャーはイノベーションをしたがらない。理由はいくつかあるが、その一つの理由は新しいことをやるには社内政治が必要であると感づいているからだと思う。その証拠でやりたがることは社内政治が必要ないことが多い。

たとえばプロトタイピングを中心にした展開というのがあるが、これは社内政治をせずに、イノベーションを前に進めていくための方策であると見ることができる。形ができれば、良いものなら説得することはそんなに難しいことではないと思っている。


◆イノベーションとは社内政治である

ところが、そんなことはないことは少し考えればすぐに分かる。評価の軸が製品やサービスの良し悪しではないのだから、形が見えようが、見えまいが説得する方法は変わらない。見えれば説得できるだろうというのは、いいものを作れば売れるという発想とまったく同じだ。

イノベーションをかたちにしたければ、すべての主要ステークホルダーがその案に賛成してくれるように全力で社内政治を行わなくてはならない。これこそが、イノベーションの成否のカギとなる。

イノベーションの本質は社内政治であるといっても過言ではない。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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