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長期間かけて行うイノベーション、コカ・コーラの事例。コーラを復活させるためのインクリメンタルイノベーションと、新しい飲料を開発し、販路を作っていくラディカルイノベーションを併せて行っている

第6回 イノベーションを分類する(2)(2013.05.21)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆はじめに

前回イノベーションの区分の軸として、以下の5つを示し、(1)〜(3)について説明した。今回は、(4)〜(5)について説明する。
(1)イノベーションの目的
(2)イノベーションのリソース範囲
(3)イノベーションの推進力
(4)イノベーションのスパン
(5)イノベーションのタイプ
(前回はスピードという軸を入れていたが、スパンとかぶるので省略)


◆イノベーションのスパン

イノベーションというと、短期集中型の活動のイメージが強いが、実際には長期間かけて行うイノベーションもある。長期のイノベーションでよく引き合いに出される事例にコカコーラのイノベーションがある。

コカコーラは長期間、高い成長率を維持していたが、1990年代の終盤から成長に陰りが見え、収益が落ち込んできた。もっとも深刻な問題は、世界的なコーラの需要の落ち込みだった。飲料業界全体で、水分をとれればいいというものから、商品の新規性に重点が置かれ、また、ニーズが多様化してきた。

このような中でコカコーラは、コーラを中心にした飲料メーカから、総合飲料メーカになることを目指した。そして、1999年から2004年にかけて技術とビジネスモデルの両方でイノベーションの展開を始めると同時に、イノベーションセンターを作り、イノベーション文化の普及と、イノベーションプロセスの開発にも取り組んた。

そして、経営の分散化を行い、「シンク・ローカル、アクト・ローカル」を徹底した。その結果として今のコカコーラがある。日本では、コーラはもちろんだが、水、お茶など、ほとんどのジャンルでベスト3に入る商品を展開している。まさに、総合飲料メーカに生まれ変わったわけだ。

このようにイノベーションには長期にわたって成長することを目的とするイノベーションもある。


◆イノベーションのタイプ

イノベーションには

・インクリメンタル
・セミラディカル
・ラディカル

の3つがある。持続的なイノベーションを実現するには、この3つのイノベーションを組み合わせて行く必要がある。一般論としては、技術とビジネスモデルでどのイノベーションが適切かが決まるとされる。

インクリメンタルは、ビジネスモデルに小さな改善を加えるタイプのイノベーションである。多くの場合、イノベーションの目標は明確で、目標達成の手段やプロセスの問題を解決する。

ラディカルイノベーションは新しい製品やサービスをまったく新しい方法で提供するイノベーションである。大きな方向性は決まっていても、イノベーションの結果、どのような成果が得られるかもはっきりしないケースが多い。

技術もビジネスモデルを新規な場合、セミラディカルは技術かビジネスモデルのいずれかが新規で、もう一方が既存に近い場合である。


◆戦略実行とイノベーション

イノベーションに対する認識としては、インクリメンタルイノベーションが繰り返されているうちに、ラディカルイノベーションを起こす必要があり、大変革が起こるという認識がある。従って、業界で大変革が起こるまではインクリメンタルイノベーションを繰り返すという考え方が正解である。

しかし、戦略実行という観点からとらえると、少し様相が変わってくる。戦略を実行するイノベーションでは、この組み合わせとタイミングを適切に選ぶ必要がある。

上に述べたコカコーラのイノベーションは、コーラを復活させるためのインクリメンタルイノベーションと、新しい飲料を開発し、販路を作っていくラディカルイノベーションを併せて行っていることが分かる。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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