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マイクロソフトのPM情報ツール Project を使って、プロジェクトをうまくマネジメントしていく方法を解説し、その解説を通じて、MS Project の利用方法の解説します。第26回は、小規模プロジェクトのテンプレート作成経緯です

第26回 小規模プロジェクトのプロジェクトマネジメント その1(2009.05.19)

アイ・ツー・マネジメント 代表取締役 岡野 智加

今回から、私がリーダーを務める、PMI日本支部 PMBOK委員会 実用化ワーキング・グループで昨年作成した、小規模ITプロジェクト向けのテンプレートを紹介したいと思います。

■小規模プロジェクトのテンプレート作成経緯
PMI日本支部 PMBOK委員会 実用化ワーキング・グループは、2005年度に発足以来、PMBOK(R)を実務に活用するために有効なテンプレートを作成してきました。

第1弾として作成したのは、中規模のITプロジェクト向けのテンプレートで、PMBOK(R)第3版に完全準拠したテンプレートを作成しました。

実際に作成し、現在も公開しているテンプレートは、以下の通りです。
以下のテンプレートは、PMI日本支部の会員ページより無料でダウンロードできます。


まずは、2005年度に世界のテンプレートの調査をして、テンプレートの作成方針を決定し、2006年からテンプレートを作成しました。

2006年には、PMBOK(R)の主要3文書である、プロジェクト憲章、プロジェクト・スコープ記述書、プロジェクトマネジメント計画書、そして、各知識エリアのマネジメント計画書(但し調達は除く)を作成しました。また、他の構成要素としては、WBS、スケジュール、コスト、リスク関連などのテンプレートを作成しました。

2007年は、実行及び監視コントロールのプロセスでのアウトプットとして、作業パフォーマンス情報、変更要求票、課題管理表、実績報告書、教訓関連などのテンプレートを作成しました。

これらのテンプレートは、単なる項目の羅列ではなく、あるプロジェクトを想定し、内容も記述したものにしました。単なる項目だけでは、具体的にどのように記述したらよいか伝わらないものもあるので、そうしました。

このテンプレートに記載されているプロジェクトの概要は、以下のようなプロジェクトです。

● プロジェクト名 : スポーツ用品ネット販売システム構築プロジェクト
● 顧客 : 株式会社XYZ社
● プロジェクト遂行主体 : 株式会社ABC社
● 成果物 : スポーツ用品ネット販売システム
● プロジェクト期間 : 2006年4月1日〜2007年3月31日
● 予算 : 240,000,000円
● プロジェクト発足の理由 :
XYZ社の販売システムが、電話やFAXで受注した情報をオフコンにて入力していることが、他社に出遅れ、シェアが後退しているので、その問題を解決するために、自社システムのレベルアップをすることになった。

尚、これらのテンプレートは、「PMBOK(R)テンプレートの作成 その1〜その9」というテーマで、本コラムでも一部ご紹介しております。

これらのテンプレートは、大変高評頂いたのですが、現場では、小規模なプロジェクトが多く、それらをマネジメントするにはこれらのアウトプットは多すぎるので、もっと小規模向けのテンプレートを作成してほしいという要望が多々ありました。
そこで、IT企業、SI企業にとって一番案件が多い、数千万円以下の比較的小規模なITプロジェクトのマネジメントに適したドキュメントのテンプレートを作成することにしました。そのようなテンプレートを作成することによって、プロジェクトの重要事項の整理及びプロジェクトの進捗、課題等の可視化を行い、そのプロジェクトの成功の可能性を高めるられることを意図しました。

■テンプレートの作成方針
今回、テンプレートを作成するにあたって、以下のような小規模ITプロジェクトの特徴に合うようなテンプレートを作成することにしました。

● 中規模以上のプロジェクトと比べ、スケジュールの遅れのリカバリーが、より困難な場合がある。
● 少人数で行われるため、個々のメンバーの作業の与える影響が、中規模以上のプロジェクトと比べ、大きな影響をもつことがある。
● 顧客が中小企業であることが多いので、予算が厳しくスケジュールにも余裕がない。
● 顧客にシステム専任者がいないことが多いので、その分を開発ベンダー側がリスクを負う必要がある。
● プロジェクト・マネジャーが専任でないことが多い。
● 開発ベンダーも中小規模であることが多いので、PM関連の教育等が十分でない場合が少なくない。

