◆戦略サイクル
前回、戦略サイクルの話をしましたが、今回は戦略サイクルがどのようにプロジェクトとして実行されるかを考えてみたいと思います。前回、紹介した戦略サイクルは
(1)調査・分析
(2)目的・目標設定
(3)戦略立案
(4)行動計画
(5)戦略実行
(6)評価
というものでした。この上位に、達成すべきミッションやビジョンがあります。ここで、前回の記事に対して質問を受けましたので、今回はまず、この問題にお答えしておきたいと思います。
◆戦略サイクルはどのレベルの戦略に対応する?
質問は、戦略サイクルというのは、組織のどのレベルのものかという質問です。戦略の定義を固定することは好ましくないと考えているので、戦略サイクルという思考サイクルで説明しようとしたものが混乱を来たしたようです。上の戦略サイクルはすべてのレベルに当てはまるものです。企業にはいろいろなレベルの戦略があります。一般的な用語でいえば、
・経営戦略
・事業戦略
・機能別戦略
・実行戦略
といった順に小さな戦略になります。すべてのレベルで、企業の活動にはビジョンやミッションがあり、それを個別に展開していくに当たって、目的と目標を設定します。
たとえば、経営のレベルでいえば、会社の進むべき方向性をミッションやビジョンで表現し、それを個々の経営施策に落としていきます。個々の施策に対して、目的や目標を設定し、その目的や目標を達成するために経営戦略を作るわけです。
◆上位の戦略と下位の戦略は入れ子構造になっている
ここで、重要なことは、経営戦略に基づいて、事業戦略が作られるということです。各事業部のミッションやビジョンは、経営戦略に基づいて決定されます。ビジョンはもう少し深い議論がありますが、ミッションは経営戦略を実行するために事業部は何をすればよいかということになります。そして、同じように目的や目標が設定され、その目的・目標を達成するための戦略が策定されます。このように、ミッション・ビジョン、目的・目標、戦略というのは組織の中で入れ子構造になっているのです。
ついでですので、下まで見ていきますと、今度は事業戦略から、その事業部のさまざまな機能ユニット(技術、マーケティング、生産、販売など)におけるミッション・ビジョンが決定され、目的・目標が設定されます。そして、その目的・目標を達成する戦略が策定されます。これが「機能別戦略」と呼ばれるものです。さらに、機能別戦略に従って、実行部隊のミッション・ビジョン、目的・目標が生まれ、達成のために実行戦略が作られます。
以上は典型的な例ですが、このようにして、経営戦略が現場に伝わり、実行されるわけです。この構図の中で共通しているのが、前回に説明した戦略サイクルなのです。
◆プロジェクトは基本的には実行戦略
このように展開する際に、プロジェクトというのは実行戦略のサイクルに適用されるのが普通です。つまり、事業戦略の実行を「プロジェクト」として実施していきます。われわれは、「プロジェクト戦略」と呼んでいますが、実行戦略というのはプロジェクトを遂行する戦略にほかなりません。
ただし、プロジェクトは実行戦略に対応するだけかといえば、一概にそうとは言えません。主に2つのケースが考えられます。一つは、役員直轄のプロジェクトのように、経営戦略の中に重要な戦略課題をプロジェクトとして実行していくケースがあるためです。いわゆる、全社プロジェクトです。もう一つのケースは、最近、増えてきましたが、いわゆるプロジェクト経営を行うケースです。この場合、戦略管理をプロジェクトとして行うため、上の戦略のヒエラルキーをすべてポートフォリオ、プログラム、プロジェクトで構成します。
このような場合には、戦略サイクルとしてそのようなレベルの戦略も同じ扱い方をすることに意味があるわけです。
長くなってしまったので、戦略サイクルとプロジェクトの具体的な活動の関係は次回に説明します。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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