第12話 イノベーティブリーダーの思考法(4)〜点と点をつなげる(2013.07.05)
◆「点と点をつなげる」
イノベーション・リーダーの思考法の中で、やはり、大切だと思うのは組合せである。
組合せをいろいろと考えられる。これが大切だ。
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式のスピーチ「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」で、真っ先に「点と点をつなげる」という話をしたのは有名だが、組合せの重要性を真っ先に言っているわけだ。実際に、アップルのiPodやiPhoneはいくつもの点と点をつないでできた商品である。
全文を読んでみたい方はこちらにある。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳 (日本経済新聞)
また、イノベーションという言葉を作ったシュンペーターもイノベーションは新結合、つまり、新しい組合せを見つけて、新しい価値を創り出すことであるといっている。
◆なぜ、点をつなぐのが難しいのか
そして、どの点をつなぐかというのはまさにアイデアであるが、これが難しいのがイノベーションの難しさである。なぜ、難しいのだろうか。挑戦された方も多いと思うが、3×3に並んだ9つのドットのすべてを一筆書きで結ぶというクイズがある。このエクスサイズは、「メンタル・ブロックバスター」(原題は、Conceptual
Blockbusting)というコンセプチュアルスキルの強化を目的にした本を書いたジェイ
ムズ・アダムスという先生が作ったエクスサイズである。インターネットで「9つの点、一筆書き」で検索したらいくつも出てくるので、やったことのない人はチャレンジしてみてほしい。
メンタル・ブロックバスター―知覚、感情、文化、環境、知性、表現…、あなたの発想を邪魔する6つの壁
これはドットの枠の中で考えても解決しない。が、枠の中で考えるものだと思い込んでしまう。
線を枠の外まで引くことに気付くとすぐに答えがわかる。イノベーションにおける組合せとはこういうものだ。たとえば、製品を作るのに組み合わせるのは今まで使われてきた部品だけとは限らない。異なる分野で使われている素材を使うことが有用なケースもある。
◆iPhoneは枠の外のものを組み合わせた
iPhoneの例でいえば、今では当たり前になっているが、携帯電話のガラスは傷つくものだった。だから保護カバーを貼って使っていたのだが、ここに傷つかないガラスというゴリラガラスという組合せをした。
このガラスは化学強化ガラスということで、iPhoneが生まれる40年くらい前に生み出されたものだが、用途がなく、レーシングカーなどを除くと、ほとんど使われていなかった。
そこに、iPhoneの開発でポケットに鍵と一緒に入れると傷がつくのを気にしたジョブズが見出した。スマートフォンにはゴリラガラスというのは今や常識になっているが、iPhoneではまさにイノベーションだったわけだ。
◆イノベーションを生み出す組み合わせは3つ
一般的に考えて、組み合せがイノベーションを生み出すのは3つのケースがあるように思われる。
一つは思いもよらない組合せを実現した場合。
最近、事務所の近くにくら寿司ができたが、回転すしは、すし職人とベルトコンベアを組み合わせているが、これなどは思いもよらない組合せということだろう。この組み合わせがすごいのは、最初は回る寿司というのは安い寿司の象徴でくら寿司はその勝者だったわけだが、最近では時価の寿司があるような小さな寿司屋でコンベアを入れているところがある。良くわからないが、消費者行動の本質をつかんだ発想だったということなのだろう
二つ目は組み合わせは思いついても、実現が難しいもの。この代表はハイブリッドカーだろう。
そして、三つめは組合せが一見矛盾するものだ。この代表例は日本の成長のエンジンなった品質とコストである。品質を上げようとするとコストがかかる。これが常識だったところに、日本では品質を挙げることによりコストをさげるという画期的な品質管理の方法を生み出した。
◆矛盾するものを組み合わせるには概念化が必要
特に3番目の組み合わせが注目に値する。三番目の例は高品質と低コストという矛盾しているものを組み合わせている。このような矛盾したものを組み合わせるには、具体的なことを考えているだけでは、組合せは見つからない。そもそも、この矛盾というのは、品質を良くするには検査を増やし、コストをかけるという発想であるので、この発想は崩しようがない。
しかし、ここで品質とコストの関係を概念化すると話が変わってくる。品質とコストの間には、品質がよければ検査コストや修正コストがかからないという関係もある。ここを考えていくと、検査のまでに品質を上げればよいことはすぐに思いつく。このように、現場で見えるものの品質ではなく、品質やコストをが概念として考えてみると、意外な組み合わせがあるものだ。
このようなスキルはコンセプチュアルスキルと呼ばれるが、これがイノベーションにコンセプチュアルスキルが重要な理由である。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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