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品質管理を通じて鍛えられたネガティブな思考回路、このネガティビティがイノベーションを妨げている

第3回 ポジティブ・ネガティブ・自己満足(2013.04.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆提案についてどう思う?

あなたが、自動販売機メーカの幹部で、社員から以下のような自動販売機の提案をうけたらどうしますか?

(1)金や銀が購入できる自動販売機
(2)自転車レンタルの自動販売機
(3)生の魚介類の自動販売機

この質問はリサ・ボルデさんの「会社をつぶせ」という本にあったものを編集したものである。これらの自動販売機はすべて実在し、ある程度成功をしているものだそうだ。金の自動販売機は米国で、自転車レンタルはオランダ、生の魚介類は中国の地下鉄にあるそうだ。

実は本では、これ以外に牛乳の自動販売機というのがあってインドで多く設置されているらしい。牛乳の自動販売機といえば日本の温泉に多数あるので抜いたのだが、ひょっとするとインドで展開されているのは生乳かもしれない。

リサ・ボデル(穂坂 かほり訳)
会社をつぶせ―ゾンビ組織を考える組織に変えるイノベーション革命」、マグロウヒル・エディケーション(2013)l


◆品質管理を通じて鍛えられたネガティブな思考回路

まあ、それはさておき、上の3つの提案を見て、提案も即座に3つやそこらのダメな理由を思い浮かべた人が多いのではないかと思う。日本は製造業を中心に、品質で勝負してきた。したがって、徹底的にネガティブな思考回路ができている。

品質管理は面白い分野で、問題を見つければ見つけるほど、進捗したことになる。したがって、徹底的にネガティブに対象を見て、少しでも悪いところを見つけることがよいことなのだ。これが日本の現場のマインドセットを作っている。

このネガティビティがイノベーションを妨げているという説がある。半分当たっていて、半分外れているように思う。


◆イノベーションにおけるポジティブをネガティブ

イノベーションにはアイデアのレベルと、実行のレベルがある。上の例はアイデアのレベルだが、アイデアのレベルでネガティブであるとイノベーションの障壁になる。上のそれぞれの提案に3つやそこらは問題点を思いついただろうと書いたが、そもそも、この提案に対して、ふざけていると考える人もいるのではないかと思う。「誰が自動販売機で生鮮食料品を買うんだ、考えなくてもわかる」と怒鳴りだす人がいるかもしれない。

しかし現に中国では自動販売機で、「生きた毛ガニ」といった地方の珍味が購入でき、評判もいいらしい(前にテレビでもやっていた)。


◆アイデア出しと企画

話は変わるが、NHKに「仕事ハッケン伝」という番組がある。タレントがいろいろな仕事にガチで挑戦するロケ番組で、時々見ているが、この前、吉木りさというグラビアアイドルがはとバスのバスツアーの企画に挑戦するというのをやっていた。いきなり、企画を10個作って来いと言われて悪戦苦闘するのだが、企画会議はなかなか。どうすればその企画が売れるかしか言わない(少なくともテレビで放映されたところでは)。聞いていきなり、ダメ出しというのはなく、10個すべてイケソウなところを議論していく。超ポジティブである。

理由ははっきりしていて、企画書のレベルでは思いっきりダメ出しされるし、企画書が通っても実現するかどうかも分からない。ひょっとしたら10個あっても最終的には一つも実現できないかもしれない。だから、アイデアを大切にする。


◆アイデアはポジティブに受け止める

企画に限らず、問題解決でも、何でも同じだが、このプロセス、つまり、アイデアを企画にするところでネガティブに考えてしまうことが多い。生ものの自販機のアイデアに、誰かがだれがそんなものを買うのかといって、次のアイデアの検討に移れば、毛ガニを売る自動販売機はできなかったわけだ。ここで品質管理のような発想は要らない。発案者自身もここにネガティブさを入れるので、アイデアを企画にして提案する前に終わってしまう。卵がなければ鶏は生まれない。イノベーションはできない。

ついでにいえば、ここで改善(問題点を指摘して、直す)のような発想を入れたがる人も少なくないと思う。それも要らない。改善を入れるとオーナーシップが分からなくなる。企画書になったときにはみんなの企画になってしまう。それでは、情熱は持てない。

ここではアイデアを膨らませなくてはならない。提案をそのまま受け止め、どうすれば売れる可能性があるかという議論をするのがよい。ここに問題があるので、変えればよいといった議論はもう少し後の話で、アイデア出しの段階でする意味はない。


◆企画はネガティブに

そして、いいところの多さでアイデアに優先順位をつけ、優先順位の高いものからいくつかを具体的な企画書にして、提案が出てくる。この段階ではネガティブであるべきだ。プロトタイピングもない、ビジネスモデルが考えられていないような企画は潰す。いくらいいアイデアだとしても企画の段階でそんなことでは実行はうまく行かないので、そのアイデアは生まれてくる運命になかったと諦めるしかない。もちろん、指摘された問題点を修正し、再チャレンジというのはある。

企画が通れば、再びポジティブになると良い。このようにイノベーションの中では、ポジティブとネガティブを織り込んでいくことが大切なのであって、ポジティブバカのようなポジティブさが求められているわけではない。


◆悪いネガティブに注意する

ただし、気をつけなくてはならないのは、ネガティブにはよいネガティブと悪いネガティブがあるということだ。冒頭のエクスサイズの考案者であるリサ・ボデルさんは悪いネガティブを「自己満足」と呼んでいる。悪いネガティブは、評価をするときに、同じようなことをすでにやっているとか、経験的にうまく行かないだろうとか、当社の力ではできないだろうとか、組織としての現状維持のバイアスを働かせるような態度だ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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