第24話:柔軟な発想の問題解決を行う(2016.04.25)
◆問題解決の2つの仕事
問題解決に当たってはコンセプチュアル思考はいろいろな面からの武器になりますが、なかでも柔軟な発想で問題解決を行えることが大きいと思われますので、ここから考えていきたいと思います。
問題解決においては、コンセプチュアル思考の役割としては、問題の本質は何か、本質的な問題は何かを見極めることが重視されますが、同時に本質的な問題に対応する柔軟なアイデアを出すことが期待されます。
問題解決は2つに分けることができます。一つは原因を探し、対処する問題解決です。もう一つは課題を探し、対処する課題解決です。前者では問題の本質を真の原因と考え、真の原因に対して解決策を探し求めていくことになります。後者では、課題の本質を見つけ、それに対処していくことになります。
◆問題の構造を見極める
前者では、問題の構造がまず問題になります。ここで問題としてイメージしているのは現状と目標のギャップが問題だということと同時に、問題には必ずオーナーがいるということです。つまり、問題とは、目標と現状のギャップであり、主体者が解決すべきと考える事柄のことです。
その意味において、ある事象が問題かどうかは主観だということです。問題解決をするには、まずオーナーが問題だと思ったことに対して、問題の本質は何かを考えることから始まります。
問題になっている現象がなぜ起こったのかを繰り返して考えているうちに、抽象的な原因にたどりつき、本質的な原因だと思ったものに対して抽象的なレベルで解決策を考え、さらにそれを具体化していくことになります。しつこいようですが、ここでいう本質的な原因とは、主観的なものでそれを周囲の人が納得した間主観的なものです。
◆問題解決の例
たとえば、見通しのよい直線道路で自動車事故が発生し、起こった原因はスマホで景色の写真を撮って送ろうとしていたことにあったことが分かったとします。この原因を抽象化するとわき見運転をしていたことだと結論づけたとします。これは主観的なものです。
すると、問題解決として考えるべきことは、どうすればわき見運転をしないようにできるかということになります。そのためには、
(1)注意喚起する
(2)取り締まりをする
(3)わき見運転できないようにプレッシャーをかける
などが考えられます。そして、どれがよいかを決定し、それに対して具体的な方策を考えていくわけです。
たとえば、類似の場所の事例で(1)が効果的だと判断すれば、(1)を解決策だと決定し、(1)に対する具体的なアイデアを出していくわけです。たとえば、「VICSを通じて「前をみて運転しましょう」というアナウンスをする」といったことです。
ここからさらに抽象的に考え、VICSで本当にいいのかなどを検討していき、最終的な具体的な案を出していきます。このように考えていくことによって、「スマホを操作しながら運転していたからスマホを禁止しよう」といったアイデアだけではなく、さまざまな視点からアイデアが出てくるわけです。
◆課題の本質を見つける
後者は課題の本質を見つけることです。つまり、問題を解決するために行うべきことであったり、当該の問題の原因以外への対処にもなるものです。
たとえば、事故の例で、ここは事故が多いので、「スマートフォン使用禁止の看板を立てる」という決定がなされたとします。ここでこの課題の本質は何かと考えてみます。
なぜ、看板を立てる必要があるのでしょうか?それは、看板を立てれば運転者は注意してくれると考えているからです。すると、これが妥当な判断かどうかを考えてみる必要があります。このようにして、なぜを繰り返しながら課題の本質に近づいていくわけです。
この場合、問題の原因と異なり、課題としては大きくなっていることに注意してください。たとえば、スマートフォンに限らずわき見運転をさせないようにすることが課題の本質かもしれません。
そのように考えたとすれば、それを課題として、課題解決のための具体的な案を考えるわけです。ここからは、真因を確かめて対応するというケースと同じです。
◆具体化の方法
では、具体化のアイデアを出すにはどうすればよいのでしょうか?一人で行わなくてはならない場合と、複数の人やチームで行うことができる場合があります、基本的にはまずはブレーンストーミングが基本になります。
ブレーンストーミングだけでは心もとないと思えば、ブレーンライティングにするとかでもいいですし、スキャンパー質問(SCAMPER)を活用するのもいいでしょう。
スキャンパー質問は、置き換える、組み合わせる、当てはめる、修正する、別の使い方を考える、余計なものを削る、再整理などの方法を組み合せることによって新しいアイデアを生み出していく手法です。一人で考えるときも、何人かでブレーンストーミングを行うときににも効果的な手法です。
抽象化することが難しいと思っている人が多いですが、実は具体化することの方が現実には難しいのです。その意味で、自分自身に適した具体化の実践方法を身につけておきたいものです。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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