上記の小規模ITプロジェクトの特徴を考慮して、以下のような基本的な考え方に沿ってテンプレートを作成することにしました。

● プロジェクト・スコープを明確にし、それからWBSを作り出すという、PMBOK(R)の基本的な方法論に従う。
● 開発に際しては、まず、既存の中規模ITプロジェクト用テンプレートを参考にする。
● テンプレートは、小規模プロジェクトが実施される環境・条件に適した形とし、かつ、PMBOK(R)の趣旨に反しないようにする。
● 開発メンバーの、これまでのプロジェクト経験もできるだけ反映する。

■テンプレートの構成
中規模ITプロジェクト用のテンプレートは、上記のとおり33のテンプレートを作成しましたが、小規模プロジェクトの場合は、以下の3つのテンプレートに絞り込みました。

● プロジェクト計画書 : 
プロジェクトの正式開始に際して顧客側と開発ベンダー側とで合意したプロジェクト・スコープ等の重要事項をまとめ、必要に応じて参照する。また、プロジェクトマネジメントの基本方針をまとめ、開発メンバー間で共通認識をもつ。

● プロジェクト管理表 :
プロジェクト計画書をもとにWBSを作成し、それをベースとして、全体および各作業の進捗、コスト等を管理する。

● 課題管理表 :
初期リスク及びプロジェクト実行中のリスク/問題等を適切に管理し、プロジェクトが失敗する可能性を減らす。

これらのテンプレートは、PMBOK(R)のアウトプットに照らし合わせると、以下のようになります。
   

※1.PMBOK(R)第4版においては、「是正処置」、「予防処置」、「欠陥修正」相当の内容は、「変更要求」に含まれる。


■サンプルプロジェクト概要
小規模ITプロジェクトのテンプレートも、中規模ITプロジェクト同様、単なる項目の羅列したテンプレートではなく、あるプロジェクトを想定して内容も記述しています。
今回の小規模ITプロジェクトでは、以下のプロジェクトを想定して作成しました。

● 顧客 : 古くから営業しているスーパーマーケットA
● プロジェクト発足の理由 : 
経営者が高齢のため、息子と交代する。そのタイミングで主要業務のシステム化を行う
● SIベンダー名 : ABC社
● 開発内容 : 
X社のオーダリングシステムパッケージにいくらかのカスタマイズを行うため、以下のサブシステムを改修する。
 ・入庫処理サブシステム
 ・在庫サブシステム
 ・プライスカード発行サブシステム

上記のプロジェクトで、テンプレートでは、2008年7月18日時点の以下のような状況となっています。

● 大きな問題もなく結合テストのフェーズに入っている。
● ところが、昨今の生産地偽装問題から、日本政府により、小売業者にも生産履歴の表示を義務づける法案が施行されることになった。それを受けてスーパーマーケットAはプライスカードの仕様変更を依頼してきた。
● これを受けて以下の機能を追加することになった。
・生産履歴の2次元コードの読み込み機能<入庫処理サブシステム>
・プライスカードでの生産地表示機能追加<プライスカード発行サブシステム>
● また、リスクとしてシステム稼働前までに納品書の2次元表示に対応できない仕入先が出てくる可能性がある。また、現在のハードウェアが対応できるか不明である

具体的なテンプレートについては、次回以降お話しします。

尚、このテンプレートは、現在、PMI日本支部の会員ページより無料でダウンロードできるようになっています。

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著者紹介

岡野 智加    アイ・ツー・マネジメント 代表取締役

大手ISベンダーなどにてOracleをはじめとするソフト・トレーニングの講師経験を経て、現在、Microsoft Office Projectセミナーに特化した教育事業経営を行っている。
1998年に日本初の、プロジェクトマネジメントの世界標準であるPMBOKTM(Project Management Body of Knowledge)に準拠したMicrosoft Office Projectセミナープログラムを独自開発。これまでの単なる操作方法を習得するセミナーではなく、プロジェクトマネジメントプロセスに従ったMicrosoft Office Projectの実践的活用ノウハウが習得できるセミナーを開発。
開発当初からこの今までに無い実践的な内容のセミナーは、当時、プロジェクトマネジメントをいち早く導入しようとしていた日本の最大手企業から高い評価を得る。
マイクロソフト社からも評価され、、2002年には日本初の米国マイクロソフト社公認Microsoft Office Project Official Partnerに認定される。
2002年に出版した書籍は、これまでの単なる操作方法を解説する書籍ではなく、プロジェクトマネジメントのプロセスに従ったMicrosoft Office Projectの活用方法が解説されているということで、大ベストセラーとなり、売れ続けており、その後の書籍及び日本中のセミナー企業へ多大なる影響を与える等、Microsoft Office Project講師として日本におけるリーディングパーソンである。

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