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短期的な視点と長期的な視点を往復し、長期と短期の統合をする

第14話:5つの軸について考える(5)〜現在と未来を統合する(2015.05.11)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆5つ目の軸

コンセプチュアル思考の最後の軸は長期と短期です。

この軸も概念側にある長期は悪いことだとは考えられず、長期的な思考が求められます。たとえば問題が発生したときに、目先の問題を解決すると同時に長期的にも問題を解消することが求められることがよくあります。

問題解決では、当面策と根本策という言葉をよく使いますが、当面策は問題回避のニュアンスが強く、根本策が本来の意味での問題解決になります。


◆短期的な視点と長期的な視点

たとえば、仕事のスケジュールが遅れているとします。毎週、1日分ずつ、遅れていっています。この場合、当面の問題として遅れの拡大を止める必要があります。このためには仕事の担当者を増やすといったことが考えられます。しかし、これだけでは本質的な解決にはなりません。この仕事のスケジュール遅れはこれで回避できるかもしれませんが、また、次の仕事でも同じ問題が起こる可能性があります。つまり、短期的な問題解決になっても長期的な問題解決にはなっていないわけです。

長期的な問題解決をするには、なぜ遅れが拡大しているのかを分析して、その根本原因を解消する必要があります。つまり、本質的な問題を解決する必要があるわけです。

たとえば、担当者のスキルが低いことが問題なのであればスキルを上げることが必要ですし、そのような担当者を割り当てた担当者アサインの方法に問題があれば担当者のアサインの方法を変える必要があります。いずれにしても、長期的な視点から問題解決が必要になってくるわけです。


◆短期と長期を両方実行するのは難しいケース

問題解決の場合には、まず短期で問題の拡大を防止し、次に根本的な対策を長期的な視点で行う二段階の対応が可能な場合も多いと思いますが、製品開発のように対応に大きな費用や時間がかかる投資を伴う場合には、そうは行きません。

たとえば競合が新製品を出したときに、まずその競合と競争できる製品を出し、そののちにまったく新しい製品を出すというやり方は投資が分散され、あまりよい結果を生みません。勝つためには、

目先の競争でも勝て、将来的に勝てる製品

を考える必要があります。つまり、現在と未来を統合する必要があるのです。


◆長期と短期の統合

例を一つあげましょう。グーグルがスマートフォンで「Project Ara」というプロジェクトを仕掛けています。この秋にも製品が発売される予定です。スマートフォンにはさまざまな機能に対する当面のニーズがある一方で、シンプルであってほしいという長期的なニーズもあります。このため、機能は最小公倍数を求めてどんどん複雑化する一方で、使い勝手をシンプルにすることで複雑な機能を感じさせないように工夫しています。

この問題を将来に渡って解決しようというのが、「Project Ara」です。このプロジェクトはスマートフォンをモジュールに分けて、ユーザが自由に組み合わせることができるようにしたスマートフォンを提供するものです。たとえば、ネットとカメラしか使わないから電話機能のないスマートフォンを作れるわけです。

このプロジェクトは、今目の前で起こっている余計な機能はいらないという問題と、そうはいいながら長い目でみればそのうち欲しい機能が出てくれば欲しいというニーズを両立した製品を提供するプロジェクトになっています。このような発想が長期と短期の統合です。

問題解決や製品開発において、このような発想をする方法は、短期視点からの発想、長期視点からの発想を繰り返してみることです。つまり、長期と短期の軸を行き来することです。


◆長期と短期の軸を行き来する方法(1)〜相互に評価する

この方法はいくつかあります。

一つは短期的な答えを考えた上で、それが長期になるとどうなるかを考えます。長期的に見たときにも、よい答えであれば問題ありませんが、何か長期的には問題があればその問題の解消を図り、逆にその答えが短期的にはどういう結果をもたらすかを評価します。このように短期的にも長期的にも満足できる答えを探していきます。

この際に、「Project Ara」のように発想の飛躍が必要なことは言うまでもありませんが、そのためにはたとえば、長期のところでの問題解決に抽象と具象の軸を組み合せてみるとよいかもしれません。

◆長期と短期の軸を行き来する方法(2)〜逆算する

もう一つの方法は、逆算をすることです。

最近未来について考えることが注目されていますが、その中で未来からみたときに今どうあるべきかを考え、そのギャップを解消するという方法があります。

この方法では、必ずしも目先の問題の解決に重きを置いていませんが、この中でギャップの具体的な解消案の中から、目先の問題について効果がある方法を選ぶという方法を取ることによって統合をしていくとよいでしょう。この方法も結局、長期と短期の軸の行き来をしていることになります。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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