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リバースイノベーションとは、新興国などのニーズに対応し成功した上で、それを自国や先進国に持ち込んで成功を納めようとするイノベーションのコンセプトである

第28回 50%の性能を15%の価格で提供する意味(2014.03.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆挑発する質問

先日開催した「イノベーティブリーダーのための質問力」セミナーの中で、以下のような質問を紹介した。

・顧客の可処分所得が半分になったら、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか
・通信インフラがなかったとすれば、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか
・空輸ができなくなったら、商売の方法をどう変えるべきだろう

お気づきの方も多いと思うが、これは新興国を想定した質問である。

たとえば、新興国では、所得レベルが低いので、先進国に比べると極端に安い商品を求める。有名なのはインドにおけるタタ自動車やノキアの携帯電話だ。タタ自動車は20万円もしないような自動車を作った。ノキアは2〜3千円の携帯を作り、一部のユーザには数百円で買えるようにした。いずれもインドでは60%のシェアをとった。

あるいは、新興国には先進国のようなインフラはない。インフラが必要な製品を売ろうとすればインフラを作ってからという発想ではビジネスにならない。

そこで、現状のインフラを前提にして製品を見直すということになる。たとえば、インドでは電力供給が不安定で、医療インフラが未発達だった。そこでGEヘルスケアは電力供給が不安定でも使える携帯型の心電計を開発した。


◆「15%の価格で50%のソリューションが求められる」

これらの例に共通しているのは、既存の製品の機能を減らしたり、コストダウンを加えてもできないということだ。「リバースイノベーション」の著者である、ビジャイ・ゴビンダラジャンは、新興国市場では

「15%の価格で50%のソリューションが求められる」

と指摘している。松下幸之助が3%のコストダウンより、30%のコストダウンの方が根本的に考え直すのでやさしいといったのは有名だが、30%どころではない。85%のコストダウンをしなくてはならないとすれば、既存の製品のカスタマイズではだめで、設計からやり直す、あるいは製品のコンセプトそのものを変える必要がある。


◆リバースイノベーション

ビジャイ・ゴビンダラジャンは、このような新興国独特のニーズギャップとして

・性能
・インフラ
・持続可能性
・規制
・好み

の5つがあるとしているが、いずれも一から根本的に考えなくてはならないニーズがほとんどだ。

リバースイノベーションはイノベーションの中では、イノベーターのジレンマやブルーオーシャンに匹敵する骨太のコンセプトだと評価されているが、要はこういう新興国のニーズに対応し成功した上で、それを自国や先進国に持ち込んで成功を納めようとするイノベーションのコンセプトである。


◆リバースイノベーションの例

タタは100年前にT型フォードでできたドミナントモデルを捨て、車を一から考え、シンプルな基本モデルを作った。ノキアは携帯電話を一から考え、基本モデルだけを残し、コストを大幅に削減した。車にしろ、携帯電話にしろ、バラエティが増えていく中で、こういう判断をしたのはすごいことである。

そしてそれを先進国に持ち込んで、一定のシェアを確保している。ただし、リバースイノベーションは多くの成功例が生まれつつあるが、企業の中でどのような位置づけをするかが難しいのはノキアの現状を見ればよく分かる。

ただ、70%の性能を70%で提供しておけば買うだろうといった思い込みを捨てて顧客と向き合い、一から考えるというスタンスはイノベーションには重要であることは確かである。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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