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ロジックや経験だけでは成果を上げることはできないという意識の変化があり、従来マネジメントではあまり注目されなかっセンスやアートが注目されるようになってきた。コンセプチュアルマネジメントは、概念と形象の行き来を通じて、マネジメント上の課題を探し、解決して、成果を大きくしていくこと

第10回 戦略マネジメント(1)〜戦略と戦術の行き来をし、戦略を実行する(2019.07.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆はじめに


実践!コンセプチュアル・マネジメントは4月以降、連載を中断していました。実は、コンセプチュアル・マネジメントの当面の切り口として、組織マネジメントの観点から、生産性向上、ダイバーシティマネジメント、イノベーションマネジメント、プロジェクトマネジメントの4つを重視し、いろいろと書いていこうと計画していたのですが、少し違和感があったためです。

いろいろと考えて、

・戦略マネジメント編
・イノベーションマネジメント編
・マーケティングマネジメント編
・プロジェクトマネジメント編
・・・

という感じで、業務マネジメントの観点からコンセプチュアル思考を活用したマネジメントについて考えてみることにしました。


◆コンセプチュアル思考の復習


まず、最初に復習しておきますと、コンセプチュアル思考は

 [概念]   [形象]
・大局的 / 分析的
・抽象的 / 具象的
・主観的 / 客観的
・直観的 / 論理的
・長期的 / 短期的

の5軸で、概念と形象を行き来しながらものごとを考えていく思考法です。大局と長期については、一般的に重要だと言われる視点ですが、抽象/主観/直観の3つについては、従来は好ましくないと言われ、形象の立場で考えていくことがよいとされていたのものです。

しかし、抽象については4〜5年くらい前から重要性が指摘されるようになってきました。契機になったのは、楠木建先生の

経営センスの論理」(2013年)

で、経営には抽象と具象の行き来が重要だと説かれ、注目を浴びたことだったと記憶しています。

さらに、主観や直観については、山口周さんの

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」(2017年)

がベストセラーになったあたりから、一挙に市民権を得たような印象があります。実際に、ビジネス書も数多く登場しています。興味がある方はこちらの記事をお読みください!

【PMスタイル考】第148話:直感や主観こそがイノベーションを生み出すl

いずれにしても、センスやアートといった従来、マネジメントではあまり注目されなかったものが注目されるようになってきたことが契機になっていますが、その背景にあるのは、もはや、ロジックや経験に頼っていても成果を上げることはできないという意識の変化があると考えられます。そこで、経験一筋、ロジック一筋ではなく、上の述べたような概念と形象の世界を行き来しながら、対応していこうというのがコンセプチュアル思考です。

コンセプチュアル・マネジメントは、この概念と形象の行き来を通じて、マネジメント上の課題を探し、解決して、成果を大きくしていくことです。

概念の世界と形象の世界の行き来をすることが求められている分野は、意外と多いものです。最初は著者がその典型だと思っている、戦略と戦術の行き来から考えてみたいと思います。戦略が概念の世界、戦術が形象の世界になります。


◆戦略と戦術


戦略とは何か、戦術とは何かということはいろいろな意見がありますが、企業でもっとも一般的なのは、

企業としてこうなりたいというビジョンがあり、そのビジョンを現実にするために戦略を策定する。そして、その戦略を実行するために戦術を考える

というものでしょう。ここではこれを定義として話を展開していきます。

まず、例として企業Aを考えてみましょう。

この企業は使い捨ての食器を製造販売しており、長年、ユーザーの要望するものを提供するというビジョンを掲げ、そのため多品種の商品を低価格で提供することを戦略として事業展開してきました。しかし、近年、環境問題への関心が高くなり、ビジョンを実現していくには戦略を変える必要があり、環境にやさしい商品を提供することに変えていきました。

この戦略を実行するために、A社は、ストローやスプーン、フォークなどいくつかのプラスティック商品についてはリサイクル可能なプラスティックを使った商品開発をしました。そして、リサイクル制度を立ち上げるという戦術を採ろうとしました。しかし、リサイクルは技術的には可能でしたが、システム化しようとすると産業界、流通業界、消費者などの協力が必要で、非常に時間がかかることが判明しました。

そこで、この戦術のプライオリティを下げ、新たにプラスティック原料の廃止を戦略実行のための戦術とし、紙の原料を活用した代替商品を開発し、展開していきました。

この例のように、戦略は大きな方針(ビジョン)を実現するために方向性であり、概念の世界のものです。これを戦術という形で具体的なやり方に落としていくわけですが、重要なことは「行き来」なのです。

今回はここまでです。続きは次号で。


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  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
 4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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