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イノベーションは、コンセプチュアル思考で課題を膨らませるところがポイントであり、本質的な解決策がコンセプトである。ロジカルシンキングは、原因をだんだん絞り込んでいるため、思考が狭くなるが、ソリューション提供では有効

第4回 本質とコンセプト(2015.08.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆コンセプトとは


前回本質について述べたが、今回は本質とコンセプトとの関係に触れておきたい。コンセプトの定義はいろいろあるが、突き詰めていえばコンセプトとは

自分が実現したいことの包括的イメージ

である。包括的イメージであり、個別具体的にやりたいことを並べたものではない点がポイントである。

そのため、コンセプトとはコンセプチュアル思考の中心概念のひとつであるが、では本質とどのような関係にあるのだろうか?


◆原因を絞り込み、本質的な問題を見つける

本質を見つける方法の一つにWhyを繰り返すという方法がある。たとえば、製品開発プロジェクトの進捗が遅れているとする。そこで、原因のWhyを繰り返して

進捗が遅れている
 ← 一部の作業が未着手である
  ← 担当者が過去に納入した製品のトラブル処理に追われている

という原因に行きついたとすると、本質的な問題はこの原因を抽象化した

開発とトラブルシューティングを同じ人が行っている

ことだといえる。ここで注目してほしいのは、Whyを繰り返すことによって、原因をだんだん絞り込んでいることだ。トヨタ式のいわゆる「真因」を探すという考え方である。


◆課題を大きくする

では、こういう場合はどうだろうか?

スマホのコストを30%削減したい
 ← スマホにテレビをつけたい
  ← 競合へ対抗しなくてはならない

この場合、課題に着目すると問題がだんだん大きくなっていることがお分かり戴けるだろうか?課題はWhyで掘り下げると抽象度が上がって、より大きな課題になる。

もし、競合に対応するというのが本質的な課題であれば、その手段はコスト削減以外にもある。たとえば、防水機能を付けるなどだ。


◆ロジカルシンキングとコンセプチュアル思考

前者はロジカルシンキングをしているのに対して、後者はコンセプチュアル思考をしていることに注意してほしい。前者の例ではWhyで原因に対するロジックを作っているが、ここでは制約(前提)を足し算している。これはロジカルシンキングの基本的な考え方である。

これに対して後者の例はWhyでロジックを作っているのは同じだが、制約を引き算している。これはコンセプチュアルシンキングの抽象/具象の軸を使った思考である。


◆ソリューションとイノベーション

ロジカルシンキングはソリューション提供の際のポイントになる。スジがよい(本質を外さない)原因を絞れれば絞れるほど、適切なソリューションを提供できるからだ。

これに対して、イノベーションにおいてはコンセプチュアル思考で、課題を膨らませるところがポイントになる。本質を外さないように課題を膨らませることができれば、課題に対する包括的解決策を考えることができる。

そして、その解決策に対応する具体的な方法の範囲も広がる。そこでは、従来のやり方はもちろんだが、新しいやり方が生まれてくる可能性がある。要するに問題のとらえ方によって、イノベーションが生まれてくるのだ。


◆コンセプトとは

この包括的な解決策こそ、コンセプトに他ならない。ここでポイントになるのは本質を外さないことである。たとえば、上の例で、

スマホのコストを30%削減したい
 ← スマホにテレビをつけたい
  ← 付加価値を上げたい

と考えたとする。確かにこういう考え方はあるのだが、この場合、本質とは言えない。あくまでもテレビをつける目的は競合への対抗上だからだ。付加価値を上げて競合に対抗するというロジックは本質がぶれてしまう。

このように本質を踏まえて問題を膨らませ、その問題に対する包括的な解決策がコンセプトになる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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