◆ゲームデザインのプロセス
前回はゲーム要素について紹介したが、今回は最後にゲームデザインについて解説しよう。
ケビン・ワーバック、ダン・ハンターはゲーミフィケーションにおけるゲームのデザインは
(1)ビジネス目標を設定する
(2)対象とする行動を具体的に考える
(3)プレイヤーを詳しく説明する
(4)アクティビティのサイクルを考案する
(5)楽しさを忘れない
(6)適切なツールを活用する
の6つのステップで行うのがよいとしている。
◆目標をどう設定するか
(1)のビジネス目標は一般的なビジネスの目標ではなく、ゲーミフィケーションによって向上を狙う特定の業績目標である。たとえば、生産性の向上、品質の向上などが該当する。
重要なことはゲーミフィケーションはモチベーションの手段であり、前回述べたように単純な仕事を楽しくやり、ワークモチベーションを向上させるような効果があるが、最終的に業績につながらないと持続性がないことだ。
何のためにゲーミフィケーションを導入するのかというところからスタートする必要がある。
目標定義のプロセスは
達成目標のリストアップ
→達成目標に優先度をつける
→目標設定の理由を明確にする
という順序で行えばよい。
目標が決まれば、次は対象行動を具体的に考えていく。
◆目標達成行動とゲーム要素をどう結び付けるか
ゲームのデザインの最大のポイントは、目標達成のための行動とゲーム要素をどう結び付けるかである。そのためには、プレイヤーに何をさせ、それをどうやって測定するかを考える必要がある。ちょうど、仕組みづくりでメトリクスを設定するのと同じ考えだ。
たとえば、ビジネス目標として、顧客提案件数を増やすという目標を掲げたとする。
すると、
・顧客の声を集める
・類似事例を探す
・顧客の顧客を観察する
といった行動が考えられる。
次に、プレイヤーを説明する。これはペルソナを作るのと同じ要領である。
◆アクティビティサイクル
ゲームをデザインする中でもっとも難しいのは、アクティビティサイクルを作ることだ。アクティビティサイクルは、あるユーザーの行動が別のユーザーの行動を引き起こす一連の連鎖を示すものである。
アクティビティサイクルには
・エンゲージメントループ
・進捗ステップ
の2種類がある。ゲームでは、モチベーションに基づいてユーザーが行動し、それに対してフィードバックが行われ、そのフィードバックによってユーザーはさらにアクションを起こすというのが基本構造である。これがエンゲージメントループである。
この際のフィードバックが問題だが、基本的にゲーム要素はすべてフィードバックになる。ところが、これだけではユーザーには進歩がなく、いつか飽きてしまう。そこで、進捗ステップというアクティビティサイクルを作る。簡単にいえばレベルアップだ。
これでデザインの骨格はできるが、ここで楽しさという面から確認し、さらにインプリメントをするツールを選ぶ。
以上がゲームデザインのプロセスである。
◆楽しさを忘れない
実際にビジネスの面で難しいなと思うのは、実は楽しさを忘れないというプロセスだ。デジタルゲームの世界に「クソゲー」と言う言葉があるが、たとえば、
・つまらなくて、すぐ飽きてしまう
・難しすぎて、やる気がなくなってしまう
・シナリオや設定が悪く、一貫性に欠ける
といったものが該当するらしい。少なくともこれらの性質が該当するものは楽しくない。特にビジネスでは楽しむことに罪悪感があり、まじめな方向に走ってしまうと上のようなゲームになってしまうことが多いので気をつける必要がある。
ということで、ゲーミフィケーションの解説は以上で終わるが、ゲームと言うとイロモノ的に見れらているが、ゲーミフィケーションがMBAコースで教えられるものになってきており、そろそろ、ゲームに対する認識を変える必要があるのではないだろうか。
【参考資料】
ケビン・ワーバック、ダン・ハンター(三ツ松 新監訳、渡部典子訳)
「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」、阪急コミュニケーションズ (2013)
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