◆IRR
3回にわたって、ベネフィットコスト、回収期間、キャッシュ・フロー、ディスカウント・キャッシュフロー、NPV(正味現在価値)などのプロジェクト評価方法について説明してきた。このほかにも、よく使われる指標としてIRR(Internal Rate of Return:内部収益率)がある。これは、非常に計算式が複雑で、コンピュータを使わないと計算が困難なので、説明は省略したが、一言で言うと、将来予想されるキャッシュフローの正味現在価値が現在の投資額と等しくなるような利率のことをいっている。NPVとの関係でいえば、NPVが0のときの割引率がIRRである。手法の詳細については、インターネットで検索すれば出てくるので、探してみてほしい。
◆各手法の使い方
さて、では、このような手法で評価をしたとして、それをプロジェクトの運営にどのように活かしていけばよいのだろうか?まず、もう一度、個別の手法の使い方について復習しておこう。
・ベネフィットコスト分析
ベネフィット>投資額 なら プロジェクトを採用
ベネフィット−投資額が大きいプロジェクトを優先
・ペイバック
将来価値−投資額>0 なら プロジェクトは採用
将来価値−投資額が大きいプロジェクトを優先
・DFC、NPV
現在価値−投資額>0 なら プロジェクトは採用
現在価値−投資額が大きいプロジェクトを優先
・IRR
割引率>利子率 なら プロジェクトは採用
割引率−利子率が大きいプロジェクトを優先
である。
◆各手法の特長
これらの手法はいずれも一長一短がある。たとえば、ベネフィットコストやペイバックは直感的に考えやすいが、正確性にかける。DFCやNPVはより現実を反映するが、やや複雑であり、頭の中では考えられない。もっとも正確だとされるのはIRRである。しかし、IRRはかなり複雑であり、暗算するのは不可能であろう。
このため、通常は、複数の手法を適用してみてプロジェクトを選定することが多い。
◆経済性以外の視点も必要
直感的に考えられなくても、コンピュータを使ってシミュレーションできればいいのではないかという意見もある。この意見は確かに一理ある。一方で、いずれの手法も、所詮は計算上の話だという点に注意を払う必要がある。利率計算をしているので、物価変動くらいまではリスクとして含まれていると考えてよいが、たとえば、回収期間が5年のITのプロジェクトだったとすると、技術進歩により、システムの価値が変わっている可能性が大である。また、顧客の協力といった他力本願的な要素がプロジェクトへの投資の変動要素になる。そのように考えると、単にこれらの経済指標だけでは判断がしにくい部分があるのがプロジェクトの選択である。プロジェクトの選別は、これらを総合的に考えて、企業として利益を最大化するように行わなければならないのだが、そのプロセスで経済指標が直感的に操れるというのは大切な要素ではないかと思う。
その意味で、どの手法とどの手法を組み合わせて使うかはケースバイケースであるが、ひとつの目安として、上でのべたように特長の異なる指標を組み合わせて使うというのがよいのではないだろうか。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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