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イノベーションを起こすには、既存システム(プロセス)を捨て去ることから始める。プロセスを捨てて、プロジェクトで仕事をするということ自体がイノベーションである

第72回 業務をプロジェクトにすればイノベーションが生まれる(2015.02.18)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆イノベーションを阻害するシステムの問題

イノベーションが生まれない理由の一つに、業務システムの問題がある。今回の戦略ノートはこの問題について考えてみる。

システムの問題とはオペレーションのプロセスの問題である。イノベーションは日々の業務ので行うというのは簡単なのだが、現実には日々の業務には責任範囲がついて回る。したがって、自分の責任を果たすことが先決であり、そこで敢えて新しいことを考えるというのは相当覚悟が必要なことだ。

この責任分担こそが、システムの問題である。つまり、自分の責任分担範囲さえきちんとすれば、それ以外のことは考える必要はない。そのようにオペレーションのプロセスが作られている。

もちろん、日本のビジネスマンは向上心が高い。だから、自分の責任範囲についてどうすればもっとうまくできるかを必死に考えている。それがとんでもない数の改善を生み出している。ただ、突き抜けたイノベーションを起こすにはそれでは不十分なだけだ。


◆深澤直人さんの指摘

たとえば、日本を代表するプロダクトデザイナーである深澤直人さんはエレクロトニクスのデザインで数々の名作を残しているが、日本企業のインハウスデザイナーに関して以下のような指摘をしている。

「自ら何かを考え出さなくてもいい立場で、事業部が開発した技術などに対して最終的にデザインを『施す』ということが多い。つまり、プロジェクトを自ら作るのではなく、途中から参加するといった感じでしょうか。そこから発想できることは、非常に限られています」

アップルのiPhone以来、デザインが日本製品復活の起爆剤だと注目されているエレクロトニクス分野で、思ったように成果が上がっていないのはまさにこれだろう。スマートフォンでいえば、深澤さんのデザインした「INFOBAR」のような製品は途中からデザイナーが途中から参加したのではできないということだ。


◆イノベーションを起こすには既存システムを捨て去れ

では、このような環境でイノベーションを起こすにはどうすればよいのか。

深澤さんは既存システム(プロセス)を捨て去ることから始めよといっている。これはいうのは簡単だが、今のシステムにどっぷりと使って仕事をしていると非常に難しいことだ。プロセスを捨てて、どのように業務を進めるのかという問題に直面する。

少なくとも、今のシステムの代わりになるものが必要だ。それがプロジェクトである。

よくイノベーションをプロジェクトというが、さあ、イノベーションをするぞといってプロジェクトを始めて、できるものではない。プロジェクトだといっているのは、イノベーションのプロジェクトということではなく、たとえば、製品開発業務をプロジェクトで行うということである。


◆業務をプロジェクトにすればイノベーションが生まれる

既存のオペレーションプロセスで業務を行っているので、すでに決まって定着しているルールの中で仕事を行うことになる。これは楽であるが、反面、上に述べたように新しいアイデアを折り込んでいきにくい。

しかし、プロジェクトとして既存のプロセスと切り離した中で仕事をしていれば、新しいアイデアが生まれたときにそれを活かしていくことは容易であり、日常業務の中でイノベーションを自然に起こせる可能性が高くなる。

このようにプロセスを捨てて、プロジェクトで仕事をするということ自体がイノベーションであるが、このイノベーションを実現することが、業務におけるイノベーションを生み出す手っ取り早い方法である。

このようなやり方をPMstyleでは「プロジェクト・イニシアチブ」と呼んでいる。イニシアチブはイノベーション・イニシアチブのイニシアチブと同じ実行という意味だ。

イノベーションはプロジェクト・イニシアチブから生まれる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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