第6話 シナリオのチカラ(2012.10.09)
◆コンセプト実現シナリオのポイントはドライビングフォース
Scenarioコンセプトができたら、そのコンセプトと具体的なアクションに落とし込んでいく。その際に、ポイントになるのがコンセプトの実現シナリオである。
実現シナリオの中で最大のポイントになるのは、そのコンセプトを実現する際に、根本的な変化要因は何かである。これを「ドライビングフォース」と呼ぶ。
たとえば、ドライビングフォースは以下のようなフレームの中にあると考えてみると
いいだろう。
(1)商品
(2)市場
(3)技術
(4)生産能力
(5)販売手段/物流
(6)天然資源
(7)規模/成長
(8)売上/利益
ドライビングフォースを見つけるには、社会、業界、自社などに関する情報収集を行わなくてはならないが、この際には(1)〜(8)の要因ごとに、コンセプトの実現に関連する情報を集めていけばよい。
◆ドライビングフォースからシナリオへ
ドライビングフォースを抽出すると、次に、シナリオの軸を決定する。そのために、ドライビングフォースの中で、特に重要性が高く、不確実性が高いものをシナリオの骨格となる変化要因として抽出する。これを、キードライビングフォースと呼ぶ。
そして、キードライビングフォースを組み合わせていくことにより、全体のシナリオを作成する。たとえば、2つのキードライビグフォースが存在すれば、2×2で4通りのコンセプト実現シナリオをが存在することになる。
◆仮想事例
IT企業でマネジャーをしているAさんは、自社の収益率の悪化を食い止めるために、管理の強化だけでは限界を感じていた。そこで3〜5年のスパンで、顧客と一緒に成長できる関係の確立というビジョンを掲げ、新しいコンセプトとして顧客本位型プロジェクトというコンセプトを打ち出した。このコンセプトは、顧客を中心にしてプロジェクトを動かすことによって、顧客のビジネス領域に踏み込み、顧客の情報化投資をコストから、投資に変えることにより、ベンダーとしてもそれに見合う収益を得ようというものだった。
Aさんは、
商品(サービス)、市場、技術、生産能力、販売手段
に注目し、社内情勢、業界情勢、自社分析などを行い、インパクトの大きいドライビングフォースとして、
<不確実性大>
・ユーザ・ベンダーの仕切り
・ビジネスの変化への常時対応
・プロジェクトからプロダクトへ
・・・
<不確実性小>
・ビジネスにおけるITの重要性向上
・労働集約型ベンダーの消滅
・ITベンダーのサービス内容の変化
・・・
この中から、キードライビングフォースとして、
・ユーザ・ベンダーの仕切り
・ビジネスの変化への常時対応
の2つを取り上げた。そして、それぞれが起こる場合、起こらない場合の組み合わせで4つのシナリオを考え、もっともらしいケースを「ユーザ・ベンダーの仕切りあり、ビジネスの変化への常時対応が必要」なケースのシナリオとして、
・ユーザとベンダーの対等な関係での対話の実現する契約の実現
・ビジネスの変化に対応できる開発技術
・ビジネスの変化に対応する話し合いの場としてのフューチャーセンターの立上げ
というシナリオを策定した。
◆シナリオのチカラ
以上のようにシナリオ策定をすることにより、想定した期間の間に、コンセプトの実現にこぎつける可能性は高くなる。また、シナリオを持つことにより、シナリオが崩れた場合に次の手を打つことが容易になる。
さらに、シナリオを持つことによって、決断が必要な局面で適切に意思決定を行うことができるようになる。
これらがシナリオのチカラである。
イノベーションリーダーは、コンセプトを打ち出すときには、自分の中にシナリオを持つ必要がある。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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