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コンセプチュアル思考の5つの思考軸とそれらの統合を解説しています

第7回 本質の探し方(4)〜コンセプチュアル思考を活用する(2019.01.23)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人



◆はじめに

本質を見極める方法の最後(4番目)は「コンセプチュアル思考」を活用して本質を探すものです。コンセプチュアルスキルを使った活動の中で、本質を見極めること自体が目的になることは少なく、本質を使って構想をしたり、問題解決をしたり、プロジェクトマネジメントをしたりします。

その際にこれらの活動をうまく行うためにコンセプチュアル思考を使いますので、その意味では本質の見極めにコンセプチュアル思考を使うことは、本質の応用がスムーズにいくという意味でもっとも効果的な方法だと言えます。

ただし、この方法はこれまでに説明してきた3つの方法と比べると、自由度が高く、使いこなすまでに時間がかかることが予想されますが、これまでの3つの方法を基本的に包含しているため、一旦マスターすれば、より強力なスキルになることが期待できます。


◆コンセプチュアル思考のイメージ

まず、コンセプチュアル思考ですが、これについてはこの連載の中で別途詳細に説明する予定ですが、ここでは入口だけ簡単に触れておきます。一言でいえば、「概念の世界」と「形象の世界」の行き来によって、構想や計画、問題解決などを行なう思考法です。概念の世界と形象の世界というのは、以下のようなものです。

<概念の世界>目に見えないもの、概念化されたものから成る世界を概念の世界と呼んでいる。抽象的、大局的、直観的、主観的、長期的などの特性を持つ

<形象の世界>目に見えるもの、具象化されたものから成る世界を形象の世界と呼んでいる。具象的、分析的、論理的、客観的、短期的などの特性を持つ

コンセプチュアル思考では、この2つの世界を概念化と行動化という2つの行為によって行き来することによって思考を進めていきます。イメージとしては図1のようになります。
コンセプチュアル思考のイメージ
◆コンセプチュアル思考の思考軸

そして、コンセプチュアル思考ではこれらの世界の行き来をするために、以下のような5つの軸と思考過程を考えます。

・大局的/分析的
イメージで大雑把に物事を捉えた上で、そのイメージを定量的に説明することによりイメージを明確にする。

・抽象的/具象的
現実の現象を抽象化し、抽象的に思考(問題解決や意思決定)を行い、その結果を複数の具体的な事象や行動に落とし込む

・主観的/客観的
自身の価値感に基づき思考を行い、その結果について第三者的な視点から妥当性を検証・調整する

・直観的/論理的
直観的に判断をした結果に対して論理的根拠を構成し、論理で得られた結果の妥当性を直観的に判断する

・長期的/短期的
長期スパンの思考と短期スパンの思考を行う

それぞれの軸に沿った行き来を繰り返しながら統合していくことにより、思考していくのがコンセプチュアル思考です。

◆コンセプチュアル思考による本質の見極めの例

それぞれの軸の詳しい説明は次回以降に行いますが、ここでは、これらの軸の使い方と統合のイメージを示しておきます。例はカーレースの戦略策定をコンセプチュアル思考で行った例です。この戦略策定のために必要なのは、カーレースに勝つための本質は何かということです。

まず、「カーレースに勝つ戦略」を想定してそれぞれの軸に対して図2のような問いを立てます。この問いはこれでなくてはならないというものではありません。この問いの立て方によって、どれだけ鋭く本質に迫れるかが変わってくると言えます。
カーレースの戦略

そして、その上で5つの軸を一つずつ枠にとって表現しています(図3はその一部です)。例えば、大局/分析軸であれば、

・レースを勝つイメージを持つ=均一なスピードで走る(大局)
・平均スピードを上げる手段には、無駄をなくすことや走行速度を上げるなどいくつかある(分析)

といった感じになります。

5つの軸についてこのような分析をし、関係性を考えます。そして、関係性を考えて、戦略の本質がどの軸のどの要素にあるのかを統合的に考えるというのが、コンセプチュアル思考による本質の見極め方です。この例では、抽象/具象の軸の

・82%を速く走れば勝てる(抽象)

に本質があると考えているわけです。


◆本質の見極めの判断基準

本質を見極める際には、軸や要素が全体に対して5つの観点からどのような影響を与えているかを考えていきます。簡単にいえば、

・全体にもっとも大きな影響を与えている軸はどれか
・全体にもっとも大きな影響を与えている事象/要素はどれか

を見極め、該当する要素を本質とすればよいわけです。冒頭で、使いこなしに時間がかかると述べたのは、この見極めを適切に行えるようになるまでには経験が必要だということですが、それにしても漠然と本質を考えて見極めができるようになるまでの時間に比べると格段に短縮されると思われます。

(続く)

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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