第8回 見極めた本質を評価する(2018.02.20)
◆本質には筋の良し悪しがある
前回まで4回に分けてコンセプチュアルスキルの基本である「本質」を見極める方法について解説してきました。コンセプチュアルスキルとは
周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル
という定義からも分かるように、コンセプチュアルスキルのレベルはどれだけ適切な本質を探せるかだといっても過言ではありません。
コンセプチュアルスキルのトレーニングをしているうちに気がついたのですが、本質を見つけることができないと思っている人はまずいません。にもかかわらず、見出す本質の筋の良さはピンからキリまであります。なぜでしょう?
例えば、WHYによって本質を探していくという方法で考えた場合、第4回でも触れましたようにWHYを一方向でしか考えているか、双方向で考えているかが大きな違いになっているようです。一方向にどんどん掘り下げていっても、本質から外れたところに掘り進んでしまうことがよくありますが、双方向に考えていくとこの問題はある程度回避でき、比較的、筋のよい本質を探り当てることが可能になります。
◆2種類の本質の筋の評価
とは言っても筋のよい本質を見つけることは大変です。そこで、今回は、これが本質だと思ったときに、どのように評価すればよいかを考えてみたいと思います。
ここでは2つの方法を紹介したいと思います。一つは本質の性質に照らし合わせて評価するという方法です。もう一つ本質の活用方法に照らし合わせて、筋のよい本質だといえるかどうかです。
まず、最初は本質の性質の照らした評価を考えてみます。
◆本質の性質に照らして評価する
本質には以下のような性質があります。
(1)普遍性がある
(2)目に見えない
(3)本質は非常識
まず、本質には普遍性があり、時間が経過しても変わらないものです。もちろん、状況が変われば本質も変わりますが、状況が変わらない限り、時間の経過だけで変わっていくことはまれだと考えればよいでしょう。
次に、本質は目に見えないことが多いことがあげられます。これは本質がある程度抽象的なものだからです。本質はできるだけ具体的なものであることが望ましいのですが、モノとか、出来事が本質になることは考えにくく、あくまでも本質は概念であり、概念としてできるだけ具体的であることが求められます。
そして本質は誰もが疑わない常識の中ではなく、非常識の中にあることが多いものです。これは目に見えない概念であるということと深く関連していますが、具体的なモノや出来事をどのように見るかということで何を本質だと捉えるかが変わってくるということで、その意味で本質は主観的なものなのです。
見つけた本質が以上のような性質を満たしているかどうかを評価してみることによって、ブラッシュアップできるでしょう。
◆例〜計画の本質は
一つ例を考えてみましょう。プロジェクトにおいて計画(をつくること)の本質は何でしょうか?
ある人は、段取りよくプロジェクトの作業を進めることだと考え、また別の人はプロジェクトの進捗を共有するためだと考えるかもしれません。プロジェクトによっては予定を明確にするためだと考える人もいるかもしれません。
プロジェクトリーダーに話を聞いてみるといくつかのパターンがありますが、それはプロジェクトによって変わるものであり、時間とともに変わるということはほとんどありません。ただしプロジェクトの状況が変わる、例えばトラブルが起これば何を本質だと考えるかは変わってくる可能性があります。
もう一つ、重要なことは、何を本質だと考えるかによって、プロジェクトの進め方が変わってくるということで、それがプロジェクトリーダーのスキルとして非常に影響の大きいものだということです。
例えば、イノベーションのような先の見えないプロジェクトで、計画の本質を段取りをうまくすることだと考えるとそのプロジェクトはまずうまく進まないでしょう。つまり、あまり筋のよい本質だとは言えません。
これに対して、プロジェクトの状況を関係者で共有することだと考えるとどうでしょう?計画をこのような目的に位置付けることはある意味で非常識ですが、実際にプロジェクトをやってみるとうまく行きました。
このように、概念の世界ですので、常識にとらわれることなく、何が本質かをしっかりと見極めていくことが重要です。
◆本質の活用方法を想定して評価する
次に本質の活用方法を想定してみて、得られた本質を評価するという方法について説明しましょう。
本質の活用方法には以下のようなものがあります。
・本質を中心において構想を膨らませる
・本質的事柄の優先順位が高い計画を作る
・現象にとらわれず、本質的な問題を見極め、解決する
・本質に意見を統合した意思決定を行う
・本質を共有しながらコミュニケーションする
本質を見極めるというのは、構想や計画、問題解決、意思決定などのさまざまな目的のために行っていますので、実際にやろうとしていることに対して、上のような機能から本質が十分に機能するかどうかを評価してみます。
その上で、十分に機能する見通しが立てば本質として筋のよいものだと考えてよいでしょう。逆に、機能する見通しが立たない場合には、本質を見極めなおす必要があるといえます。
以上のように、本質はこれだと考えたら、評価してみることによって、本質の筋の良さを向上させていくという習慣を身につけると、コンセプチュアルスキルはグンと向上するでしょう。
(続く)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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