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事務局型PMO、標準化型PMO、問題解決型PMO、戦略実行型PMOが主体となって行うべきマネジメント、計画、問題解決、意思決定においてコンセプチュアルスキルが必要 | 大局と分析、抽象と具象、主観と客観などの軸をうまく使うことが必要

第36話:PMOのためのコンセプチュアルスキル(2017.09.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆PMOのタイプ

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)は

(1)事務局型(プロジェクトオフィス)
(2)標準化型
(3)問題解決型
(4)戦略実行型

の4つに分けることができます。

(4)に近づくほど複雑な問題の解決をすることになりますので、(1)→(4)を成長とみる向きもあるようですが、プロジェクト形態のニーズとの兼ね合いもあるので、一概に(4)に向かうべきだとは言えません。また、(3)、(4)を役割を持ちながら、(1)や(2)を同時に持つこともあります。


◆PMOのミッション

そんな中で確実に言えることは、(1)より(2)、(2)より(3)、(3)より(4)と数字が大きくなると、実行にコンセプチュアルスキルが必要だということです。今回は、この問題について考えてみたいと思います。

それぞれのPMOのミッションは以下のようなものになります。

(1)事務局型(プロジェクトオフィス)
 ・プロジェクトの成果物と目標の達成(コスト、スケジュール)
(2)標準化型
 ・プロジェクトマネジメント手法の標準化
 ・プロジェクト経費の削減
(3)問題解決型
 ・ビジネス目的を実現できるプロジェクトマネジメントの適用
 ・プロジェクトにおける利益の拡大
(4)戦略実行型
 ・センター・オブ・エクセレンス
 ・戦略ゴールの達成のために、継続的改善と組織横断的な協調を実現する

まず(4)は経営レベルの支援の役割を果たすことが分かります。また、(3)は事業部マネジャーレベルの支援を果たします。さらに、(2)は実務マネジャーレベル、(1)はプロジェクトマネジャーレベルの支援ということになります。

このように考えると、それぞれの支援対象が求められているコンセプチュアルスキルに対応したスキルが必要だということになり、必要なコンセプチュアルスキルの強さも変わってきます。


◆PMOスタッフに必要なコンセプチュアルスキルとは

PMOスタッフに必要なコンセプチュアルスキルも、基本的にマネジャーのコンセプチュアルスキルと同じ構造で考えます。すなわち、コンセプチュアルスキルは

・コンセプチュアル思考
・コンセプチュアル行動

の2階層からなり、コンセプチュアル思考は

・大局的/分析的
・抽象的/具象的
・主観的/客観的
・直観的/論理的
・長期的/短期的

の5つの軸からなります。そして、この上で採られるコンセプチュアルな行動としては

・標準化
・計画
・問題解決
・意思決定
・支援

などです。ちなみにこのようなコンセプチュアルスキルの上で行う業務は

・ポートフォリオマネジメント
・プロジェクトマネジメント標準策定
・PMツール導入、ガバナンス確立
・アセスメント
・リソースマネジメント
・トレーニング
・プロジェクト支援計画策定
・プロジェクト計画支援
・プロジェクト実行支援
・プロジェクト監査
・リカバリー支援
・・・

などが考えられます。


◆事務局型のPMOスタッフに必要なスキル

まず、(1)についてコンセプチュアルスキルが必要な場面を考えてみると、プロジェクトの規模によりますが、規模の大きなプロジェクトについては、プロジェクトマネジメント計画を策定する段階での計画支援や、実行支援の中で、問題解決や支援のスキルが必要と場合が多くなります。

ただし、不可欠というわけではなく、コンセプチュアルスキルがあるとよい成果を生み出す近道になる程度に考えておいた方がいいでしょう。


◆標準化型のPMOスタッフに必要なスキル

次に(2)でですが、標準化では標準化のコンセプチュアルスキルが不可欠です。標準化の活動は

(A)現実のやり方全体を考えて、標準化の方向性を決める
(B−1)方向性を前提によいやり方をしている現実のプロセスややり方を選ぶ
(B−2)選んだ「プロセスややり方を抽象化する
(B−3)抽象化したやり方を、いくつか具象化し、評価する
(B−4)必要に応じて、繰り返す
(C)実証し、意見を聞く
(D)決定する

といった流れになります。これは、大局と分析、抽象と具象の2つの軸を中心にしたコンセプチュアル思考そのものだといってもよいでしょう。


◆問題解決型のPMOスタッフに必要なスキル

さらに(3)では基本的にはビジネスの目的を実現することが利益を上げるポイントになります。このポイントをクリアするためには、目的を具体化する行動として、計画、意思決定、支援が重要になります。実際の流れとしては

(A)ビジネスの目的を決める
(B)目的を目標に落とし込んでいく
(C)目標を達成する計画の策定を支援する
(D)計画の実行ができるようにオペレーションの支援をする

といったものです。

この流れをうまく回すには、問題解決、意思決定、支援などのコンセプチュアルスキルが重要な役割を果たすことになります。ここで重要になるのは、抽象と具象、直観と論理、長期と短期の3つの軸です。


◆戦略実行型のPMOスタッフに必要なスキル

最後に、(4)では、戦略をプロジェクト(目的)に落としていかなくてはなりません。つまり、

(A)戦略の意味を考える
(B)戦略を実現するポートフォリオを設定する
(C)ポートフォリオ上のプロジェクトを実行しながら、ポートフォリオをバランシングする

といった流れを作らなくてはなりません。


◆まとめ

これはPMOが主体となって行うべきマネジメントですが、これを実行するには、計画、問題解決、意思決定といったコンセプチュアルスキルが必要で、大局と分析、抽象と具象、主観と客観などの軸をうまく使うことが必要になります。

以上のように、PMOが機能するには、それぞれ、コンセプチュアル思考に基づくコンセプチュアルスキルが必要です。コンセプチュアル思考については、本連載の前半、あるいは、書籍

好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)

をお読み戴ければと思います。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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