第15話:コンセプトを作る(2015.08.10)
前回までで5つの軸の説明が終わりましたので、コンセプチュアル思考を使ってどういう行動をしていくのか、もう少し、踏み込んだ議論をしていきたいと思います。
第1回は「コンセプトを作る」ことです。
◆コンセプトとは
コンセプトは日本語で概念と訳されるように、ある意味で、コンセプチュアルスキルの基本だとも言えます。ただし英語でいうConceptと日本語でいうコンセプトは微妙に違いますので、このあたりところから考えてみましょう。
コンセプチュアルスキルは本質を見極めることが中心にありますが、本質というのは多くの場合、コンセプトとして表現されます。その意味でコンセプトはコンセプチュアルスキルの中心にある「概念」です。コンセプトという「概念」は分かりにくいのですが、一言でいえば、自分がしたいことの本質を表現したものだといえます。
もう少し難しくいえば、何らかのビジョン・戦略があってそのビジョンを実行するためにすべきことがコンセプトだと言えます。さらにそのコンセプトが実現されたかどうかの目安として目標を立てるわけです。
◆コンセプトのレベル
コンセプトの表現にはいろいろとあります。もっとも単純なものはステートメントで書くこともあれば、1枚の図で描くこともあります。
その中で著者の一押しは、日本の経営学の先駆者である加護野忠夫先生の「誰に、何を、どのような形で提供するか」をコンセプトとする表現です。非常に汎用性が高い枠組みで、作りやすく、使いやすいからです。
以下、スターバックスコーヒーの例を使って、このコンセプトをどう作り、どう使うかを考えてみましょう。スターバックスは誰に何をどのような形で提供しているのでしょうか。「コーヒーを飲みたい人に、おいしいコーヒーを、素早く、持ち運べるように提供する」というだけでは不十分なことはお分かり頂けると思います。会議室不足の今、オフィスビルのスターバックスにいけば、そこらじゅうで会議をしています。
WiFiを使いたくて立ち寄る人もいるでしょう。コーヒーを飲むことは二の次で、ひたすら受験勉強をしている人もいるし、読書をしている人もいます。長時間、粘ってもあまり気にならない店だからだでしょう。
あるいはランドマークになっている店も多く、待ち合わせに使っている人も多いようです。コーヒーを飲みながら、待つことができるのもうれしいものです。あまり知られていないが、スターバックスにはコンセプトストアというのがあります。京都だと六角堂の前に「京都烏丸六角店」というのがあります。六角堂を眺めながらコーヒーを飲める。スターバックスエクスペリエンスを提供しているわけです。スターバックスのコンセプトはこれらの具体的な店の形態をすべて統合したものでなくてはならないわけですが、「コーヒーを飲みたい人に、おいしいコーヒーを、素早く、持ち運べるように提供する」というコンセプトでは表現できません。
◆サードプレイスというコンセプト
よく知られるようにスターバックには「サードプレイス」というコンセプトがあります。簡単にいえば、ファーストプレイスは家で、セカンドプレイスは職場や学校など。
そしてこのふたつを結ぶ中間地帯が「サードプレイス」というわけです。
もちろん、「コーヒーを飲みたい人に、おいしいコーヒーを、素早く、持ち運べるように提供する」というのもコンセプトであるには違いありませんが、これとサードプレイスというコンセプトは、概念化の程度に違いがあるわけです。
たとえば、特定の店舗を開発するときにもコンセプトは必要です。この場合には、コンセプトは具体的なものになります。たとえば、駅の構内にあるにあるスターバックスなら「コーヒーを飲みたい人に、おいしいコーヒーを、素早く、持ち運べるように提供する」という具体性の高いコンセプトが必要です。
ところが、事業レベルでは、サードプレイスのような概念的なコンセプトが必要になります。その先には実現したビジョンやミッションがあるわけです。スターバックスのミッションは「会社として成長しながらも主義・信条において妥協せず、世界最高級のコーヒーを供給することである」というものです。このミッションを実現するためのコンセプトとして、サードプレイスがあるわけですが、ポイントになるのは、持続性です。ビジョン・ミッションを実現するためには、活動の持続性が必要になります。
◆コンセプトは具体的でなくてはならない
さて、ここで注意しておいてほしいことが一つあります。それは、サードプレイスというコンセプトですが、このコンセプトは具体的であるということです。サードプレイスというコンセプトは抽象的である一方で、具体的です。つまり、抽象的な概念には違いないのですが、その概念が極めて明確なのです。
言い換えるとコンセプトは明確でなくてはなりません。たとえば、憩いの場というのは曖昧過ぎてよいコンセプトとは言えません。よいコンセプトを作る際には、この点をよく意識しておく必要があります。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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