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人間は生まれつき創造力を持っているが、知覚、感情、文化、環境、知性、表現などのさまざまな心理的障壁で発揮できていない。我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる業界、技術、経済動向はどのようなものかを考えてみる

第21話 イノベーティブリーダーの質問力(4)〜動向から問題を発見する(2013.10.16)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆創造性を解放する

前回は、思い込みや暗黙の前提を打ち破る質問について考えてみた。

スタンフォード大学で、プロダクトデザインの名物講座を持つジェイムズ・アダムス教授は、人間は生まれつき創造力を持っているが発揮できない。その理由は、知覚、感情、文化、環境、知性、表現などのさまざまな心理的障壁であり、それを取り除いてやれば創造力は自然に発揮されるようになるということで、障壁を取り除くさまざまな方法を紹介した本を書いた。

メンタル・ブロックバスター―知覚、感情、文化、環境、知性、表現

という本だ。この中でも質問が使われている。興味がある人はぜひ、読んでみてほしい。

イノベーションに質問を使う基本的な目的の2つ目は問題発見だ。


◆メンタリング的質問

ということで、今回から問題発見によりイノベーションを生み出すことをテーマに質問を考えてみたいと思う。問題は自分や自組織がバリアになっているわけではないが、意外と簡単に気づきに結びつくことがある。

コンサルタントはこのような質問を発する立場になることが多いが、ポイントは徹底的に突っ込むことである。前回の思い込みや暗黙の前提を破ることは最終的には本人や組織としての気づきの問題であるので、コーチング的な気づきを誘発する質問アプローチが効果的である。

これに対して、イノベーションのための問題発見は問題の視点を質問で与えることが重要である。コーチングとの対比でいえば、メンタリング的な質問が効果的である


◆イノベーションに結びつく問題のカテゴリー

最初にイノベーションに結び付く問題のカテゴリーを考えてみよう。思いつくままに上げていくと、

・動向(技術、業界、経済)
・製品やサービス
・価格
・顧客や市場
・物流などのプロセス
・マネジメント

といったものが考えられる。それぞれについて問題をあぶりだす質問を考えてみよう。


◆動向に対する質問

動向にはいろいろとある。以前であればイノベーションのチャンスになるのは圧倒的に技術動向が多かったが、今は、むしろ、業界の動向がチャンスになることが多い。
特に、ビジネスモデルである。

そこで、動向を背景にした問題に対する質問としては例えば以下のようなものが考えられる。

・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる業界動向はどのようなものか
・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる経済動向はどのようなものか
・我々のビジネスモデルを根本的に崩壊させる技術動向はどのようなものか


◆回答のシミュレーション

質問のイメージを掴んでもらうために、回答のシミュレーションをしてみよう。

時計を巻き戻し10年前の書籍販売(本屋)のビジネスを考えてみると、本屋以外の競合の増加と、ネットワーク販売の増加だ。特に雑誌とコミックスはコンビニが競合になってきた。経済的な動向としてはデフレで、本が売れなくなってきた。技術的な動向としては、ネットワーク販売の技術が確立されてきたことと、電子書籍が出てきたことがあげられるだろう。

このような質問への答えを切り口にして、では、本屋がネットワーク販売に勝つにはどのようなビジネスモデルを作ればよいのかという問題解決のテーマが決まる。あるいは、電子書籍に対してどのような取り組みをするかという課題としてテーマが見つかる場合もある。


◆別の質問

あるいは、こんな質問も考えられる。

・1年後に自分たちが新しい動きに乗っていないとすれば、その原因はなんだろう

この質問に答えることによって、自分たちが抱えている問題が明確になる。例えば、ネットワーク販売に勝つには、自らがネットワーク販売を手掛けるしかないと考えたとしよう。新しい動きにのっていくわけだ。ところが、この方向性が取りにくいのは物流費にある。この問題をどうするか。

たとえば、地場の書店同士のアライアンスを組んではどうだろう。ということで、イノベーションのための課題が絞り込まれてくる。

このような思考や活動の切り口になり、かつ、触媒になるのは質問である。

製品やサービス以降の質問については次回にする。



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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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