第109回 ビーイング・コンセプチュアルでイノベーションを!(2016.12.28)
◆イノベーションが当たり前の時代に
この1〜2年でイノベーションに対する認識が大きく変わってきたように思う。どのように変わったかというと、「特別なこと」から「当たり前のこと」になってきた。そのように感じることが増えてきた。
クライアントと話をしていても、新しいことをすることを前提で話をすることが増えてきた。素晴らしいことだが、では実際にどのようにアプローチするのかというところは組織により試行錯誤していることが多い。
その中で提案したいのは「ビーイング・コンセプチュアル」であることだ。詳しくはこちらの記事を読んで欲しい。
【PMスタイル考】第104話:ビーイング・コンセプチュアル
◆ビーイング・コンセプチュアル
ビーイング・コンセプチュアルとは、常にコンセプチュアル、つまり
「見えないものを把握し、価値を判断し、全体を描き、思考や行動をすること」
であろうということだ。このためには、
・創造力:ゼロから創り出す力
・エンパシー:他人の感情や問題への理解能力
・直観力:事実分析能力よりもむしろ感情に基づいた理解力や認識力
といった力が必要である。
◆なぜ、新しいアイデアが生まれないのか
ビーイング・コンセプチュアルでどのようにイノベーションを起こすかを考える前に、なぜ、新しいことが考えられないのかと考えてみたい。それは、論理性や客観性へのこだわりがあるからだ。つまり、
・誰もが賛成するアイデアを求める
・論理的に正しい答えを求める
・既存のアイデアをベースにして考える
といった思考をする傾向がある。こういう束縛がある限り、新しいアイデアは出てこないだろう。もちろん、論理性や客観性が不要などと言っているわけではないが、、、
たとえば、論理的に考えて全く市場がない商品を直感だけで開発してみても売れないことは明らかだ。過去にはこれで痛い目にあった人は少なくないだろう。自分がこんな商品が欲しいと思って開発しても、他の人がまったく欲しがらなければ商品は売れない。この手の話、直感とか自分が欲しかったとかいう話は当たれば目立つし、大ヒットする
傾向もあるのでもてはやさるが、冷静に考えれば、失敗の率は高くなることはすぐに分かる。
◆直観や主観を重視する
魚のいないところに釣り糸を垂れても大物どころか、魚は釣れないわけで、大物を釣ろうとおもえば、まず、魚がいそうなところを探すことだ。これが、論理性や、客観性の役割だといってもよい。
問題は、ここからで、どんな餌をつけるのか、どのあたりの深さを狙うのかは論理的に考えていても人と同じ答えしか出てこない。ここで、必要なのは直観であり、主観である。
つまり、論理や客観の中に主観や直観を取り込んだ思考をする必要がある。つまり、ビーイング・コンセプチュアルなのだ。そうすると、
イノベーション:主観、直感
オペレーション:客観、論理
として実現されていくだろう。
◆例
一つの例として、スマートフォンを考えてみよう。ユーザが何を欲しがっているか、何が実現できるかをきちんと分析し、客観的にバランスを取ると、あまり魅力のない日本のメーカーが作るようなスマートフォンになる。
これに対して、アップルの作り方はよく計算されている。スティーブ・ジョブズは初代のiPhoneのプレゼンで電話を再発明したと宣言したが、この部分が客観であり、論理だ。携帯電話には市場がある。その上で、主観、直感でまったく新しい携帯電話を考え、イノベーションを起こしている。つまり、ジョブスはコンセプチュアル思考をしていたのだ。
ジョブズの有名な言葉に、ユーザは自分が何を欲しいか知らないという言葉があるが、この言葉の意味するところは、主観、直観で決めるイノベーションの部分について、欲しい部分を知らないという意味だ。
ただし、直観、主観への拘りだけでやっているわけではないことは明らかだ。アップルの開発方法で興味深いのは、エンジニアは優秀だが、客観、論理で動いている。そこに、主観、直感によるジョブズのアイデアが降りてくるわけだ。
ジョブズの要求をエンジニアは客観、論理に基づき、設計する。それに対して、ジョブズが直観や主観に基づき不十分なところを再度要求をする。つまり、チームとしてビーイング・コンセプチュアルなのだ。
◆主観と直観がイノベーションを生み出す
このようなやり取りによって、オペレーションの領域(客観、論理)と、イノベーション(直観、主観)の領域の間で行き来をし、最終的に製品の仕様が決まっていく。まさに、コンセプチュアルな製品開発だといってよいだろう。
このように主観と客観、論理と直観が組み合わされて初めてイノベーション、新しいものが生まれる。イノベーションにこういう認識を持たない組織からはイノベーションは生まれない。
◆関連セミナー
PMstyeでは、コンセプチュアルスキル習得の基本になる講座として2つを準備しています。一つはコンセプチュアルスキルの全体像を学ぶ講座です。
どちらもこの記事で議論した「全体像をつかむ」ことをメインテーマの一つにしています。全体像をつかんだ思考や行動をしたいと思う人にお薦めします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルスキル入門〜本質を見極め、行動するスキル ◆(7PDU's)
日時・場所:【Zoom】2025年 01月 24日(金) 9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2025年 02月 15日(土 )13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2025年 01月 08日(水),10日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_skill.htm
主催:プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
「プロジェクトマネジャーのためのシステム思考」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カリキュラム】
1.コンセプチュアルスキルとは
2.本質を見極める
3.洞察力を高める
4.応用力を高める
5.コンセプチュアルスキルでこれからの行動が変わる〜ケーススタディ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
もう一つは、コンセプチュアルスキルのベースになる「コンセプチュアル思考」を学ぶ講座です。
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアル思考のポイントと活用〜VUCA時代の思考法 ◆7PDU's
日時・場所:【Zoom】2024年 11月 22日(金)9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2024年 12月 11日(水)13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2025年 01月 15日(水)17日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります
※少人数、双方向にて、個人ワーク、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_thinking.htm
主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カリキュラム】
1.コンセプチュアル思考のイメージ(アイスブレーク、講義)
2.コンセプチュアル思考を実践してみる(個人ワーク)
3.コンセプチュアル思考の原理を学ぶ(ワークの振返り、講義)
4.コンセプチュアル思考の実際(講義)
5.コンセプチュアル思考で変化に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
6.コンセプチュアル思考で不確実性に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
7.コンセプチュアル思考を応用した活動(まとめ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「
PM養成マガジン(無料版)」、「
PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「
コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
メルマガ紹介
本連載は、
コンセプチュアル・マネジメント購読にて、最新の記事を読むことができます。
コンサルティングメニュー紹介
PMOコンサルティング、PMOアウトソーシングサービス、人材マネジメントサービスなど、御社に最適のコンサルティングをご提案させていただきます。まずは、
お問合せください。