第25回 PMBOK(R)第4版と第3版の差異 その2(2009.04.21)
今回も引き続き、PMBOK(R)第4版と第3版の際についてお話しします。
今回は、PMBOK(R)の3つの主要文書である、プロジェクト憲章、プロジェクトマネジメント計画書、プロジェクト・スコープ記述書の内容について、第4版ではどのように変更されたかについてお話しします。
■変更点概要
PMBOK(R)の3つの主要文書は、基本的には以下の内容を記述することになっています。
●プロジェクト憲章・・・プロジェクトを公式に認可する文書。
●プロジェクトマネジメント計画書・・・プロジェクトの実行、監視・コントロール、終結の方法について記述した文書。計画プロセス群のアウトプットも含まれる。
●プロジェクト・スコープ記述書・・・成果物スコープとプロジェクト・スコープについて記述した文書。
尚、成果物スコープとは、プロジェクトの要素成果物であるプロダクト、サービス、所産に特有の特性や機能のことで、プロジェクト・スコープとは、既定された特性や機能を持つプロダクト、サービス、所産などを生み出すために実行しなければならない作業のことです。
基本的に記述する内容は上記の通りですが、PMBOK(R)第3版においては、3つの主要文書に記述すべき内容として挙げられている項目の中には、重複する項目がありました。
例えば、制約条件や前提条件、マイルストーン・スケジュールやコスト概算などの情報は、プロジェクト憲章にもプロジェクト・スコープ記述書にも記述すべき項目として記載されていました。
しかし、第4版では、そういった重複する項目はなくなり、それぞれの文書に記述すべき内容が明確になりました。
■プロジェクト憲章
PMBOK(R)第3版では、プロジェクト憲章に記述すべき項目として以下が記載されていました。
・顧客、スポンサー、その他のステークホルダーのニーズ、欲求、期待を満足する要求事項
・プロジェクトが取り組む対象であるビジネス・ニーズ、高いレベルのプロジェクトの記述、または製品に対する要求事項
・プロジェクトの目的や妥当性
・任命されたプロジェクト・マネジャーと権限レベル
・要約マイルストーン・スケジュール
・ステークホルダーの影響
・機能型組織部門とこれらの関与
・組織、環境、外部に関する前提条件
・組織、環境、外部に関する制約条件
・投資収益率も含め、プロジェクトの妥当性を示すビジネス・ケース
・要約予算
PMBOK(R)第4版では、以下のような記述になりました。
・プロジェクトの目的又は妥当性
・測定可能なプロジェクト目標及び関連する成功基準
・ハイレベルの要求事項
・ハイレベルのプロジェクト記述
・ハイレベルのリスク
・要約マイルストーン・スケジュール
・要約予算
・プロジェクトの承認要件(成功プロジェクトの要素、プロジェクトの成否を判断する人、プロジェクトの受け入れの承認を判断する人)
・任命されたプロジェクト・マネジャー、その責任と権限レベル
・スポンサーまたはその他のプロジェクト憲章を承認する人の名前と地位
上記を比較してみると、以下のような変更点がありました。
プロジェクト目標、リスク、承認要件に関しては、第3版ではプロジェクト・スコープ記述書に記載する項目であったのが、プロジェクト憲章の項目となっています。
要約マイルストーン・スケジュールや予算については、第3版ではプロジェクト憲章とプロジェクト・スコープ記述書の両方に記述すべき内容になっていましたが、第4版では、プロジェクト憲章に記述すべき内容となりました。
前提条件及び制約条件については、第3版ではプロジェクト憲章とプロジェクト・スコープ記述書の両方に記述すべき内容になっていましたが、第4版では、プロジェクト・スコープ記述書に記述すべき内容となり、プロジェクト憲章に記述すべき項目からなくなりました。
また、第3版には記述のなかった項目としては、「スポンサーまたはその他のプロジェクト憲章を承認する人の名前と地位」が挙げられます。
■プロジェクトマネジメント計画書
プロジェクトマネジメント計画書については、第3版と第4版とで記述すべき内容はほとんど変更ありません。
第3版でのプロジェクトマネジメント計画書に記述すべき内容は以下の通りです。
・プロジェクトマネジメント・チームが選択したプロジェクトマネジメント・プロセス
・選択した各プロセスの実行のレベル
・プロセス実行時に使用するツールと技法の記述
・プロセス間の依存関係と相互作用及び必須のインプットとアウトプットも含め、特定のプロジェクトをマネジメントするために選択したプロセスの使用方法
・プロジェクト目標を達成するための作業の実行方法
・変更を監視し、コントロールする方法
・コンフィギュレーション・マネジメントの実施方法
・パフォーマンス測定ベースラインの一貫性の維持と使用方法
・ステークホルダー間のコミュニケーションのためのニーズと技法
・選定したプロジェクト・ライフサイクル。複数のフェーズからなるプロジェクトに対しては、全てのプロジェクト・フェーズ。
・未決課題や未決定事項の解決を促進する内容、範囲、時期などについての主要マネジメント・レビュー
