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洞察力(見えない問題を見抜く力)を発揮するためには、出来事の矛盾を考え、やけっぱちな推測をする

第13回 思考の幅を広くする(3)〜ある消防士の事例(2020.10.27)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代
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    ◆思考の幅を広くする(3)〜ある消防士の事例

    意思決定には、下記の6つの方法があります。
    ・合理的意思決定
      プロ(長所)とコン(短所)を天秤にかける
      目的を実現する最善の方法を決定する
      結果を最適化する
    ・直観的意思決定
      正しいと感じられるもの
      自分の経験が示すもの
      あて推量
    ・感情的意思決定
      焦りが原因
      ストレスが原因
    ・創造的意思決定
      新しい解決方法を模索する
      新技能を活用しようとする
    ・監督的意思決定
      規定された手順に従う
      上司の命令に従う
    ・政治的意思決定
      出世のために最適な決定をする
      計画の実行に最適な決定をする

    常に1つの方法で意思決定するのではなく、状況や自分の強み弱み、背景、雰囲気などで意思決定することが多いです。そして、通常は、合理的意思決定、監督的意思決定、政治的意思決定などにて行っていることでしょう。
    また、トラブル時などは、直観的意思決定、感情的意思決定などで早急に決定し、その結果は失敗したり成功したことでしょう。皆さんはどの方法で意思決定していますか?

    本号では、創造的意思決定、直観的意思決定の事例として、書籍『「洞察力」があらゆる問題を解決する』の中でとても印象に残った話を取り上げます。

    著者ゲイリー・クライン博士は、現場主義的意思決定(NDM)理論の父であり、認知心理学者の一人です。NDM理論とは、人が現場においてどのように状況を判断し、問題解決をするのかについての認知メカニズムを説明するものです。クライン博士は、火災現場において危険度が高く時間的制約があり、不確実性がある中で、消防士がどのように意思決定するのかを調査しています。

    彼らは、行動の選択肢をいくつか列挙し比較する意思決定(合理的意思決定)はせず、特に熟練者であれば、直観的意思決定をしていたそうです。直観は、人間の創造力の源泉である直感力と洞察力(見えない問題を見抜く力)と述べています。

    書籍の中の消防士の意思決定について、ご紹介しましょう。
    ある13名の森林消防パラシュート隊が森林火災対応のために、ある場所に着陸し、消火のために坂を下っていたそうです。すると、火災が別の地点に飛び火していて、思いがけない大火災になっていて、消火どころか逃げるしか方法がなくなりました。

    安全地帯は頂上だけであり、みな、消火設備などを捨て、一目散に頂上向けて走ったそうです。ところが、下から迫ってくる火災のスピードは自分達の走る速度を上回っていました。
    頂上にたどり着くことは不可能だと、リーダーは判断し、前方の樹木に火を放ったのです。他の隊員はリーダーは気が狂ったのかと思ったそうです。

    火は上に登りますので、下からの火が到達するまではそこは安全です。そして、前方に放った火によって樹木が灰になった場所に、リーターはもぐりこんだそうです。もぐりこむようにと、隊員全員に指示したのですが、誰もリーダーの話には耳を貸しませんでした。しかし、逃げ遅れていて、どうしても灰に潜り込むしか方法がなかった2名とリーダーの3名のみが生き残ったそうです。灰の中で少々、やけどをしたそうですが。

    安全地帯(頂上)にたどり着くのは無理
      → 安全地帯を作る
         → 下方の火災はまだ到達していない
              (到達していたら、火災が合流してしまう)
            → 前方の樹木に火をつけて灰にし、安全地帯を作る
                 (灰には火はこない)

    と、考えたのです。なんという判断力、創造力でしょうか!

    クライン博士は、洞察力(見えない問題を見抜く力)を発揮するためには、

    ・出来事の矛盾について考える
    ・出来事のつながり・偶然の一致・好奇心から考える
    ・やけっぱちな推測をする

    の3つのトリガー(きっかけ)があると述べられています。

    この消防隊リーダーはやけっぱちな推測によって、助かった事例として紹介されていました。また、批判的思考法(クリティカルシンキング)で前提を覆すことも重要と述べられています。

    ◆参考文献
    「洞察力」があらゆる問題を解決する』著:ゲイリー・クライン、訳:奈良 潤、フォレスト出版


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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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