◆あなたはどの人をプロジェクトマネジャーに選びますか?
前回述べたようにプロジェクトマネジャーを育てるには経験が必要である。何人かの方から意見を戴いたが、ここまではそんなに違和感がないものと思う。
しかし、ここで言いたいことは、単に経験すればよいというものではないということだ。たとえば、OJTは、少し、イメージが違う。多くの人が経験というのは重要だと思っている。プロジェクトマネジャー養成マガジンの定番セミナー「プロジェクトを牽引できるスキルと心得を知る」の最初にこういう質問をすることにしている。
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あなたは、事業部長です。事業部の存続をかけた製品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーにどの人を選びますか
(1)PMBOK(R)も知らない、MS Projectも使えない、でも、PMキャリア15年のベテランプロジェクトマネジャー
(2)人心把握に長けたラインマネジャー
(3)製品開発プロジェクト経験10年、PM経験1年のPMP
(4)大学院で製品開発とプロジェクトマネジメントについて学んだが、実務経験のないMBA
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参加者のみなさんが選ぶのは(1)と(3)がほとんどだ。如何に、経験が重要だと考えているかが分かる。参加されたことのない方は何番を選ぶだろうか?
◆事業にとって意味のある変化を引き起こすのが本当の経験
しかし、よく考えてみてほしい。このエクスサイズの中で、(1)や(3)の経験が新しい製品開発に活かされるという保証はない。経験がないよりあるほうがましだというレベルに過ぎない。経験とは事業の実行に有益な経験のことである。ちなみに、ここで広辞苑を引いてみよう。
【経験】
人間が外界との相互作用の過程を意識化し自分のものにすること人間のあらゆる個人的・社会的実践を含むが、人間が外界を変革するとともに自己自身を変化させる活動が基本的なもの。
とある。経験をするというのは自分自身を変化させることであり、それは、行動の学習であり、さらには、価値観の変化であったり、あるいは抽象的な知識の獲得であったりするのだ。つまり、事業との関係でみれば、事業の実施に適した自己変革が経験である。人間は経験をつめば変わる。これは間違いない。しかし、それが事業実行者としてに方向に変わるかどうかは経験の質による。
◆意味のある経験には事業戦略が不可欠
すると、どういうことになるのだろうか?経験に意味をもらせるためには、プロジェクトマネジャーの人材像を決めることのできる事業戦略の存在が不可欠であるだということになる。もちろん、そのような事業戦略があったからといって、すべてのプロジェクトが事業戦略との整合性があるものだとは思わないが、なければ何も始まらないことは事実である。
ここは重要な部分で、そのような事業戦略のない企業や組織が、どのようなプロジェクトマネジャーを育成すればよいかというのは極めて不明確である。かつて(今も?)そうであったように、何でもできる、言い換えると「強みも弱みもない」人材を育成するという話にしかならないのだ。また、そこで可能な経験は雑多なものであり、人材を育てるものではないだろう。
逆に、明確な事業戦略があれば、そこからプロジェクトマネジャー像が決まると同時に、「経験の機会」が多くなる。ここが戦略的に経験をするための第1のポイントである。事業戦略を明確にし、その事業戦略に則ったプロジェクトを増やし、その事業戦略を実行する機会を増やす。これにより、事業戦略の実行に必要な人材(プロジェクトマネジャー)が、意味のある経験をする機会を増やし、成長し、プロジェクトを成功させ、事業上意味のあるプロジェクトを増やしていく。それにより、経験の機会も増え、事業が拡大していく。
そのような好循環を作らなくてはならない。概念的には納得戴けると思うが、問題は具体的な方法である。そこで、事業部を「スクール」と位置づけることを提案している。
詳細は次回。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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