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客観的、論理的だけでごとを考えているため、大きなイノベーションは起こせない

第9回 プロジェクトマネジメントがコンセプチュアルであるとは(2019.03.13)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

今回のテーマはプロジェクトマネジメントです。

PMstyleでは、「コンセプチュアルプロジェクトマネジメント」という言葉をずっと使っているのですが、よく聞かれることに

・プロジェクトがコンセプチュアルってどういうことですか
・コンセプチュアルプロジェクトマネジメントと一般的なプロジェクトマネジメントはどのように異なるのですか

といったことがあります。

前回のプロジェクトマネジメントの回(第5回)で、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのイメージは、目的の「決定」と「目標」の設定の部分、つまりプロジェクトデザインの部分に特徴があることを述べました。これ以外にも、計画以降で意思決定にOODAのような仕組みを取り入れるといったことや、問題解決にシステム思考を取り入れるといったことをこのあと述べていくつもりですが、もっとも本質的な違いはデザインの部分だと思われます。そこで、今回はもう少し、プロジェクトデザインについて考えてみます。


◆プロジェクトの範囲

プロジェクトデザインの本質は課題の発見とその解決にありますが、プロジェクトをどのように位置づけているかは組織によって異なります。狭い範囲で考えている組織は

(1)課題、課題解決の方向性を与え、課題解決を実現する

ことがプロジェクトの範囲だと考えています。もう少し広く考える組織は

(2)課題を与え、課題解決を行う

と考えていますし、さらに広く考える組織(やプロジェクトによって)は

(3)課題発見と課題解決を行う

と考えているケースもあります。ちんみに、PMBOK(R)で言っているプロジェクトは(1)〜(3)のすべてです。

プロジェクトをどういう範囲のものであると考えるかによって、プロジェクトの目的の捉え方が変わってきます。

(1)の場合のプロジェクトの目的は、課題解決の結果として要求されている成果物を生み出すことです。極論すればその成果物によって課題が解決されようとされまいとプロジェクトの責任ではないことになります。

(2)では課題を解決することが目的になります。その課題を解決することによって課題の背景にある戦略が適切に実行できるかどうかはプロジェクトの責任ではないことになります。

(3)ではビジョンや戦略、顧客要求などからプロジェクトの課題を設定しますので、戦略的な貢献をすること、顧客を満足させることなどがプロジェクトの目的になります。この場合は、戦略に対する貢献、顧客満足の実現がプロジェクトの責任になります。


◆これからのプロジェクトデザインでは主観が重要になる

このように、プロジェクトデザインも変わってきますが、今、多くの組織がうまく行えていないプロジェクトは(3)のようなプロジェクトですし、これから重要性が増してくる、あるいは数が増えてくるプロジェクトも(3)だと考えられます。

(3)をもう少し詳しくいえば、

自組織や顧客が持っている課題の本質を見つけ、その上でそれを解決するための新しいモノ、体験、システムなどをつくり出すプロジェクト

だといえます。一般的にいえば、課題発見はプロジェクトスポンサーが行い、プロジェクトマネジャーとチームが課題解決を担当することになります。

では、(3)のタイプのプロジェクトデザインで重要になるものは何かというと主観です。コンセプチュアル思考でいえば、主観/客観、直観/論理の軸が重要になってきます。


◆客観だけではイノベーションが実現できない

少し話が大きくなりますが、いま世の中では小さなイノベーションはできるが、大きなイノベーションが起こせないという問題が盛んに言われています。この理由の一つは、客観的、論理的にものごとを考えていることにあると思われます。

高度成長期のように成長している時代には、足らないものが明確ですので、客観的かつ論理的に考えていれば新しいものを生み出すことができました。ところが、社会が成熟してくると足らないものがなくなります。そこで客観的/論理的にできるのは、既存のものの問題点を探し、改善していくことだけです。今はまさにそういう状況ですが、そのような状況においては、いくら客観的・論理的に探しても新しく何をすればよいか分かりません。つまりイノベーションのネタがないことになります。

では何をすればよいかということで考えられるのは、直観を働かせ、主観的に考えていくことです。周囲が客観性や論理性の中で直感や主観を前面に押し出していくのは非常に難しいものがありますが、この壁を打ち破らなくては画期的なイノベーションというのは生まれてこないでしょう。この主観や直観を使うところにコンセプチュアルプロジェクトマネジメントの本質があるといえます。


◆プロジェクト全体をリードする役割が必要

この役割は、プロジェクトスポンサーの役割ということになりますが、課題に主観を取り入れる場合には、プロジェクトの最初から最後までリーダーシップをとっていく必要があります。それをプロジェクトスポンサーに要求するのは厳しいものがあります。

では、これを誰が行うのかということになります。プロジェクトマネジャーは課題解決の遂行に大きな責任がありますので、現実問題としてに課題発見のところまで立ち入ることは難しいでしょう。

これに対して実際の例では、プロジェクトプロデューサーというロールを作ってそのような立場を担当してもらうという仕組みづくりを行ったことがあります。名前はプロデューサーでもディレクターでもいいのですが、いずれにしても(3)のタイプのプロジェクトの場合、全体をリードしていく役割が不可欠だと言えます。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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