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コンセプチュアル思考による対策検討プロセスを解説。コンセプチュアル思考の軸を使い、本質と具体策の行き来を行い、具体策を評価していくことで、より効果的な対策を打てるようになります。これがコンセプチュアル思考の役割の一つです

特別編:コロナ対策の本質をコンセプチュアル思考で読み解く(2020.05.28)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆コンセプチュアル思考による対策検討プロセス


コロナも第一波は収束し、これからは第二波以降に向けて、十分な準備をし、対策を打っておくことが望まれています。そこで、連載「コンセプチュアルスキル入門」の特別編として、コンセプチュアル思考を使って検討するプロセスを考えてみたいと思います。

コンセプチュアル思考を使うと、プロセスとしては、

(1)現状認識
(2)現状として対策していることと、すべきことの洗い出し
(3)現状の概念化と構造化
(4)対策の本質の見極め
(5)本質を具体化する対策案の策定

といったものになります。詳しくは、本連載を読み直してください。


◆現状認識


まず、最初に行政はコロナ対策として何をすればよいのかを考えてみましょう。やっていること、いないことを戦術レベルで思いつくままに挙げてみると

・感染を減らす
・外国からの感染を防ぐ
・重症化を減らす
・ベット数を確保する
・医療設備を確保する
・感染検査を増やす
・感染者を早期に隔離する施設を準備する
・担当できる医師や看護師を確保する
・治療薬を開発する
・ワクチンを開発する
・経済的に窮地に陥る人や企業を支援する
・経済活動の再開
・人がコロナから感じるプレッシャーを緩和する
・日常活動を再開できるようにする
・コロナ後の生活のスタイルを明確にする
・・・
といったものが出てくるのではないでしょうか。

これの戦術(いわゆる政策に相当しています)には2つの性格があります。


◆概念化と構造化


まず一つは、相互に関係があることです。この関係を明確にすることが構造化することになります。
例えば、重症化を減らすためには感染を減らすことが必要です。また、医療崩壊を防ぐためにも感染者を減らすことが必要です。重症患者を減らすためには、医療崩壊を防ぐ必要がありますし、検査数を増やすことも必要かもしれません。このように項目間には関係があり、まったく独立した項目はありませんし、もしあれば、コロナ対策として意味がないものになるでしょう。

もう一つは、戦術には上位層や下位層があることです。この階層を明確にすることが概念化することになります。そして、上位層になると戦略になります。

例えば、感染者を減らす、重症化を減らす、感染者を隔離するなどは、「患者数をコントロール」するために行います。医師や看護師の確保、ベット数や医療設備、治療薬の開発は「医療環境の適正化」をするために行います。ワクチンを開発する」ことや「検査数を増やす」ことは「予防する」ことに結びつきます。また、人や企業の支援、経済活動再開は「経済活動の正常化」が本質的な目的の活動になります。さらに、もう一つは人の(メンタルの)支援があります。

これらの戦術の下には、さまざまな具体策(戦術実行策)があります。例えば、感染者を減らすという戦術に対しては、

・市民に外出自粛を要請する
・商用施設に自粛を要請する
・仕事はテレワークで行う
・三密を防ぐ
・・・

などが実際に行われています。他の戦術についても、同様にさまざまな具体策が行われています。これも概念化(概念と形象の行き来)になります。


◆対策の本質を見極める


このように構造化、概念化をしながら対策の本質を見極めていきます。

例えば、「感染者を減らす」という対策は「感染者数をコントロール」し、「医療を崩壊させない」と概念化することができです。同様に、「重症化患者の数を減らす」という対策を概念化すると「医療を崩壊させない」となりそうです。さらに「医療環境の適正化」という対策も「医療を崩壊させない」ことになるでしょう。

一方で、企業や人の支援、経済再開といった再策は「経済活動を正常化する」ために行っているでしょう。あるいは、「新しい経済活動のスタイルを確立する」かもしれません。

さらに、人間に関する項目もあります。人がコロナから感じるプレッシャーを緩和する、日常活動を再開できるようにする、コロナ後の生活のスタイルを明確にするなどですが、これらの活動を構造化すると、新しいスタイルの生活を明確にすることだといえます。

このように概念化した対策を構造化するとコロナ対策の本質が見えてきます。

・医療を崩壊させない
・新しい社会活動を確立する

といったことであるといえます。

これらをさらに概念化すると「コロナと共生する」という本質が出てきそうです。つまり、コロナ対策の本質を一つ上げるとすれば

「コロナと共生する環境をつくる」

といったことになるでしょう。これは戦略であり、対策の目的になります。

◆本質から既存の対策を評価する


さて、これを本質だとして、この概念に対して、対策はどれを優先すべきかという課題を解決することができます。これを最初に示したレベルで考えてみましょう(実際には、もう一段具体的なレベルで評価した方が良いですが、記事の都合上このレベルで評価します。

仮に◎、〇、△の3段階で評価してみましょう。

・感染者を減らす(△)
・重症化を減らす(◎)
・ベット数を確保する(〇)
・医療設備を確保する(〇)
・感染検査を増やす(◎)
・感染者を早期に隔離する施設を準備する(◎)
・担当できる医師や看護師を確保する(〇)
・治療薬を開発する(◎)
・ワクチンを開発する(◎)
・経済的に窮地に陥る人や企業を支援する(△)
・経済活動の再開△(◎)
・人がコロナから感じるプレッシャーを緩和する(◎)
・日常活動を再開できるようにする(〇)
・コロナ後の生活のスタイルを明確にする(△)
・・・

◆新しい対策を考える


さらに、この対策(目的)を実現するために、他にすべき対策はないかと考えていくことができます。一つ例を挙げてみましょう。

これからの大きな課題に水際対策があります。これは、具体策としては

・外国からの感染を防ぐ

という戦術の具体的な実施の中に、

・入国制限をする
・渡航者の検査と隔離をする

といった対策が含まれてくるでしょう。ここで「コロナと共生する」という本質を考えると、例えば、

・海外の人に日本の政策を理解してもらう

という◎の戦術が出てそうです。そして、この戦術実現のためにさまざまな具体案が出てくるでしょう。例えば、

・外交によるコミュニケーション
・途上国に対するコロナ対策の支援

といったものが考えられます。

以上のように、コンセプチュアル思考の軸を使いながら、本質と具体策の行き来をしながら、具体策を評価していくことによって、より効果的な対策を打てるようになってきます。これがコンセプチュアル思考の役割の一つだといえます。


◆関連記事

今回の記事の基本になっているのは、コンセプチュアル思考による戦略と戦術の行き来です。基本的な考え方についてはこちらの記事をお読みください。
【コンセプチュアルスタイル考】
   第50話:コンセプチュアル思考で戦略と戦術を行き来する

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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