第19話 イノベーティブリーダーの質問力(2)〜良い質問と悪い質問(2013.10.02)
◆誘導質問
質問の効果は一般的に認められるようになってきているが、認知が逆に悪い質問を生み出しているケースがある。任せる、自立させるという観点から、指示はよくないが、質問で気づきを与えることは好ましいと考えている。しかし、質問にも良い質問と悪い質問があり、悪い質問では質問でコミュニケーションを取る意味がない。その一つが「誘導質問」と呼ばれるものである。
これが弁護士が誘導に使う質問のタイプの一つである。たとえば、あなたが新しい製品の開発を任され、やる気満々なときに、上司から
次の製品はコンセプト変えないよね。
と言われた状況を考えてみてほしい。
あなたは一応、上司から質問を受けている。しかし、この質問に対して、同意する以外にはない。これは質問の形をとった宣言なので。さらに質が悪いのは、この質問をステークホルダーの前で発することだ。イエスと答えたら、あなたが決めた(決めていた)ように解釈される。
このように誘導質問は新しいことに取り組むエネルギーを削ぐもので、イノベーションにとっては悪い質問だといえる。誘導質問で気をつけたいのは、普段、部下と対等に付き合うように心がけていても、つい、こういう形で本音のところが出ることがあることだ。
誘導質問に限らず、すでに答えは決まっており、質問の形でそれを相手に言わせるという質問は最悪である。そんなことをするくらいなら、きっぱりと宣言をした方がよい。
◆良い質問とは
では、イノベーションにとって良い質問とはどういうものか。抽象的にいえば、斬新で新しい事実の発見や、アイデアの創出につながる質問である。
前回紹介した、「キラー・クエスション」を書いたフィル・マッキーニは長年の研究の結果、よい質問には2つの種類があるとこの本の中で述べている。
それは
・事実を確認するための質問
・調査を伴う質問
の2つだという。
◆2つのタイプの質問
事実を確認するための質問は、情報の収集を目的としている。たとえば、
・ドコモとソフトバンクのどちらでiPhoneを買いますか
・ドコモとソフトバンクはどちらがiPhoneの価格は安いですか
といった質問である。最初の質問は自身の意思を答えればよく、二番目は両方のショップに電話をして価格を確認すればよい。このような質問は答え以上の発見はないが、情報交換としては意味がある。
調査を伴う質問は、よりイノベーションに貢献できる可能性がある。たとえば、新しいスマートフォンを開発するときに
・1年後にドコモとソフトバンクはどちらがたくさんのiPhoneを販売しているか
・顧客がソフトバンクを選ぶ理由は何か
といった質問が出てもおそらくすぐには答えられない。調査が必要である。もっといえば、調査をしても正しい答えが得られるとは限らない。しかし、その過程を通じて、新しいスマートフォンの機能や販売方法に関するアイデアが得られるかもしれない。
◆質問力はまずは良い質問と悪い質問を見分けるところから
イノベーティブ・リーダーの質問力は、まず、良い質問と悪い質問を見分けるところから始まる。
よい質問の方法に関して大きな影響を与えているのが、ロースクールでよく使われるソクラテス・メソッドである。ソクラテスメソッドは、質問により、弟子の考えや信念の核心に迫っていった。その上で、外の世界に引き出し、自分がどの程度のことを知っているかを自覚させた。この方法はテレビで法廷ものを見ていると弁護人や検察官がよく使っている手法だ。
イノベーションも同じで、自分が知っていることが不十分であることを認識した上で、外の世界に目を向け、新しい情報を探していく必要がある。言い換えると、自分が知っていることがすべてであると思っている限り、今を超えることはできず、イノベーションは起こらない。
このような気づきと活動を引き起こすのが良い質問である。
◆キラー質問研究会
イノベーションイニシアティブでは、良い質問を集める
「キラークエスション研究会」
を発足します。これまでの経験の中で、良い質問だったなと思うものを出し合い、共有しようというオンライン研究会です。
趣旨に賛同戴ける方は、ぜひ、ご参加ください。こちらのfacebookグループです。
◆参考資料
フィル・マッキニー(小坂恵理訳)
「キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム」、阪急コミュニケーションズ(2013)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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