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リーダーがビジネスを進めていくために必要なビジネスナレッジの2つ目として、ゲーミフィケーションの概要を解説します。

第3話:ゲーミフィケーション(1)(2014.01.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ゲーミフィケーションとは

リーダーのためのビジネスナレッジの第2講はゲーミフィケーションです。日本でもここ数年、ゲーミフィケーションの本が出るなど関心が高まってきていますが、米国ではビジネススクールにゲーミフィケーションのコースができるなど、ビジネスの常識になってきています。

ゲーミフィケーションではゲームの本質をエンターテイメントではなく

人間の性質と巧みなデザインの融合

にあると考えます。そしてゲームの要素やデザインをゲームそのものと切り離して考え、

非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること

をゲーミフィケーションと定義します。


◆ゲーム要素

ゲーム要素とは、ゲームを構成するツールキットのようなものです。

たとえば、将棋だと駒、駒の進み方、相手の駒を獲る、獲った駒を使う、相手陣に入ればすべての駒が「金」を兼ねるという考え方などがゲーム要素です。このようにゲーム要素はモノ(駒)だけではなく、関係性(相手の駒をとる)、概念(金になる)なども含まれています。

重要なことはゲームではない活動にゲーム要素を組み込めることです。ゲーム要素には、PBLと呼ばれるものがあります。ポイント、バッチ、リーダーボードです。もし、何かゲームをやったことがあれば、そのゲームにPBLが含まれていたのではないでしょうか?そのくらい普遍的に使われるゲーム要素です。


◆改善提案制度におけるゲーム要素とゲームデザイン

たとえば、改善提案という制度を設けている企業は多いと思いますが、

P:点数をつける
L:個人や組織の改善提案の数や内容が見えるようにする
B:年間のチャンピオンを決める

というPBLの定番があります。これはPBLという3つのゲーム要素をビジネスの中に組み込んでいるわけです。

後ほど紹介しますが、ゲーミフィケーションでよく使われるゲーム要素はPBL以外にもたくさんあり、これをビジネスやマネジメントのプロセスに効果的に取り込んでいくわけです。もちろん、3つの要素を組み込むことが不可欠というわけではありません。一つ一つの要素にもそれなりの効果があります。

そこで、どのゲーム要素をどの部分にどんな形で付与すれば、ゲーミフィケーション体験が各要素の合計を上回ることができるかを考えることが必要になります。一種のシナジーですね。これを考えるのがゲームデザインです。


◆ゲームデザインの例

改善提案の例を考えてみましょう。上に述べたPBLを組み合わせることによって、要素の体験よりインパクトが生まれていることが分かります。

たとえば、改善提案に点数をつけて、それを人事考課に使うよりは、誰もがその点数を見えるようにする方が改善提案への取り組み動機があると思われます。承認欲求が満たされますし、他の人の提案を見て触発されることもあるからです。

さらに、年間でバッチをつけて次回のランキングまでチャンピオンでいられるとすれば、一層、改善提案への取組動機は高くなるでしょう。たとえば、日常的に発表せずに年間ランキングだけを発表することと比べると、明らかだと思います。

PBLは当たり前すぎて、これがゲームのデザインだと言われてもピンとこないかもしれませんが、ここにもデザインの要素は結構あります。改善提案の例でいえば、点数をどうつけるかというのは結構、デザインの要素があります。たとえば、改善提案はすべて1ポイントという会社があります。改善提案は1ポイントで採用されれば2ポイントという会社もあります。改善提案の効果を点数化している会社もあります。これは必ずしも後の方がいいというわけでもないようです。


◆ゲーミフィケーションが有効な場面

さて、ではゲーミフィケーションはどのような場合に有効なのでしょうか?ウォートン・スクールで世界で初めてゲーミフィケーションのコースを開発したケビン・ワーバックとダン・ハンターは、ゲーミフィケーションの有効な場面は

(1)内部
・生産性の向上
・イノベーションの促進
・仲間意識の強化
・従業員の業績向上

(2)外部
・マーケティング
・顧客モチベーションの理解と促進

(3)行動変容(企業/個人)
・人々に新しい有益な習慣を身につけさせる(学び、健康など)

の3つだとしています。そのような場面でゲーミフィケーションが効果があると考える理由は

・何かの関与をしてみようと思わせる仕組みを作ることができる
・実験によりあれこれと新しいやり方を試して可能性を広げることができる
・実際に効果がでている

の3つだとしています。


◆自社のニーズを見つける

さらに、具体的にゲーミフィケーションが自社のニーズに合う部分を探すには以下の4つの問いを考えているとよいと指摘しています。

(1)モチベーション
どの部分で行動を促せば価値を引き出せるか
(2)意味のある選択肢
ターゲットをするアクティビティは十分に興味深いか
(3)構造
一定のアルゴリズムで望ましい行動をモデル化できるか
(4)対立の可能性
モチベーションを引き出す既存の仕組みとの対立を避けることができるか

今回はここまでとし、次回は要素やデザインをより詳細に説明していきたいと思います。


【参考資料】
ケビン・ワーバック、ダン・ハンター(三ツ松 新監訳、渡部典子訳)
ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」、阪急コミュニケーションズ (2013)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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