第7話 トライブを率いる(2012.10.22)
◆トライブとは
イノベーティブリーダーが活動しようとしたときに、真っ先に問題になるのが、リソースである。一人でできることは限られている。新しいことを興すときには常について回る話だが、社内のリソースは承認された活動とならないと割り当ててもらうことができない。社外のリソースを使うにも資金がない。
組織に所属して働く人がいろいろと考え、一人でできる範囲でアクションを起こすことができても、大抵はここで挫折をする。イノベーティブリーダーの活動もまた同じだ。
イノベーティブリーダーの活動の最初の難所を乗り越える方法として、「トライブ」という概念が注目される。トライブは部族という意味で、「トライブ」という本を書いた、セス・ゴーディンは
互いにつながり、リーダーとつながり、アイデアとつながった人々の集団
だと定義している。そして、2つのトライブの例を挙げている。
◆トライブの例
一つは、ゲイリー・ヴェイナチャックの例。ゲイリーは、「ワインライブラリーTV」を公開しており、彼のサイトには世界中 からワイン愛好家が集い、ワインにかける熱い思いを語り合う。ワイン愛好家は、新しいワインを発見し、好きなワインの知識を深め、ゲイリーはそのための協力を惜しまない。ゲイリーのサイトはマーケティングのサイトではなく、見返りを求めない。ゲイリーは押し付けることなく、率いているのだ。ワインについて
の情報サイトは多いが、ゲイリーのサイトが人気あるのは、彼が新しいメディアや技術を使ってワインの魅力を伝え、愛好家同士をつなぎ、変化を起こしたから
だ。つまり、ムーブメントが起こっているのだ。
もう一つの例は、マイクロソフトのミッチ・マシューズというマーケティングのシニアバイス プレジデントの例だ。彼女は、ビル・ゲイツやスティーブ・バルマのもとで、10年以上に亘ってマイクロソフトのマーケティングの活動を支えてきた。彼女は、マーケティング・プランを立て、それをかたちあるものにしていく数千人の社内トライブを率いている。トライブは彼女の言葉に耳を傾け、敬意を払い、後に続く。
◆グループからトライブへ
ゴーディンは、グループがトライブに変わるためには、
・共有する興味
・コミュニケーションの手段
2つの要素があればよいと言っている。トライブに集まる人は、「つながり」と「成長」と「新しい何か」を求めている。そこに、共有する興味とコミュニケーションの手段があれば、ムーブメントが起こる。
◆トライブでムーブメントを起こす
プロジェティスタはトライブを率いて、ムーブメントを起こす。そのためには、5つの行動方針が必要だとゴーディンはいう。
(1)マニュフェストを公表する
(2)フォロワーとつながる仕組みを作る
(3)フォロワー同士がつながる仕組みを作る
(4)金は二の次と理解する
(5)ムーブメントの成長プロセスを明らかにする
どうだろうか?この方法であれば、プロジェティスタは自分が活動したいトライブさえあれば、前に進んでいくことができる。
◆一歩下がるリーダーシップも大切
一 つ注意すべきことがある。プロジェティスタはトライブを率いるが、それは常に、最前線でリーダーシップを発揮することではない。一歩、引くことによって、 トライブが動くこともある。その典型的な例はウィキペディアだ。ウィキペディアはトライブが空白を埋めるための手段を提供することによって成功した。
組織内でトライブを形成する場合には、トライブとガバナンスが必ずしも整合しない。そのような場合には、引くリーダーシップを発揮し、トライブのメンバーの自主性を引き出すことは有効であることが多い。
【参考資料】
セス・ゴーディン(勝間 和代訳)「トライブ 新しい“組織”の未来形」、講談社(2012)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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