第2回 戦略的PMOの「戦略」とは(2010.04.13)
◆有名な戦略の定義
前回、戦略的PMOの位置づけについてお話をしました。では、「戦略」とはいったいなんでしょうか?戦略的であるためには、戦略とは何かを明確にする必要があります。
まずは、この問題から考えていきたいと思います。
最初に、言葉の定義を紹介したいと思います。戦略というのは非常にポピュラーな言葉になってきましたが、実は、決定版といえるような定義がありません。戦略とは何かという問いに対して、有名な定義というのはあって、以下のようなものです。
・戦略とは、企業がさまざまな市場における活動をコーディネートすることによって価値を創造する方法である(コリンズ1998)
・戦略とは、企業が他社と違う行動を選択し、独自の価値のあるポジションを作ることである(ポーター1998)
・戦略とは、競争に勝つための資金やケイパビリティの利用方法を決定し、制度としての存続に必要な目標を合理的に決定することである(バーゲルマン2002)
・戦略とはいかにして競争に成功するかについて企業が持つ理論である(バーニー2002)
・戦略とは、企業が行動や意志決定に一貫した方向性を与える統一的なテーマやパターン(グラント2005)
いずれも正しいなと思いますが、それぞれの定義の背後には、経営理論があり、その中で戦略とは何かを定義しています。
◆思考のフレームワークとしての戦略
このような定義のうちのいずれかを使って話を進めていってもよいのですが、そのためには経営理論に触れなくてはならないため、ここでは、戦略をもっと単純に思考のフレームワークだと考え、
「ゴール」と「行き方」をセットで決めること
だと定義しておきます(これは戦略思考と呼ばれるものです)。ちなみに行き方だけ決めるのが戦術になります。
では、なぜ、戦略を作るのでしょうか?実は、ここに考え方の違いがあります。組織には、「使命(ミッション)」や「展望(ビジョン)」があります。
ミッションとは
・誰に
・どうような利益を
・どうやって提供するか?
を規定するものです。これに対してビジョンは、
・どうあるべきか(評価)
・どうありたいか(願望)
を決めるものです。同じ土俵の上で言い換えますと、ミッションとは「他者(外)の利益の実現」であり、ビジョンとは「自分(内)の利益の実現」であると言えます。
そして、ミッションやビジョンを実現するための方法として戦略があります。
◆戦略サイクル
さて、戦略を考える上で、忘れてはならないのが、「戦略サイクル」と呼ばれるものです。ミッションやビジョンは具体的な目標を示すものではなく、従って、これらの実現するための戦略では、その方向性でのとりあえずのゴールの設定をして、その達成方法を考える必要があるわけです。
つまり、戦略サイクルとは、ミッションやビジョンをどのように現実の行動や成果に展開していくかを示すもので、一般には、
(1)調査・分析
(2)目的・目標設定
(3)戦略立案
(4)行動計画
(5)戦略実行
(6)評価
というサイクルになります。
まず、最初にミッションを目的・目標に置き換えます。そのために、先だってどのような目的や目標を設定すればミッションが達成できるかという調査を行う必要があります。ここで重要なことは、どんなに調査をして目的や目標を設定しても、それがミッションの実現に役立つという保証はないことです。
そこで、その目的や目標は、たぶん、このような目的でコトを起こせば、ミッションの実現に一歩前進するだろう「仮説」になります。同時にその目的を達成するための方法を考えます。これが(3)の戦略策定というステップです。
戦略ができたら、行動計画に落として、戦略を行動に移します。これが、(4)と(5)です。この戦略はあくまでも仮定ですので、行動計画の実行が終われば、評価をして、また、(1)〜(6)のサイクルを繰り返します。
◆戦略はプログラムとして実行される
以上のサイクルは通常は「プログラム」として行われ、一つずつのサイクルが「プロジェクト」として実施されることになります。
このような構造があるので、前回述べたように、戦略性のある経営管理(戦略管理)においてプロジェクト(プログラム)マネジメントが有効だと考えられるわけです。
また、PMOが戦略的であるとは、プロジェクトマネジメントを活用して、戦略サイクルの実行を実現していくことに他なりません。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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