第4版での記述は以下の通りです。
・プロジェクトに対応して選択したライフサイクル、及び各フェーズに適用するプロセス
・プロジェクトマネジメント・チームがテーラリングした結果得られた次のような項目
−プロジェクトマネジメント・チームが選択したプロジェクトマネジメント・プロセス
−選定した各プロセスの実行のレベル
−プロセスを実行するために使用するツールと技法の記述
−当該プロジェクトをマネジメントするために選定したプロセスを適用する方法。これには、これらのプロセス間における依存関係と相互作用、及び必須のインプットとアウトプットも含める。
・プロジェクト目標を達成するための作業の実行方法
・変更を監視し、コントロールする方法を文書化した変更マネジメント計画書
・コンフィギュレーション・マネジメントの実施方法を文書化したコンフィギュレーション・マネジメント計画書
・パフォーマンス測定ベースラインの一貫性を維持する方法
・ステークホルダー間のコミュニケーションのためのニーズと技法
・未解決の課題や未決定事項の処理を促進するために、内容、範囲、時期などをレビューする重要なマネジメント・レビュー
記述すべき項目はほとんど変更はありませんが、プロジェクトマネジメント計画書に含めるべき計画プロセス群のアウトプットについての変更がありました。
第3版では、各知識エリア毎のマネジメント計画書及び他の構成要素としてその他の計画プロセス群の全てのアウトプットがプロジェクトマネジメント計画書の要素として含まれる記述でしたが、第4版では、他の構成要素ではなく、そのうちのベースラインのみがプロジェクトマネジメント計画書に含まれることになりました。
従って、第3版と第4版のプロジェクトマネジメント計画書の構成の違いは以下のようになります。
第3版のプロジェクトマネジメント計画書の構成は、以下の通りでした。
第4版では、以下のような構成になりました。
尚、第4版では、各知識エリア毎のマネジメント計画書に要求事項マネジメント計画書がスコープ・マネジメントの知識エリアのマネジメント計画書として追加されました。
■プロジェクト・スコープ記述書
プロジェクト・スコープ記述書は、第3版ではプロジェクト憲章と重複した項目が記述内容として記載されていましたが、第4版ではそれがなくなり、非常にわかりやすい記載項目となりました。
第3版では以下の内容がプロジェクト・スコープ記述書に記載すべき内容として記載されていました。
・プロジェクト目標
・成果物スコープ記述書
・プロジェクトに対する要求事項
・プロジェクトの境界
・プロジェクトの要素成果物
・成果物受入基準
・プロジェクトの制約条件
・プロジェクトの前提条件
・初期段階でのプロジェクト組織
・初期段階で明確化したリスク
・スケジュール・マイルストーン
・資金の制約
・コスト見積もり
・プロジェクト・コンフィギュレーション・マネジメントに対する要求事項
・プロジェクト仕様書
・承認に対する要求事項
第4版では、以下のように変更されました。
・ 成果物スコープ記述書
・プロジェクトの要素成果物
・ プロジェクトの境界
・ 成果物受入基準
・ プロジェクトの制約条件
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著者紹介
岡野 智加 アイ・ツー・マネジメント 代表取締役
大手ISベンダーなどにてOracleをはじめとするソフト・トレーニングの講師経験を経て、現在、Microsoft Office Projectセミナーに特化した教育事業経営を行っている。
1998年に日本初の、プロジェクトマネジメントの世界標準であるPMBOKTM(Project Management Body of Knowledge)に準拠したMicrosoft
Office Projectセミナープログラムを独自開発。これまでの単なる操作方法を習得するセミナーではなく、プロジェクトマネジメントプロセスに従ったMicrosoft
Office Projectの実践的活用ノウハウが習得できるセミナーを開発。
開発当初からこの今までに無い実践的な内容のセミナーは、当時、プロジェクトマネジメントをいち早く導入しようとしていた日本の最大手企業から高い評価を得る。
マイクロソフト社からも評価され、、2002年には日本初の米国マイクロソフト社公認Microsoft Office Project Official Partnerに認定される。
2002年に出版した書籍は、これまでの単なる操作方法を解説する書籍ではなく、プロジェクトマネジメントのプロセスに従ったMicrosoft Office Projectの活用方法が解説されているということで、大ベストセラーとなり、売れ続けており、その後の書籍及び日本中のセミナー企業へ多大なる影響を与える等、Microsoft Office Project講師として日本におけるリーディングパーソンである。
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