第56回 イノベーションとプロジェクト・イニシアチブ(2014.10.08)
◆イノベーションをデザインする
イノベーションはデザインできるかという議論がある。「イノベーション・イニシアチブ」的な立場からいえば、イノベーションはデザインできるし、デザインされるべきである。
といっても、これから1年間で新しい〇〇技術を開発し、3年後にこれこれのスペックの製品を開発しますといったイノベーションのデザインはできるわけではない。これは誰もが認識するところだろう(そう認識しない企業のトップもいるが)。
このことから、しばしばイノベーションは計画的に行うことはできない。トップがコミットメントして、自由にやらせるべきだという話になるのだが、これも間違いだ。金に糸目はつけない、時間も問わない、わが社の今後10年を支える創造的な技術や製品をつくってくれなどいう話はほぼありえない。
この議論の折り合いどころがデザインである。
◆何をデザインするのか
ではイノベーションのデザインというのは、何のデザインか。
イノベーション活動のデザインだといってもいいし、イノベーションプロジェクトのデザインだといってもいい。イノベーションアーキテクチャーのデザインだとも言える。
言い方はなんでもいいが、イノベーションはデザインされなくてはならない。
◆デザインで明確にすること
ではデザインするとはどういう行為か。大きく分けると2つのことを明確にすることである。一つ目はマニフェスト。ここでは
・イノベーションの必要性
・重点分野
・イノベーションへの決意
・アイデアの検討をする確約
・ポジティブなスタンスの表明
・提案されたアイデアの管理・評価方法
・従業員への要望
といったことが明確にされなければならない。
二つ目はアークテクチャー。ここでは
アーキテクト:プログラムマネジャー
ビジョン:そのイノベーションによってどのような影響(インパクト)を生み出したいか
ゴール:インパクトを得るためにどのような価値を生み出したいか
制約:そのイノベーションの活動を行うための制約条件(お金、時間など)
評価:価値の評価方法
シナリオ:イノベーションが成功するまでのシナリオ(複数)
レジリエンス:試みが失敗したときの立て直しの方法
システム化アプローチ:インパクトを事業展開するアプローチ
といったことが明確を明確にしなくてはならない。
◆イノベーション・イニチアチブとプロジェクト・イニチアチブ
このようなデザインに基づく取り組みをイノベーション・イニシアチブと呼び、前回述べたようにこれらは戦略イニシアチブの一環として行われる。
重要なことは、実際の作業と活動は別物だということだ。このようなデザインの下で、自由にイノベーションを生み出す作業を行う。思ったように価値や影響を生み出せない場合には、シナリオに則り、次に進むことで試行錯誤を繰り返す。これがイノベーションという活動である。
そして、PMstyleでは広い意味でのイノベーション活動のデザインのフレームワークとして、プロジェクト・イニシアチブという概念を提唱している。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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