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第46回 技術と顧客ニーズを統合する(2014.07.30)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆技術はA級戦犯か?

日本の製造業は長年技術だけを価値創造の手段として捉えてきた。技術プッシュを伴うプロダクトアウトである。そして、その戦略は行き詰まり、マーケットインの戦略をとるようになった。つまり、市場や顧客の声を十分に聞き、それを実現することによって新しい価値を創造しようとした。

顧客のニーズの中には技術開発が必要なものも多かった。そのような技術開発をしてまで対応したが、うまく行かなかった。エレクトロニクス業界のようにたどり着いたところはガラパゴスという業界もあった。

このような経験から、イノベーションとは技術革新を意味しているわけではない、技術では価値創造できない、イノベーションとは組みわせにより新しいビジネスモデルを作り上げることだといった考えが中心になっている。

技術が日本に革新的な製品やサービスが生まれないA級戦犯になりつつある。

しかし、技術で価値創造しているところに問題があるわけではない。問題はその価値創造のやり方にある。


◆新しい技術が新しい価値を生み出すわけではない

これまで新しい技術が新しい価値を生み出すと考えてきたが、そこに勘違いがある。

価値創造という言葉は誤解されている部分があるので、もう少し議論を精緻化する。価値には創造する局面と獲得する局面がある。新しい価値の創造に生まれた価値を利益にすることが価値の獲得である(価値創造と価値獲得を詳しく知りたい人は、参考資料に挙げている延岡先生の著書を読んでほしい)。

さて、ここで問題になるのは価値創造ではなく価値獲得をどのように行うかだ。顧客が必要という機能を実現するために技術を開発すれば確かに価値は生まれる。しかし、多くの人がその機能を必要としない限り、価値を獲得することはできない。これがガラパゴスの原理である。

価値を獲得しようとすれば、自社で持っている技術と顧客のニーズをうまく統合しなくてはならない。つまり、自社の技術をうまく利用して、顧客の欲しい製品を作らなくてはならない。実はこれこそが、本当のマーケットインである。


◆骨太のコンセプトがないと多様な顧客の声を統合できない

多くの企業が行っているマーケットインは、顧客の声を機能レベルで取り入れていて、コンセプトとして統合されていない。言い換えると多様な顧客の声が統合されていないので、そのまま対応すると当然その範囲は小さくなり、価値を生み出しても、利益に結びつかない。

なぜ、こんなことが起こるかというと、(顧客ニーズと技術の統合に資する)コンセプトがないからだ。これにつきる。

たとえば、最近スマート家電というコンセプトの商品が出てきた。スマートフォンやスマートハウスというコンセプトがあるので、なかなか、よいコンセプトという印象を与えるが、よく考えてみるとこれは典型的な技術プッシュの製品である。

顧客ニーズがないし、開発もできていない。エアコンとか、冷蔵庫などの製品が出てきているが、個別の商品のコンセプトをみても、顧客ニーズが統合されているとはいいがたい。

◆技術主導のイノベーション

さて、イノベーションの話に戻ろう。このように考えてみると、イノベーションが技術主導であることは一向に問題ない。問題なのは、顧客ニーズが技術に統合されていないことである。と書くと、そんなことはない。市場調査もちゃんとしていると反論する開発者は多いと思う。

これは統合の意味が分かっていない。マーケティングサイドから統合していくときには、製品コンセプトに顧客ニーズを統合していく。

技術サイドから統合するという場合には、保有技術、あるいはR&Dで開発する予定にある技術で実現できるコンセプトを考える。できるだけ骨太のコンセプトを構想する。そうして、そのコンセプトに基づき、顧客ニーズを拾い上げ、コンセプトに統合できる新しい製品を探すのだ。

これが技術から起こすイノベーションである。

【参考資料】
延岡 健太郎「価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道」、日本経済新聞出版社(2011)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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